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間章『姉ちゃんの特別授業』2
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二
「でね?ちょっと聞いてるの?明人。」
「ああ。聞いてる。」
微笑んで、姉の言葉に表面上は素直に頷く。
姉は明人の返事に納得して、更にゲームの話を続けた。
「ゲームの大まかな流れはいいわね?続けるわよ。今はゲームの攻略の話よ。」
興が乗ってくると姉の話は長くなる。それに伴い、明人の集中力が切れ始める。
そうでなくても、このゲームの話には何の興味もないのだ。
明人は聞いているふりをして、別のスマホゲームアプリを始めた。それは、明人が今ハマっているRPGだった。
明人は弟として苦難の道を生きてきた十七年の年月で、何とか姉の攻略法を少しだけ編み出していた。
姉は夢中になり話が長くなると、自分の話に熱中するあまり注意力が散漫になる。それは、ヲタク気質が為せる業であるとも言えた。
なので、少しくらい明人が聞いてなくても、別のゲームをしていてもバレはしない。その上、気づかれずにゲームをする技を、明人も日々磨いていたし、何なら気付かれずに出来そうなゲームを見つけることにも余念がなかった。
明人が別のゲームをしていることにも気づかず、姉は得意げに熱く語り続けている。
「基本的には、全キャラ同じような道筋を通るんだけど、例外はいます。まずは、サブ攻略キャラである。高槻先生です。この高槻先生は、どんなに頑張っても、一週目での攻略は叶いません。まず、高槻先生をフォークダンスのパートナーに誘う選択肢が一週目では出ませんし、好感度を上げる選択肢も全て封印されています。高槻先生は、一度クリアしてゲームのエンドを見ていないと選べない仕様になってます。」
姉の言葉はもう明人にとってBGMになっているが、姉は全く気付いていない。
明人はよしよしと心の中でほくそ笑み、この調子で続くように美味い相槌だけを頑張ることにする。
「それで?確か、シナリオ的に真相に関わってるんだよね?」
「そうなの!高槻先生は、他の攻略キャラの障害になったり敵になったりする心憎い立ち位置なのよ。そういうところが陽菜はいいらしいんだけどね。」
陽菜というのは姉の腐ったヲタク仲間である。
二人は同担拒否なのかどうなのかは知らないが、奇跡的にいつも男の趣味が違うので仲良くやっていた。
「それで、高槻先生以外にも、例外はいる話なんだけど。それが、シュウ様なのよ!」
本題の水嶋シュウの話題となり、姉の声のトーンが高くなる。
明人はもう姉の話を完全にスルーして聞いていなかった。
「で?」
相槌もテキトーになっているが、水嶋シュウの話題に夢中になっている姉は全く気付いていない。
テンションの上がった姉は、それはもう楽しそうに少々早口になりながら膨大な情報量を話し始めた。
「シュウ様はね、流石なの!他のキャラたちが好感度をいそいそと生真面目に上げないといけない作りになってる中、シュウ様だけは特別なの。主人公はね、徹底的にシュウ様に無視されて避けられて、好感度を上げる隙すら与えてもらえないの。それでも、出来るだけシュウ様の周りを何とかうろうろして、シュウ様の視界にどうにか入って、健気に食い下がり続けなきゃいけないのよ!途中で生ぬるいお為ごかしみたいなことをしたり、諦めたりしたら、即座に道が閉ざされる仕様でね。ホント、シュウ様同様、ルートだって鬼畜で茨の道なの!」
「へー。」
明人は座っていた姿勢を少し崩していたが、シュウ様に夢中な姉はそんなことすら気づいていない。夢見る乙女の眼差しで虚空を見つめ、滔々と語り続ける。
「私が思うに。これは、シュウ様を攻略するための愛の試練なのよ。ここまでされても、それでもシュウ様に一途であるということを証明できたものにしか開かれない道なのよ。」
一瞬、ロード時間で暇になった耳に聞こえてきた姉の言葉に、明人は呆れてものも言えなかった。
(いや、そこまでされたら諦めるだろ?普通。全く相手にされてなくないか?それは。)
だが、姉相手にそんなことを言う度胸のない明人は、本音を心に仕舞い込んだ。
「そんな極寒の厳しい状況を経てこそ、個別ルートに入った後が素晴らしいのよ。個別ルートに入るとね、まずは主人公がシュウ様を呼ぶ時の呼び方が変わるの!それでね、そんな鬼畜なシュウ様と主人公もね、少しずつ仲を深めていくのよ!もちろん、個別ルートも鬼畜仕様よ!シュウ様相手だから、そんなの当然よね?」
姉の話は続いていたが、明人の耳はもうBGMとしても姉の話を聞くことを止めていた。
それは明人がプレイ中のRPGゲームがボス戦になったせいであるが、姉はその事実にも気づかず、その後も得意げに誰も聞いていない話を続けるのであった。
