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チュートリアル
第五話
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酒場一階に戻ってきていた。
モンスターを倒してのお金稼ぎ。それがゲームのGOSでは当たり前のようにできていた。
しかしここではモンスターを倒すのにまず武器を買う必要がある。
武器を買うにはお金が必要だ……。
お金を稼ぐにはクエストを……。
そしてクエストを受けるにも、明日元気に朝を迎えるために宿を確保する必要が……。
「もしかしなくても、やばくないここ?」
ここまでくると、自分がゲームの世界にいるなんて感覚がなくなりつつある。
まあとにかく、まずは宿代の確保からである。
「たしか仕事の紙が貼ってあるんだったよな……」
きょろきょろとあたりを見回す――
「どうして女じゃだめなの!」
すると突然、女の喚き声が聞こえてきた。
先ほど目にした一階の受付嬢と、小柄な女の子がカウンター越しににらみ合っていた。
「どうしても何も、それが依頼人からの条件だからです。前回は女性の冒険者に頼んで中途半端な成果にしかならなかったから今回は男の人じゃないとお金は出さないそうです」
「こんな清掃クエストになんでそんな条件ついてるのよ!」
「それを私に言われてもどうにもできません」
「だけど今日はもうこの仕事しかないじゃない! これを受けられないなら今夜はどこに泊まればいいの!」
「私に言われましてもどうにもできません……」
何やら揉め事のようだが……俺としては今日の宿代を手に入れるためにもあのお姉さんとお話しする必要がある。
「どうしたんですかぁ……?」
恐る恐る声をかけると、険しい顔つきの二人が同時に俺の方に振り向いた。ひぇ……。
「だれ?」
「あ、さっきのおじ……いえ、説明を受けられたんですね」
今この人、おじさんって言おうとした?
「はい、冒険者登録してきました」
「それはよかったです。今後の活躍に期待させていただきます」
またも事務的な返答をした受付のお姉さん。しかし直後、何か気づいたようにはっと口を開けた。
そして、絵にかいたような営業スマイルをしてくれる。
「ところで今日はもう、お帰りになられるんですかぁ?」
「あ、いえ、一応仕事を探しに来ました」
まさしく無一文の状態なので。
「そう、ですかぁ」
そしてお姉さんはまたチラと、少女見た。
「マルメロさん、その依頼は彼に譲ってあげてください。彼にも仕事が必要みたいなので」
「はぁ!?」
少女がこぶしを振り上げる。今度はキャットファイトでも始まるのかと思ったが――
「その代わり、明日朝一はあなたでもできそうな依頼をいくつか確保しておいてあげます。どうですか?」
「はっ……はぁ」
振り上げた少女のこぶしが、だらんとおろされた。
「本当? 明日はじゃあ必ず稼げるってことよね?」
「マルメロさんにやる気があれば、稼げます」
「わかった。すごく簡単な仕事を三つぐらい用意しておいてね」
「わ、わかりました」
「やったぁ!」
少女は、まるで散歩前の犬のように飛び跳ねると、俺の方に向き直った。
ひまわりみたいな明るくて無邪気な笑顔。正直、一瞬見とれてしまうぐらいには、可愛かった。
「じゃあはい、おっさん」
おなかにパンチを食らう。じゃなくて、握りしめていた紙を俺に突き出したようだ。
思わずそれを受け取った時、はじめて彼女を間近で観察することになった。
童顔で、可愛らしい雰囲気の女の子、ではあるのだけど……。
これはとても失礼なことだけれど、彼女からは――
(なんか洗っていない犬の臭いがする……)
百年の恋も冷める強烈なスメルだった。
よくよく見ればボロボロの服を着た小汚い恰好をしている。靴も履いてないし、髪も伸ばし放題で、ごわごわだ。
お風呂、何日入ってないんだろうか。
「それじゃあ明日、よろしくね」
女の子はそう言ってぺちぺちと足で音をたてながら酒場から出て行った。
なんだったんだ……。
「はぁ……やっと帰ってくれました……」
「げ、元気な子でしたね」
「マルメロさんは親も家もなくて不憫な子ですけど、ずっとあんな感じなので苦労させられてるんです」
なかなかハードな子でもあるようだ。
「まあとにかく、助かりました新人さん。それによかったですね。そのクエストを受けるんですね?」
言われて、そこで初めて紙に目を落とした。
ドブ掃除 報酬10ゴールド 男限定
と書かれている……。
あれ? 俺が思ってたよりもちょっとばかし過酷そうな依頼内容だ。
「もしかしてこれだけですか?」
「そうですよ? やらないんですか?」
「……いや、やりますよ」
とりあえずこれを受けるしかなさそうだ……。
