ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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和を乱す

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 さっきも言ったけど、私の父は立派な騎士だった。強くて誠実で理想の男性像だった。
 でも、最初の魔王軍との闘いで……
 最後まで立派に戦ってたくさんの魔物を倒して、それで力尽きたそうだった。
 その知らせを受けた私は、泣かなかった。立派に戦った父に申し訳ないと思ったから、何度も泣きそうになったけど歯を食いしばって泣かなかった。
 私にとって<騎士>とは、父そのものだった。
 なのに、ドゥケはどうしてあんななの!? おかしいでしょ!? 訳分からない!
 鍛錬を終えて部屋に戻ろうとした時、またドゥケの姿が見えた。今度はライアーネ様と一緒だった。しかも、ドゥケのことを見るライアーネ様の目は何だかすごく熱を帯びていて、うっとりとした表情にも思えた。
『くっ…!』
 私は唇を噛み締めながらその場を立ち去って、湯あみをして汗を流して部屋に戻った。同室の団員達が、
「ホントに熱心ね。でも無理すると体に毒よ?」
「そうそう、お肌にだって悪いし」
「荒れた肌じゃ、ドゥケ様に申し訳が立たないもんね~」
「ね~!」
 とか何とか。
 おかしいよ…! こんなのおかしい…!!
 だけど一人が言った。
「…シェリスタ…あなたがドゥケ様のことを嫌うのは勝手だけど、和を乱すのはやめてね……」
「わ、私は別に、そんな……!」
 言い返そうとしたけどそれ以上は何も言えなくて、私はベッドに潜ってしまった。
 和を乱す…? 私が…?
 私はそんなつもりない。騎士としての規範は守ってるはずだし命令には従ってる。なにも間違ったことはしてない筈だ。それで言ったらドゥケの方こそ部隊の風紀を乱してる張本人じゃないの…!
 でも、私がそれを口にしたらみんなきっと怒るんだろうな。
『和を乱さないでって言ったでしょ!?』
 とか言われるかな。
 何でこんなことになっちゃったの……?
 こんなだったら、別の団に配属された方が良かったかな……
 そうやってベッドの中で体を丸めてるうちに眠ってしまってて、非常呼集を告げる声にハッとなった。外はまだ暗い。東の空は白み始めてるけど、完全に夜が明けるまではまだかかる頃だった。
「魔王軍の進撃だ! 急げ!!」
 リデムとポメリアも用意をする。リデムはいつもの通りに凛々しい感じでいたけど、ポメリアは寝ているところを無理に起こされた小さな子供みたいになってて本当に可哀想だった。だけど他にヒーラーがいないからどうしようもない。
 こんなこと、いつまで続くんだろう……
 魔王軍とは、マシム川という大きな川を挟んで睨み合ってる状態だった。こちらから攻め入るには川を越えなければならないけど、川にはたくさんの魔物が身を潜めててあまりにも危険だから向こうが進軍してくればそれを迎え討つのが戦いの基本になってたのだった。

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