冒険者よ永遠に

星咲洋政

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3章

永久の象徴

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「仕方がないな、あの足音がどうなったのかこの目で見るしかない。」

 足音が途絶えた原因を突き止め確定するには、実際に自分の目で見るしかない。それはつまり脅威を視界に入るギリギリにまで引き付けることになる。ここは今までの三種類の脅威が集う迷宮である。不用意な邂逅は避けたいものだ。さて息は整った、先程の不可思議を突き止めるため進むとしよう。古の石室には、ワープをさせる床があった。夢幻の湖畔には、侵入者を発見し次第脅威をし向かせるシステムがあった。ここにはかつての脅威が集う。もしかしたら、同じような仕掛けである可能性もあるかもしれない。それらも踏まえながら登山道に入っていこう。

 細い登山道。相変わらず景色は良い。下を見下ろすと丁度、永久の霊峰の入り口が小さく見える。こんなに高いところまで来たんだな。細道を歩いているとある不思議な出来事が起こった。背後で足音が鳴ったのだ。まだこちらには気づいていない様子。その姿は、暗夜の樹海で集落を形成していた「魔物」だ。その足音は徐々に遠ざかっていく。それならば私は逃げることなく、敢えて立ち止まっている方が良いだろう。足音に気付かれる恐れを消せるのだから。崖と絶壁に挟まれる登山道に突如として背後に脅威が現れたのだ。背後ということは当然今しがた歩いてきた経路ということ。そこに誰もいなかったことは視認済みである。やはりここは古の石室と似たような性質を持つのであろうか。あのワープも亡霊は通ることができていた。私はそれに賭けて亡霊を追い出したのだから。今日はこのあたりでアンナの宿へ戻ることにしよう。情報を一つ得たのだから。

 私は翌日、永久の霊峰の探索を再開した。今日は登山道の仕掛けについて見ていこう。前回の探索では登山道について何一つ情報を得ることは出来なかった。そんな中の出来事であった。

「我は眷属。湖の主の手足となり、侵略者を排除する。」

突如として霧の衛兵が私の目前、一寸先に知らせもなく現れた。登山道は傾斜になっている。私の目線の先に、ベルトが見える。弱点である宝石が目の前で輝く。私の手は反射で剣を抜き弱点を斬り捨てた。なんとか予想外の事態を切り抜けることができた。眷属の身体は崩れ去り、霧となって消えていった。一体今何が起こった。急に目の前に眷属が現れた、音も気配もなく突如として。眷属は瞬間移動のような能力は持ち合わせていないはずだ。それに眷属が出現するには霧の主がそのエネルギーを分け与えて生み出す必要がある。突如として現れるような芸当はできないはずだ。となれば、これがこの迷宮の仕掛けであるのだろうか。目の前に脅威を急に出現させることができる仕掛けこそが。この迷宮では常に行動が監視されており、動きに合わせて脅威が送り込まれるようになっているみたいだ。この迷宮について一つ知ることができた。今日はここで引き返したとしても十分及第点と言えるだろう。

 私はアンナの宿に戻ってきた。自室に戻り地図を机の上に広げ、そして私はあることに気づいた。記憶がない。迷宮を探索したことによって得られた情報の記憶がない。正確には、迷宮の仕掛けに関しての記憶が全く無い。地図にメモされたことを読んでも読んでもこれが何のことなのかさっぱり分からない。いつこの事を書き記したのであろう。しかし迷宮に、さっきまで確かに、探索に行っていた。そして私の身体に傷はない。銀の弾丸に減りはない。であるならば成果も無しに帰ってきているのは可能性として信じがたい。つまり何らかの成果があったのだろうが記憶だけが抜き取られてしまったのだ。

「この霊峰では永久の時が流れる。人間の心にも自動的に記憶が永久に刻まれ続ける。永久から逆らえば永久の象徴たる記憶が犠牲になるのだよ。」

 永久の霊峰の山頂でロシュフォールは笑う。
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