ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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大きすぎる力

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 よく、「生まれ変わった気分」なんて言葉を聞くけど、たぶん、これに比べればそんなのただの言葉遊びなんだろうなっていうのをすごく感じた。
 本当に私は、『生まれ変わって』しまったんだ。自分が自分じゃないような、自分の体が全く別のものになってしまったのが分かる。
「勇者……これが、勇者……」
 自分の中にある途方もない<力>。それでいてその力が私の意のままになるんだっていうのが、手をぎゅっと握りしめただけでも分かる。
「力が……溢れてくる」
 さっきまで体を起こすのも辛かったのに、今は体そのものが羽のように軽い。軽くジャンプしただけで空高く飛び上がってしまえそうな気がする。
 正直、バーディナムへの不信感とか神妖精しんようせい族への嫌悪感とかも、もうどうでもいいっていうくらいに気分が高揚してた。
「はは…ははは……はははははははは!」
 笑いが勝手に込み上げてきて止められない。
「いい! いいねこれ! 魔王も何もかもぶっとばしてやる!!」
 もう、自分でも何を言ってるのかよく分からないくらいに、ひどく酒に酔って無茶苦茶にテンションが上がって気が大きくなってる時のような感覚だったかもしれない。
 そんな私を、ティアンカがうっとりした目で見詰めてる。それに気付いた瞬間、彼女の体を抱き寄せて覆い被さるようにして唇を奪ってた。
「ああ…勇者様…勇者様ぁ……」
 とろけるような表情をして鼻にかかった声を上げる彼女が、愛おしくてたまらなかった。



 で、三十分ぐらい<発散>して、ようやく私は酔いが醒めてきたみたいに気分が落ち着いてくる。
 すると途端に今度は恥ずかしくなってきて……
『な……なにやってんの、私…!?』
 恐る恐る横を見ると、満たされた表情で寝息を立てるティアンカが。
『なんじゃこりゃーっっ!?』
 って、叫んでしまいそうになるのを何とか飲み込んだ。
 こうなる以前のあの悲壮な覚悟はどこへやら。完全に酒で前後不覚になってやらかした気分だった。
「…大丈夫です。ほとんどの方はそうなるんですよ……私はまだ二人目ですけど、話には聞いてますから」
 なんて、けだるそうに私に背を向けたままベッドに横たわったままティアンカは言うけど、私の方はまったくそれどころじゃなかった。
 突然、大きすぎる力が与えられると、人間ってこうなるんだ……?
 それが実感だった。
 瞬間、背筋を冷たい汗が伝う。
 酔っぱらってやらかしちゃったどころじゃ済まない。これは、よっぽど自分をしっかり持ってないと、とんでもないことになる……
 <力>というものの恐ろしさを、改めて思い知らされたのだった。

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