【完結】死神探偵 紅の事件 ~シリアルキラーと探偵遊戯~

夢追子(@電子コミック配信中)

文字の大きさ
44 / 82

第六幕 六 「探偵さんとはぐれちゃったの?」

しおりを挟む
     六

「あれ?貴方は、確か・・・。」
 背後から掛けられた声に、リンは泣き腫らした目で背後を見上げた。
「どうしたの?」
 泣いているリンに気付き、慌てて駆け寄ってくるのはお仕着せを着たメイドの杏子だ。
 リンは涙を手の甲で拭って、立ち上がる。
「迷子。」
 素っ気なく呟くリン。
 その一言で事情を察した杏子は、リンを元気付けるように笑顔を浮かべた。
「大丈夫よ。」
 リンは頷き、杏子に肯定を響かせた。
「貴方、探偵さんの助手の子よね?昨夜、巧様と一緒だった。」
 リンの鈴は肯定する。
「探偵さんとはぐれちゃったの?だったら、どこに行けば会えるかしら?」
 リンは分からないとでも言うように、首を横に振った。
 杏子は頷き、リンの顔を笑顔で覗きこむ。
「分かったわ。色々と回ってみましょう。ついてきて。」
 任せてくれと言うように、ドンと胸を叩く杏子。
 リンは肯定の鈴の音を響かせると、小さなトランクに手を伸ばした。
「荷物、持ちましょうか?」
 使用人としての教育が行き届いているらしく、杏子は客人に申し出る。
 だが、リンは首を振って否定の音色を響かせた。
「ダメ。先生の大切な物だから。」
 トランクを大切そうに抱え、リンは杏子に触れさせないように必死に守ろうとする。
 杏子は、彼女を宥めようと、両手を挙げて見せた。
「分かったわ。それに手は出さないわ。」
 納得したようにリンが肯定の鈴を鳴らす。
 それを確認して、杏子は歩き出した。
「さあ、行くわよ。ちゃんとついて来てね。」
 杏子に遅れないように、リンは杏子の一歩後ろをついていく。
「さて、どこから行けばいいのかしら?探偵さんたちが会議するって言ってたけど、広間を使うには、まだ少し時間があるし、」
 独り言のように呟く杏子。
 リンは遠慮がちで警戒心を持った小さな声で、杏子の背中に声を掛けた。
「先生、部屋にいなかった。」
「客室にはいなかったの?」
 杏子は立ち止まらずに振り返る。
 リンの鈴は肯定を杏子に伝えた。
「そっかぁ。じゃあ、どこだろう?貴方、心当たりない?」
 リンは首を横に振って否定を伝えた。
「困ったわね。屋敷は広いのよね。」
 確かに広大だ。何せリンは迷子になったのだから。
 しばらく唸った後、杏子は首だけでリンに振り返る。
「昨日、行ったところとか?今日、行ったところとかにいるかもしれないわ。どこに行ったの?」
 杏子の質問に、リンは懸命に答えを出そうと考え始める。まずは、思いついた順に言葉にし始める。
「今日は、野村の部屋。」
「ああ、探偵さんだもんね。事件のこと調べてたんだ。ってことは、そこから行く?」
 リンは否定を響かせる。
「あの部屋は、もう行かないと思う。」
「じゃあ、昨日は?」
 またリンは沈黙して考える。
「食堂と、肖像画。それに探検して、庭と温室。」
 途切れ途切れに単語を口にするリン。
 杏子は拙いリンの言葉から、行き先を考える。
「食堂には、今の時間に用はないわね。とすると、まずは庭に出て温室に行った方が良さそうね。」
 結論が出る。
「じゃあ、温室に行きましょう。」
 リンは頷いて肯定する。
 二人は揃って温室へと歩き始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...