ラブレター ~追憶のププリーヌ~

せんのあすむ

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ただの<語り部>

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今回の遺跡で見付かった書物の中に見付かったその記述は、

『アーティナス王国の王女が、ルーゼニア王国の皇太子に、魔法人形の形で個人的な信書を送った』

というものだった。しかも、私に刻まれたラブレターのものとよく似た文字で。

それについてスリガンが、

「これは、非常に大きな手掛かりかもしれません。アーティナス王国という国の名前は初めて見ましたが、ルーゼニア王国というのは、<北の大国>の基となった国の、さらに基になった国の名前なのです。現在の<北の大国>の正式名称<大いなる神精ルーゼナンドの加護を受けし誉れ高き世界の宝>にある<神精ルーゼナンド>から付けられた名だそうですから」

と、興奮した様子で言った。そして、

「ルーゼニア王国についてであれば、<北の大国>の王宮図書館に詳しい書物があるはずです」

とも。

「<北の大国>の王宮図書館か……皮肉だな。父さんと母さんとナフィが北の大陸の手からプリムラを逃がしたっていうのに、その<北の大国>の王宮に手掛かりがあるっていうのは」

アーストンが苦笑いを浮かべる。

「……」

ジルはあまりその辺りの事情を理解してないのでピンと来てないようだった。

私も、実はそんなに気にしてない。なにしろ今まで本当にいろんなことがあった。加えて、この旅を続けるにあたって<北の大国>に私のことを知られて接収されるとなったら無理に抵抗せずおとなしく従うつもりだった。

その後、幸か不幸か、魔法の再現は現実的じゃないと人間達が理解してくれたのと、王様が代替わりしたことで私への関心は薄れたみたいだけどね。

おかげで、気兼ねなく<北の大国の王宮図書館>へも赴ける。

冒険譚として見たら盛り上がりには欠けるとしても、これは、私を取り巻く人間達の人生に触れるだけの話だと私は思ってる。だから、これでもし、旅を始めたそもそもの目的が判明したとしても、アーストン達がいる限りは話は終わらない。

まあ、一段落はつくにしてもね。

そして私は、これからも、ただの<語り部>として、人間達を見続けていこうと思う。



こうして私達は、王宮のある、<北の大国の首都、アリア=ルーゼナンディアス>へと向かうことになった。

「王宮図書館へは、私の使いが資料の閲覧のために向かうと早手紙で連絡しておきます。途中の関所も、私の名前で手形を発行しておきました」

本当は同行したかったらしいスリガンだけど、今回見付かった遺物の整理が先だそうで、それが終わったら後を追うということだった。

「じゃあ、行くか!」

「おーっ!」

アーストンの掛け声に、カインとセリスが元気よく応えたのだった。

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