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桃源郷:ボディガード4
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『オークションを開始いたします』
さてさて、もうしばらくしましたらオークションが始まります。巨大なモニターが中央に現れます。どの席に座っているお客様にも、必ず見られるよう全方位式となっていますが、万が一、自分の席からは観られないなどの不備がありましたら、すぐにお知らせ下さい。お客様の競技に差しさわりがあるため、すぐに対処いたします。
オークションは一番高い金額を提示した方が、商品を自分のものにできます。金額を提示する際、モニターを通して行いますが、金額をあげた方の顔を巨大なモニターで数字と共に表示いたします。お顔を表示されたくない方は、モニターからボタンを押してくださるようお願い申し上げます。その際はお客様の提示した金額のみ表示されます。それではあと数分で始まります。落ち着いてお待ちください。
「まだ始まってないな」
館内を見回っていたショウがリンの隣にすっとやって来て赤いシートに座りました。その途端、開始を告げるブザーが鳴り、会場内が慌ただしくなります。ショウのようにギリギリで駆け込んできた人たちが、自分のシートを見つけて急いで座っていました。
「ギリギリセーフだったね。どうだった?」
「欲しいものがあるんだろうな。目をギラギラさせたおじいさんとかいた。隣に小さな女の子がいたから、孫のためかもしれん。館内に関しては事前に渡された資料と変わりない。緊急の避難対策やスタッフの様子についても何も問題がなかった」
きびきびと報告するショウの言葉を聞いて、リンがお疲れ様と笑いました。
「何か、飲み物頼む?一度に頼もうと思って待ってたの」
「そうか、それじゃあ、俺は、ビ…お茶をもらおうかな」
ビールと言いかけて思わず言い直します。リンの隣で聴いていた通鷹がモニターのボタンを押して注文を完了しました。ざわざわとした空気の中、突然、照明が消え天井に夜空と満月が浮かび上がります、ちらちら降り注ぐ雪のような白いものは、桜の花びらでした。満月を証明に見立てた、夜のオークションです。実際に月だけでは暗すぎるので他にも照明を使い、薄暗くてもはっきりまわりが見えるよう工夫されているようでした。
「凝ってるな」
「花びらは、ホログラムのようですね」
手でつかめない花びらは、視界を遮るようなものではありません。幻想的な雰囲気に場内が静かになりました。
「お花見みたい」
リンも嬉しそうに花びらに手をのばします。そんなリンをショウが注意深く眺め、同じように微笑みながらもリンから目を離さない通鷹と目が合って二人でこっそり笑いました。
「紳士淑女のみなさん、今宵は当協会のオークションを足をお運び頂き誠にありがとうございます。当協会の歴史は古く、なんと二万年。この二万という数字がすごいのかどうかは、お客様にもよるでしょう。何せ数万年生きている方もいらっしゃるのですから」
中央に現れたシルクハットとスーツ姿の初老の男がステッキをくるくると回し、なめらかに会場にいる面々へ語りかけます。思わず静まり返った会場で、低い声が響き渡りました。
「さて、あまり前置きが長くなれば、皆さん我慢できなくなりますね。最初の商品をお目にかけましょう」
この時、男のそばで泡が立ち、どういった仕掛けになっているのか男の足元から水柱が立ちました。透けて見える魚がくるくるとまわり、人魚の歌声が響きます。水柱がすうっと消え、真ん中に、口を閉じた真珠貝が姿を現しました。
つづく
さてさて、もうしばらくしましたらオークションが始まります。巨大なモニターが中央に現れます。どの席に座っているお客様にも、必ず見られるよう全方位式となっていますが、万が一、自分の席からは観られないなどの不備がありましたら、すぐにお知らせ下さい。お客様の競技に差しさわりがあるため、すぐに対処いたします。
オークションは一番高い金額を提示した方が、商品を自分のものにできます。金額を提示する際、モニターを通して行いますが、金額をあげた方の顔を巨大なモニターで数字と共に表示いたします。お顔を表示されたくない方は、モニターからボタンを押してくださるようお願い申し上げます。その際はお客様の提示した金額のみ表示されます。それではあと数分で始まります。落ち着いてお待ちください。
「まだ始まってないな」
館内を見回っていたショウがリンの隣にすっとやって来て赤いシートに座りました。その途端、開始を告げるブザーが鳴り、会場内が慌ただしくなります。ショウのようにギリギリで駆け込んできた人たちが、自分のシートを見つけて急いで座っていました。
「ギリギリセーフだったね。どうだった?」
「欲しいものがあるんだろうな。目をギラギラさせたおじいさんとかいた。隣に小さな女の子がいたから、孫のためかもしれん。館内に関しては事前に渡された資料と変わりない。緊急の避難対策やスタッフの様子についても何も問題がなかった」
きびきびと報告するショウの言葉を聞いて、リンがお疲れ様と笑いました。
「何か、飲み物頼む?一度に頼もうと思って待ってたの」
「そうか、それじゃあ、俺は、ビ…お茶をもらおうかな」
ビールと言いかけて思わず言い直します。リンの隣で聴いていた通鷹がモニターのボタンを押して注文を完了しました。ざわざわとした空気の中、突然、照明が消え天井に夜空と満月が浮かび上がります、ちらちら降り注ぐ雪のような白いものは、桜の花びらでした。満月を証明に見立てた、夜のオークションです。実際に月だけでは暗すぎるので他にも照明を使い、薄暗くてもはっきりまわりが見えるよう工夫されているようでした。
「凝ってるな」
「花びらは、ホログラムのようですね」
手でつかめない花びらは、視界を遮るようなものではありません。幻想的な雰囲気に場内が静かになりました。
「お花見みたい」
リンも嬉しそうに花びらに手をのばします。そんなリンをショウが注意深く眺め、同じように微笑みながらもリンから目を離さない通鷹と目が合って二人でこっそり笑いました。
「紳士淑女のみなさん、今宵は当協会のオークションを足をお運び頂き誠にありがとうございます。当協会の歴史は古く、なんと二万年。この二万という数字がすごいのかどうかは、お客様にもよるでしょう。何せ数万年生きている方もいらっしゃるのですから」
中央に現れたシルクハットとスーツ姿の初老の男がステッキをくるくると回し、なめらかに会場にいる面々へ語りかけます。思わず静まり返った会場で、低い声が響き渡りました。
「さて、あまり前置きが長くなれば、皆さん我慢できなくなりますね。最初の商品をお目にかけましょう」
この時、男のそばで泡が立ち、どういった仕掛けになっているのか男の足元から水柱が立ちました。透けて見える魚がくるくるとまわり、人魚の歌声が響きます。水柱がすうっと消え、真ん中に、口を閉じた真珠貝が姿を現しました。
つづく
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