ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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騙されたりしない

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 陣地に戻っても、私は、五体もの敵を倒せたことが嬉しくてすごく気分が上がってるのを感じてた。
 今度はみんなと一緒に鎧と剣の手入れをして、食事をして、湯あみをした。さっぱりしてから涼みに庭に出ると、そこにはドゥケとポメリアの姿があった。石の腰かけに座ってポメリアを膝に抱いてるドゥケの姿は、やっぱりどこか柔和な感じがしてた。
「辛くないか…?」
 ポメリアに向かってそう声を掛けるのが聞こえた。
「…」
 ポメリアは黙って首を横に振る。ふわっとした金髪がさわさわとドゥケの胸を撫でるように動いてた。
 ドゥケがまた話し掛ける。
「そうか…強いな、ポメリアは……でも俺はダメだ……今でも逃げ出したくなる……いくら負けないと分かっててもやっぱり怖いよ……それに魔王には俺は……」
 そこまで言ったところでハッと私の方に振り向いた。気配に気付いたみたいだ。でもその瞬間に、
「やあ、夕涼みかい? 今日はいい風が吹いてて気持ちいいよね」
 と、軽薄そうな笑顔でそう声を掛けてきた。ポメリアに話し掛けてた時とは全然違う感じで。
「は、はい。そうですね…! お邪魔してしまってすいません!」
 ポメリアに話し掛けてた内容が聞こえてしまってたことには触れない方がいい気がして、私は単にそう応えただけだった。
 そのまま踵を返して宿舎に戻る。
 でも……
『怖い』って何…? 『俺は魔王には』って、何のこと……?
 え? あいつが偉そうとか軽薄そうにしてるのは演技ってこと…?
 いやいや、そんなワケ。どっかのお伽話じゃないんだから。
 なんてことを考えながら自室に戻って、私はベッドにもぐりこんでた。
 はあ、危ない危ない。なんか情にほだされそうになってたよ。あいつはそんなんじゃないからね。さっきのもきっと私の勘違いだ。私まであいつに騙されちゃったら誰が冷静でいられるの。あいつの裏の顔を暴いてみんなの目を覚まさせなくちゃいけないんだから…!
 …でも、<裏の顔>って何だろう…? そう言えばあいつ、何かそんなに酷いことしてたかな。女の子を弄んでるとかそんな話は別になかったかな。よくはべらせてはいるけど、いやらしい目で見てたりはするけど、リデムとは破廉恥なことしてたりするけど、あれ? 他の女の子にはそんなことしてないような…?
 ああ、ダメだダメだ…! それがダメなんだ! それがきっとあいつの手なんだ。軽薄そうに見せて実はっていうのを狙ってるに違いない…!
 騙されないぞ! 騙されるもんか!
 私は正気、私は冷静、私は騙されたりしないんだ…!

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