「でね?ちょっと聞いてるの?明人。」
「ああ。聞いてる。」
微笑んで、姉の言葉に表面上は素直に頷く。
姉は明人の返事に納得して、更にゲームの話を続けた。
「ゲームの大まかな流れはいいわね?続けるわよ。今はゲームの攻略の話よ。」
興が乗ってくると姉の話は長くなる。それに伴い、明人の集中力が切れ始める。
そうでなくても、このゲームの話には何の興味もないのだ。
明人は聞いているふりをして、別のスマホゲームアプリを始めた。それは、明人が今ハマっているRPGだった。
明人は弟として苦難の道を生きてきた十七年の年月で、何とか姉の攻略法を少しだけ編み出していた。
姉は夢中になり話が長くなると、自分の話に熱中するあまり注意力が散漫になる。それは、ヲタク気質が為せる業であるとも言えた。
なので、少しくらい明人が聞いてなくても、別のゲームをしていてもバレはしない。その上、気づかれずにゲームをする技を、明人も日々磨いていたし、何なら気付かれずに出来そうなゲームを見つけることにも余念がなかった。
明人が別のゲームをしていることにも気づかず、姉は得意げに熱く語り続けている。
「基本的には、全キャラ同じような道筋を通るんだけど、例外はいます。まずは、サブ攻略キャラである。高槻先生です。この高槻先生は、どんなに頑張っても、一週目での攻略は叶いません。まず、高槻先生をフォークダンスのパートナーに誘う選択肢が一週目では出ませんし、好感度を上げる選択肢も全て封印されています。高槻先生は、一度クリアしてゲームのエンドを見ていないと選べない仕様になってます。」
姉の言葉はもう明人にとってBGMになっているが、姉は全く気付いていない。
明人はよしよしと心の中でほくそ笑み、この調子で続くように美味い相槌だけを頑張ることにする。
「それで?確か、シナリオ的に真相に関わってるんだよね?」
「そうなの!高槻先生は、他の攻略キャラの障害になったり敵になったりする心憎い立ち位置なのよ。そういうところが陽菜はいいらしいんだけどね。」
陽菜というのは姉の腐ったヲタク仲間である。
二人は同担拒否なのかどうなのかは知らないが、奇跡的にいつも男の趣味が違うので仲良くやっていた。
「それで、高槻先生以外にも、例外はいる話なんだけど。それが、シュウ様なのよ!」
本題の水嶋シュウの話題となり、姉の声のトーンが高くなる。
明人はもう姉の話を完全にスルーして聞いていなかった。
「で?」
相槌もテキトーになっているが、水嶋シュウの話題に夢中になっている姉は全く気付いていない。
テンションの上がった姉は、それはもう楽しそうに少々早口になりながら膨大な情報量を話し始めた。
「シュウ様はね、流石なの!他のキャラたちが好感度をいそいそと生真面目に上げないといけない作りになってる中、シュウ様だけは特別なの。主人公はね、徹底的にシュウ様に無視されて避けられて、好感度を上げる隙すら与えてもらえないの。それでも、出来るだけシュウ様の周りを何とかうろうろして、シュウ様の視界にどうにか入って、健気に食い下がり続けなきゃいけないのよ!途中で生ぬるいお為ごかしみたいなことをしたり、諦めたりしたら、即座に道が閉ざされる仕様でね。ホント、シュウ様同様、ルートだって鬼畜で茨の道なの!」
「へー。」
明人は座っていた姿勢を少し崩していたが、シュウ様に夢中な姉はそんなことすら気づいていない。夢見る乙女の眼差しで虚空を見つめ、滔々と語り続ける。
「私が思うに。これは、シュウ様を攻略するための愛の試練なのよ。ここまでされても、それでもシュウ様に一途であるということを証明できたものにしか開かれない道なのよ。」
一瞬、ロード時間で暇になった耳に聞こえてきた姉の言葉に、明人は呆れてものも言えなかった。
(いや、そこまでされたら諦めるだろ?普通。全く相手にされてなくないか?それは。)
だが、姉相手にそんなことを言う度胸のない明人は、本音を心に仕舞い込んだ。
「そんな極寒の厳しい状況を経てこそ、個別ルートに入った後が素晴らしいのよ。個別ルートに入るとね、まずは主人公がシュウ様を呼ぶ時の呼び方が変わるの!それでね、そんな鬼畜なシュウ様と主人公もね、少しずつ仲を深めていくのよ!もちろん、個別ルートも鬼畜仕様よ!シュウ様相手だから、そんなの当然よね?」
姉の話は続いていたが、明人の耳はもうBGMとしても姉の話を聞くことを止めていた。
それは明人がプレイ中のRPGゲームがボス戦になったせいであるが、姉はその事実にも気づかず、その後も得意げに誰も聞いていない話を続けるのであった。
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