ズルいチート勇者なんか好きになってあげないんだから!

せんのあすむ

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最後のキス

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 キラキラと光を放って、美しく、神々しく、穏やかに微笑んでいるようにも見えながら、<それ>は容赦なく私たちを射た。
 その力は強大で、無慈悲で、僅かなためらいもない。途方もない意志と信念を感じた。
 いや、意志とか信念とか、そんなのとは次元が違うのかな。圧倒的な<存在の力>とでも言えばいいのか。
「ドゥケ!」
 <それ>から放たれた光の矢に射られ、ドゥケの体がくずおれていく。
「ダメ…だ。逃げろ……あれには勝てない……」
 肩を射られて私も左腕が全く動かなかったけど、右手で彼を支えた時、苦痛に歪んだ表情でドゥケが言った。彼がこんな風に言うなんてと思ったけど、でも私が感じていたのも同じだった。
『これには勝てない』
 って……
 一体、何が起こったんだろう。カッセルは確かに、魔王の中にティタニアがいると言ってた。ということは、これは魔王とティタニアが融合した姿ってことなの……?
 困惑する私たちの周りには、同じように光の矢で射られて地面に落ちたドラゴンたちが苦しそうにもがいていた。体が大きいからそれだけたくさんの光の矢に射られたんだ。
 さすがにと言うべきか何なのか、バーディナムはまだ立っていたけど、その醜い顔をゆがめているのは分かってしまった。
 まさか、バーディナムまで……?
 そう思った瞬間、再びあの<光の矢>が放たれた。
「があっっ!?」
 自分の口から出たとは思えない声が漏れて、ドゥケの体を支えたまま、私も地面に崩れ落ちた。
「か…、あ…? あ……」
 胸を貫かれて、息ができない。
『ダメだ…死ぬ……』
 そう察してしまった。頭の中でぐちゃぐちゃに今まで経験したことが駆け巡る。<走馬灯>ってやつだと思った。
『これで終わりなんだ…? でも…いいかな…やれるだけはやったし…ドゥケと一緒なら……』
 不思議と怖さはなかった。もしかしたら彼が私を抱きしめてくれてたからかもしれない。だけどもう、彼の目には光は宿ってなかった。私の胸を貫いた光の矢は、そのままさらに彼の心臓を貫いてたみたいだった。
『先に逝くなんてズルいよ…私も逝くから、ちょっと待ってて……』
 彼の体に重なって倒れて、ちょうど唇が触れあってた。最後のキスだった。
『ああ……眠い……』
 スーッと自分の体が沈み込むように、そのくせなんだか軽くて、すごく不思議な気分だった。
『これが…<死>か……』
 ぼんやりとそんなことを考えてた私の耳に届いてきた<声>。
「イヤだ! 死なないでシェリスタ……!!」

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