23 / 105
何が正しいのか
しおりを挟む
ポメリアの世話を終えて私が自室に戻ろうとしたその時、またリデムが魔王軍の進撃を察知した。急遽、当番の部隊がドゥケを先頭に出撃していく。この時私は当番じゃなかったから陣地で待つことになった。もし応援要請があれば出なきゃいけないから遊んでいていい訳じゃない。鎧をチェックし剣を改めてチェックし、いつでも出られるように準備は整えた。
同室のアリエータとテルニナは出撃している。彼女らが無事に帰ることを願った。
すると、私と同じようにいつでも出撃できるように準備を整えて待機してた女の子が一人、イライラした様子で爪を噛んでるのが分かった。
どうしたんだろうと思って何となくその子の様子を見てると、一緒に待機してたソーニャが話し掛けてくる。
「今日、彼女がドゥケ様の夜伽をする筈だったんだよ。彼女も初めての夜伽で、ずっと前からすごく楽しみにしてた。今日、できなかったとしたら早くても次は一ヶ月後かな。もし私も同じように夜伽の日にこんなことになったらキレちゃうかもね」
だって。
私は言った。
「ごめん…私にはその気持ちは分からない…彼のことがどうしてそんなに想えるのかどうしても分からないんだ……ねえ、これって私がおかしいの? 私が普通じゃないの…? 私…ここにいていいのかな……」
普通に考えれば私は騎士なんだから、騎士として国と民を守る為に戦えばそれでいい筈なんだ。それが私の役目だった筈だ。それなのに、ここにいるとそれだけじゃダメなの?って思ってしまう。私達の上に国王陛下のように君臨するドゥケに忠誠を誓って自分の純潔さえ捧げないとダメなのかって気にさえなってきてしまうんだ。
そうじゃない。そんな筈ないって自分に言い聞かせてきたけど、みんながみんな、彼に心酔しきってる。ポメリアに至っては『彼の心を守って』とかまで言ってくる。そんなの口から出まかせだって思いたいのに、ポメリアの縋るような目を見てたら割り切れなくなってしまった。
「分からない…私にはもう何が正しいのか分からない……!」
頭を振って自分の膝に置いた拳を握り締めながら私は言った。すると私は自分の体が抱き寄せられるのを感じてしまった。ハッと思って顔を上げると、ソーニャが私を抱き締めて顔を覗き込んでるのが分かった。
「前にも言ったけど、私達はあくまで自分からドゥケ様に自らを捧げてるの。だからそれを望んでない人まで強要はしないんだよ。だってそうでしょ? 青菫に入ればドゥケ様に全てを捧げるのが義務だったら、入る前に聞かされないとおかしいじゃん。だけどそんな話されなかったでしょ?」
……確かに。そんな話、匂わされることもなかった。
ソーニャは続ける。
「私達がドゥケ様を愛してるのは、理屈じゃないんだ。どうしようもなくあの方が愛おしいの。それが何故か分かってるコの方が少ないんじゃないかな。ただ、すごく感じるんだ。私達がこうして守って差し上げないとダメなんだって感じるんだよ」
それは、ポメリアが言ってたことにも通じる言葉のような気がしたのだった。
同室のアリエータとテルニナは出撃している。彼女らが無事に帰ることを願った。
すると、私と同じようにいつでも出撃できるように準備を整えて待機してた女の子が一人、イライラした様子で爪を噛んでるのが分かった。
どうしたんだろうと思って何となくその子の様子を見てると、一緒に待機してたソーニャが話し掛けてくる。
「今日、彼女がドゥケ様の夜伽をする筈だったんだよ。彼女も初めての夜伽で、ずっと前からすごく楽しみにしてた。今日、できなかったとしたら早くても次は一ヶ月後かな。もし私も同じように夜伽の日にこんなことになったらキレちゃうかもね」
だって。
私は言った。
「ごめん…私にはその気持ちは分からない…彼のことがどうしてそんなに想えるのかどうしても分からないんだ……ねえ、これって私がおかしいの? 私が普通じゃないの…? 私…ここにいていいのかな……」
普通に考えれば私は騎士なんだから、騎士として国と民を守る為に戦えばそれでいい筈なんだ。それが私の役目だった筈だ。それなのに、ここにいるとそれだけじゃダメなの?って思ってしまう。私達の上に国王陛下のように君臨するドゥケに忠誠を誓って自分の純潔さえ捧げないとダメなのかって気にさえなってきてしまうんだ。
そうじゃない。そんな筈ないって自分に言い聞かせてきたけど、みんながみんな、彼に心酔しきってる。ポメリアに至っては『彼の心を守って』とかまで言ってくる。そんなの口から出まかせだって思いたいのに、ポメリアの縋るような目を見てたら割り切れなくなってしまった。
「分からない…私にはもう何が正しいのか分からない……!」
頭を振って自分の膝に置いた拳を握り締めながら私は言った。すると私は自分の体が抱き寄せられるのを感じてしまった。ハッと思って顔を上げると、ソーニャが私を抱き締めて顔を覗き込んでるのが分かった。
「前にも言ったけど、私達はあくまで自分からドゥケ様に自らを捧げてるの。だからそれを望んでない人まで強要はしないんだよ。だってそうでしょ? 青菫に入ればドゥケ様に全てを捧げるのが義務だったら、入る前に聞かされないとおかしいじゃん。だけどそんな話されなかったでしょ?」
……確かに。そんな話、匂わされることもなかった。
ソーニャは続ける。
「私達がドゥケ様を愛してるのは、理屈じゃないんだ。どうしようもなくあの方が愛おしいの。それが何故か分かってるコの方が少ないんじゃないかな。ただ、すごく感じるんだ。私達がこうして守って差し上げないとダメなんだって感じるんだよ」
それは、ポメリアが言ってたことにも通じる言葉のような気がしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる