ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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ティタニア

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 なんだろう? 『楽しい』って言ったら変なんだけど、でもこの時、私はすごく楽しかったと思う。ドゥケと息を合わせて、バーディナムやドラゴンたちの攻撃に合わせて剣戟を繰り出すのが、まるでダンスみたいに思えてた気がする。
 もちろん、いろんな複雑な気持ちもあった。『どうしてこんなことになっちゃったんだろう?』とも思ったりした。でも、自分のすべてを振り絞ってこうしてると、そんなことどうでもいいっていう気持ちにもなってくる。
 何気なく彼の方を見ると、彼もなんだか楽しそうだった。そんな彼を見てるとまた胸が熱くなってきて力が湧いた。
 私とドゥケの攻撃がどれだけ貢献できてたのかは分からないけど、少しずつ、魔王にダメージが蓄積していくのが分かった。真っ黒なその体が傷付き、砕け、崩れていく。
『いける…! 倒せる……!』
 私はそう思った。それがまた力になった。『勝てる!』っていう予感が支えになった。
 だけど―――――
「やった…!?」
 私たちの猛攻に、魔王の体がよろめいて、バリバリとひび割れて、膝をつくと見えたその時、崩れ落ちたその体の中から、光が迸る。
「な…なに……!?」
 眩しくてほとんど目を開けてられない。手で遮ろうとしても、その手すら通り抜けて光が私の目を射る。
「なんなの…これ……!」
 僅かに光が収まってきて、ようやく目を向けることができた。そんな私の視線の先にあったもの―――――
「……はい……?」
 なんて、間抜けな声しか出なかった。だってそこにいたのは、ついさっきまでの真っ黒な怪物だったそれとは、まったく違った<もの>だったから。
 空を覆いつくさんばかりに広げられた、巨大な<羽>。
 私は、それに見覚えがあった。
「これって、ポメリアの……?」
 思わず声に漏れた通りだった。
 キラキラと輝いて、透き通った、昆虫の羽のような、クリスタルの作り物のようなそれは、確かにポメリアと一緒に森の中を彷徨った時に見た、彼女のそれと同じもの。
 神妖精しんようせい族の、羽……?
 その羽を広げた<それ>は、美しい女性の姿をしてた。大きさはおかしいけど、確かに女性だった。
 それを見た私の脳裏によぎった名前。
「まさか…ティタニア……?」
 何の根拠もなかったけど、でもたぶん間違いない。ポメリアやティアンカに似た印象の、どこか神秘的な姿。だけどポメリアやティアンカよりももっとずっと神々しい。
 はっきり言って、どう見てもただの怪物にしか見えないバーディナムなんかよりはよっぽど<神様>っぽかったんだ。
「……っっ!?」
 その<ティタニア>が両手で何かを包むようにすると、中に小さな太陽のような光が生まれ、そこから迸った無数の<光の矢>が、私の、ドゥケの、バーディナムの、ドラゴンたちの体を貫いたのだった。

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