ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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次元が違いすぎて

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 彼がどうして人間を裏切ったのかその理由を知りたいとも心のどこかで思ってたのに、こうして実際に顔を合わせると、そんなのはもうそうでもいいと思えてしまった。と言うか、それを聞いて自分の心が揺らぐのが怖かったのかもしれない。
「うわあああああっ!!」
 叫びながら、私は腰溜めに剣を構えて、体ごと切っ先を真っ直ぐ彼に向かって奔らせた。鎧の弱いところに当たれば、鎧ごと体を貫くことさえできる一撃だった。それを行う私に、一瞬のためらいもない。
 これで彼が死んだとしても、むしろそれで本望だ。そのくらいの気持ちだった。
 だけど……
 彼は<勇者>だった。私の渾身の一撃さえ、子犬がじゃれつこうとしてるかのように軽く受け流してみせる。
 突撃の勢いを逸らされて、私は投げ出されるようにして地面を転がった。
 すぐさま体を起こして体勢を立て直そうとするけど、あまりに次元が違いすぎて、悔しいという気持ちさえ浮かんでこなかった。巨大な岩に体当たりして弾き返されたからってそれを悔しいとは普通は思わないんじゃないかな。それくらいだった気がする。
『カッセル…どうしてその力を人間のために使ってくれないの…?』
 もう理由なんて知りたくもない。でも、やっぱりそんなことを考えてしまう。
 そんな私を、まるで憐れむかのような目で彼は見る。
『憐れむ気持ちがあるなら剣を向けないで!』
 そうも思いながら私は再び突進した。すると、テルニナとアリエータが私と一緒に切りかかってくれた。
 だけど、三人がかりでもまるで歯が立たない。当たり前なのは分かっていても、ここまで差がありすぎると、逆に笑いさえ込み上げてしまう。
「さすが<勇者>ってことね……」
 自嘲めいた笑顔を張り付かせながら、私は呟いた。それでも諦めることはできない。
 なのに、カッセルは私達を弄ぶかのようにあしらった。その時、
「うおおおおおおおおっっ!!」
 と、爆音みたいな気魄と共に、小さな影がカッセルに飛び掛かった。
「アリスリス!?」
 アリスリスだった。頭から真っ二つにしようとするかのように真っ直ぐ剣を振り下ろす。それでも、カッセルは涼しい顔のまま、彼女の剣戟を片手で受け止めた。
「容赦しないぞ、貴様あ!」
 人間を裏切りポメリアを連れ去り、リリナを拉致した魔王軍に加担するカッセルに対するアリスリスの怒りが炎のように燃え盛ってるのが見えるようだ。
 仮にも騎士である私達でさえ目で追うことがままならないほどの早さでアリスリスは剣戟を繰り出し、カッセルはそれを受け止めた。やっぱり、まるで相手にならなかった。

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