「はいはーい。ドブのお仕事ですね。場所は、地図でお教えしますね」
モンスターを倒してのお金稼ぎ。それがゲームのGOSでは当たり前のようにできていた。
しかしここではモンスターを倒すのにまず武器を買う必要がある。
武器を買うにはお金が必要だ……。
お金を稼ぐにはクエストを……。
そしてクエストを受けるにも、明日元気に朝を迎えるために宿を確保する必要が……。
「もしかしなくても、やばくないここ?」
ここまでくると、自分がゲームの世界にいるなんて感覚がなくなりつつある。
まあとにかく、まずは宿代の確保からである。
「たしか仕事の紙が貼ってあるんだったよな……」
きょろきょろとあたりを見回す――
「どうして女じゃだめなの!」
すると突然、女の喚き声が聞こえてきた。
先ほど目にした一階の受付嬢と、小柄な女の子がカウンター越しににらみ合っていた。
「どうしても何も、それが依頼人からの条件だからです。前回は女性の冒険者に頼んで中途半端な成果にしかならなかったから今回は男の人じゃないとお金は出さないそうです」
「こんな清掃クエストになんでそんな条件ついてるのよ!」
「それを私に言われてもどうにもできません」
「だけど今日はもうこの仕事しかないじゃない! これを受けられないなら今夜はどこに泊まればいいの!」
「私に言われましてもどうにもできません……」
何やら揉め事のようだが……俺としては今日の宿代を手に入れるためにもあのお姉さんとお話しする必要がある。
「どうしたんですかぁ……?」
恐る恐る声をかけると、険しい顔つきの二人が同時に俺の方に振り向いた。ひぇ……。
「だれ?」
「あ、さっきのおじ……いえ、説明を受けられたんですね」
今この人、おじさんって言おうとした?
「はい、冒険者登録してきました」
「それはよかったです。今後の活躍に期待させていただきます」
またも事務的な返答をした受付のお姉さん。しかし直後、何か気づいたようにはっと口を開けた。
そして、絵にかいたような営業スマイルをしてくれる。
「ところで今日はもう、お帰りになられるんですかぁ?」
「あ、いえ、一応仕事を探しに来ました」
まさしく無一文の状態なので。
「そう、ですかぁ」
そしてお姉さんはまたチラと、少女見た。
「マルメロさん、その依頼は彼に譲ってあげてください。彼にも仕事が必要みたいなので」
「はぁ!?」
少女がこぶしを振り上げる。今度はキャットファイトでも始まるのかと思ったが――
「その代わり、明日朝一はあなたでもできそうな依頼をいくつか確保しておいてあげます。どうですか?」
「はっ……はぁ」
振り上げた少女のこぶしが、だらんとおろされた。
「本当? 明日はじゃあ必ず稼げるってことよね?」
「マルメロさんにやる気があれば、稼げます」
「わかった。すごく簡単な仕事を三つぐらい用意しておいてね」
「わ、わかりました」
「やったぁ!」
少女は、まるで散歩前の犬のように飛び跳ねると、俺の方に向き直った。
ひまわりみたいな明るくて無邪気な笑顔。正直、一瞬見とれてしまうぐらいには、可愛かった。
「じゃあはい、おっさん」
おなかにパンチを食らう。じゃなくて、握りしめていた紙を俺に突き出したようだ。
思わずそれを受け取った時、はじめて彼女を間近で観察することになった。
童顔で、可愛らしい雰囲気の女の子、ではあるのだけど……。
これはとても失礼なことだけれど、彼女からは――
(なんか洗っていない犬の臭いがする……)
百年の恋も冷める強烈なスメルだった。
よくよく見ればボロボロの服を着た小汚い恰好をしている。靴も履いてないし、髪も伸ばし放題で、ごわごわだ。
お風呂、何日入ってないんだろうか。
「それじゃあ明日、よろしくね」
女の子はそう言ってぺちぺちと足で音をたてながら酒場から出て行った。
なんだったんだ……。
「はぁ……やっと帰ってくれました……」
「げ、元気な子でしたね」
「マルメロさんは親も家もなくて不憫な子ですけど、ずっとあんな感じなので苦労させられてるんです」
なかなかハードな子でもあるようだ。
「まあとにかく、助かりました新人さん。それによかったですね。そのクエストを受けるんですね?」
言われて、そこで初めて紙に目を落とした。
ドブ掃除 報酬10ゴールド 男限定
と書かれている……。
あれ? 俺が思ってたよりもちょっとばかし過酷そうな依頼内容だ。
「もしかしてこれだけですか?」
「そうですよ? やらないんですか?」
「……いや、やりますよ」
とりあえずこれを受けるしかなさそうだ……。
「はいはーい。ドブのお仕事ですね。場所は、地図でお教えしますね」
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