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桃源郷:ボディガード6
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『礼儀をわきまえないお客様はご退場願います』
先ほども申しましたように、当協会内において争いごとはご法度。遠慮なく退場願います。ああ、不可抗力のお客様は、どうぞそのままに多少の防御は必要なためお気になさらないで下さい。ただし、明らかに返り討ちを狙ったものであれば、何と言おうとこちらの判断で即刻退場願います。
「オークション会場って、初めて来たけど、すごいのね」
リンは、闘技場の様相を呈した場所から出た先のロビーで大きく息を吐きました。赤い絨毯、乳白色の大理石の壁と廊下、天井からはシャンデリアが吊るされています。前半の部が終了し休憩を挟んで、後半の部が開催されます。
「ブラックパール、何ともなかったね」
最初に紹介されたブラックパールは、赤髪の少女の手に無事渡り、誰かに盗られる心配はなさそうでした。
「ちょっとしたお遊びだろう」
リンのそばでショウが笑い、飲み物を持っていた通鷹からリンゴジュースを受け取ります。リンはオレンジジュースを口にして笑いました。
「私たちが欲しいものは、後半の部だね」
「はい。高時も結構な額を張る予定ですよ」
「春の女神から頼まれたピンクのリボンだったか。本人も来たかっただろうな.。リンさんは靴で、通鷹さんは料理包丁」
「落札できるかどうかは分かりませんけどね」
3人で笑っていると、リン達から少し離れ場所で声が上がりました。少女の声と金切り声を上げる女の声。何の騒ぎかとロビーで談笑していた人々が注目します。手を上げて引っぱたかんばかりの勢いの女を、駆けつけた協会スタッフ数人が羽交い絞めにして連れて行きました。
「離して!あれは私のよ!」
「失礼ながら、こちらにいらっしゃるお客様のものです。あなた様には即刻退場して頂きます」
「途中まで私のものだったのに!」
スタッフに抑えられながら騒ぐ女の様子は尋常ではありません。緑色の顔が歪み、キレイに丸めた頭からは鬼の角のようなものが突き出ています。止められなければその場で少女を殺してでも奪ったに違いありません。それぐらい恐ろしい様子でした。
「最後まで競り合っていた人よね」
「鬼の種族かもしれません」
リンは通鷹に話しかけながら、ふと少女の方へ視線を向けました。掴みかかられたため、赤い髪が乱れています。衣服も少し歪んでいました。少女は一人のひょろっと背の高い男に声をかけて去って行きます。ぼんやりしていたリンは、手に持っていたグラスをうっかり傾けてしまいました。
「リン、危ない」
「リンさん、服が」
気づけばグラスの中のジュースがこぼれ、さほどではありませんがリンの衣服を濡らしてしまいました。絨毯にこぼしてしまったかと思いましたが、濡れたのはリンの黒いボレロだけでした。
「ごめんなさい」
通鷹がリンのグラスを持ち、リンは自分の濡れ場所を手でおさえます。大したことはありませんでしたが、化粧室で整えたいと思いました。
「私、化粧室行ってくるね。ニオイが気になるし」
「では、俺がついて行こう」
通鷹がグラスを返しておくことに決まり、リンはショウを連れて化粧室へと向かいます。化粧室の前には先ほど少女と一緒にいた男が立っていました。リンとショウに対して軽く会釈をしたので、二人もそろって頭を下げます。
「それじゃ、リンさん、俺はここで待っているから。何かあったら、悲鳴を上げるなり音を立てるなりしてくれ。すぐに駆けつける」
「ごめんなさい。すぐに戻るね」
ショウは先に来ていた男から間隔を空けて立ちます。リンは足早に化粧室の中へと歩いて行きました。
つづく
先ほども申しましたように、当協会内において争いごとはご法度。遠慮なく退場願います。ああ、不可抗力のお客様は、どうぞそのままに多少の防御は必要なためお気になさらないで下さい。ただし、明らかに返り討ちを狙ったものであれば、何と言おうとこちらの判断で即刻退場願います。
「オークション会場って、初めて来たけど、すごいのね」
リンは、闘技場の様相を呈した場所から出た先のロビーで大きく息を吐きました。赤い絨毯、乳白色の大理石の壁と廊下、天井からはシャンデリアが吊るされています。前半の部が終了し休憩を挟んで、後半の部が開催されます。
「ブラックパール、何ともなかったね」
最初に紹介されたブラックパールは、赤髪の少女の手に無事渡り、誰かに盗られる心配はなさそうでした。
「ちょっとしたお遊びだろう」
リンのそばでショウが笑い、飲み物を持っていた通鷹からリンゴジュースを受け取ります。リンはオレンジジュースを口にして笑いました。
「私たちが欲しいものは、後半の部だね」
「はい。高時も結構な額を張る予定ですよ」
「春の女神から頼まれたピンクのリボンだったか。本人も来たかっただろうな.。リンさんは靴で、通鷹さんは料理包丁」
「落札できるかどうかは分かりませんけどね」
3人で笑っていると、リン達から少し離れ場所で声が上がりました。少女の声と金切り声を上げる女の声。何の騒ぎかとロビーで談笑していた人々が注目します。手を上げて引っぱたかんばかりの勢いの女を、駆けつけた協会スタッフ数人が羽交い絞めにして連れて行きました。
「離して!あれは私のよ!」
「失礼ながら、こちらにいらっしゃるお客様のものです。あなた様には即刻退場して頂きます」
「途中まで私のものだったのに!」
スタッフに抑えられながら騒ぐ女の様子は尋常ではありません。緑色の顔が歪み、キレイに丸めた頭からは鬼の角のようなものが突き出ています。止められなければその場で少女を殺してでも奪ったに違いありません。それぐらい恐ろしい様子でした。
「最後まで競り合っていた人よね」
「鬼の種族かもしれません」
リンは通鷹に話しかけながら、ふと少女の方へ視線を向けました。掴みかかられたため、赤い髪が乱れています。衣服も少し歪んでいました。少女は一人のひょろっと背の高い男に声をかけて去って行きます。ぼんやりしていたリンは、手に持っていたグラスをうっかり傾けてしまいました。
「リン、危ない」
「リンさん、服が」
気づけばグラスの中のジュースがこぼれ、さほどではありませんがリンの衣服を濡らしてしまいました。絨毯にこぼしてしまったかと思いましたが、濡れたのはリンの黒いボレロだけでした。
「ごめんなさい」
通鷹がリンのグラスを持ち、リンは自分の濡れ場所を手でおさえます。大したことはありませんでしたが、化粧室で整えたいと思いました。
「私、化粧室行ってくるね。ニオイが気になるし」
「では、俺がついて行こう」
通鷹がグラスを返しておくことに決まり、リンはショウを連れて化粧室へと向かいます。化粧室の前には先ほど少女と一緒にいた男が立っていました。リンとショウに対して軽く会釈をしたので、二人もそろって頭を下げます。
「それじゃ、リンさん、俺はここで待っているから。何かあったら、悲鳴を上げるなり音を立てるなりしてくれ。すぐに駆けつける」
「ごめんなさい。すぐに戻るね」
ショウは先に来ていた男から間隔を空けて立ちます。リンは足早に化粧室の中へと歩いて行きました。
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