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第2章 学院の中でも準備です
やるべき事をやってから
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約束の日となったので、1人で森の湖まで向かう。
剣を2つ持って。
「お待ちしておりました、リアム様」
「すまない、こんなに早く来ているとは思っていなかった」
当然である、わたくしはリアム様が女性を待たせるはずがないと判断したからこそ、常識外れの早い時間に来たのだから。
「いえ、わたくしが待つために早く来たのです、お気になさらず」
「そこまでして、どうして早く来たのか教えて貰っても?」
「申し上げたいことが沢山あるからですわ」
そう告げて、わたくしは切り出した。
「まず、エルド王国では剣術が盛んと聞いておりますわ、ジョシュア様もかなりの使い手だとか」
「ああ、その通りだ。兄上はその中でも上位に入るだろう。年齢を考えれば異例なことだ」
そんな兄であるジョシュア様と比べられれば、相応に劣等感も抱くだろう。
「当然、リアム様もそれなりの使い手であるはず、なぜその腕を磨かないのですか?」
「言ったろ、何をしても兄上には勝てないと悟ったからだ」
何をしても、ですか。
「申し訳ございませんが、この剣を振ってもらえますか、もちろん本気で」
「構わないが、本当にいいのか?」
「近衛騎士達の修練をよく観覧しておりますもの、怖がったりはしませんので、ご存分に」
きっと、わたくしの思う通りならこれだけで分かるはず。
「分かった、いざ」
やっぱり、そういう事でしたのね。
「ありがとうございます。確かに、そんな剣では一生かけても誰にも勝てませんわ」
「そんな事は自分が一番分かってるさ」
「いいえ、分かっておりません」
目を白黒させてる間にある意味でのお説教スタートですわ。
「まず、リアム様の剣は相手を想定しておりません。ただお手本のように剣を振っているだけですわ。そもそも、剣術というのは相手を倒すためのもので、もっと言うなら殺すための技ですわ」
それ故に、剣を振るう際は相手を想定する。
殺すつもりで振るのだ。
そうして、振り続けることで相対した時、本気の一撃を放てる。
「相手も想定していないような軽い剣は、当然怖くないので、簡単にあしらえますわ。リアム様、まず剣を振るう上でもっとも大事なことが出来ていないのに何をやっても勝てなかったなんて、おこがましいですわ」
やるべき事ができていない、見えてもいない。
そんな状態で、ただ闇雲に練習しても時間の無駄である。
「そして、自分に出来ることを正確に把握することですわ。相手を見据えて振るえるようになっても、それはただ最初の1歩を踏んだに過ぎません」
何でもかんでも、努力すればできるようになるわけじゃない。
どうやったって、限界は出てくる。
「人には、得手不得手がどうしてもありますの。これを無視して、とにかく手広くやっても結果は着いてきませんわ。なので、自分ができるものを伸ばしていくしかありませんわ」
中には、なんでも出来る万能の天才もいるでしょうけれど、そんなのは例外のようなものである。
「ただの振り下ろしでも、何度も何度も本気で相手を倒すつもりでやり続ければ必殺の域まで伸ばせるものですわ。リアム様に必要なのはそういった凡人がたどり着ける境地を目指すことですわ」
わたくしが本気で魔法を練習し続けている理由でもある。
魔法は誰でも極められるもの。
得手不得手はもちろんあるけれど、それでも出来ることを必死に伸ばし続ければ応えてくれる技術だ。
天才でもないわたくしが、わたくしのために選んだ力、それが魔法である。
「リアム様、わたくしも才能なんてものに恵まれてはおりませんわ。でも、ずっと欠かさずにやり続けたおかげでここまではできるようになりましたの」
そうして、持ってきていたもう1振りの剣を振った。
魔法剣、魔法を用いて行う剣術。
一つ一つ区切りながら見せるように振るう。
「女であるわたくしでも、相手を見据えて振るえるこの剣をリアム様が出来ないはずありませんわ、わたくしのように魔法を使えなんて言いません。ただ、リアム様ができる剣術を一つだけでも極めたと言えるまでやり続けてくださいませ」
わたくしも極めたなんて到底言えない。
だからこそ、苛立ちを覚えたのだ。
やるべき事をやってから嘆くのではなく、出来ることもしてないのに、何をやっても勝てなかったと言った事に、諦めて逃げたことを正当化したリアム様に、わたくしは黙っていられなかったのだ。
「近々、男性限定ですが学院の行事として剣術の大会がありますわ。少しでも見返すために努力して挑むのも良し、逆に参加しないのも良し。ですが、わたくしにここまで言われて何も出来ないようなら今後どんなに足掻いても、リアム様は一生そのままですわ」
煽るだけ煽って、わたくしは剣を返してもらい、その場を去った。
後はリアム様がどうするかに委ねますわ。
わたくしはわたくしで、やるべき事がありますもの。
剣を2つ持って。
「お待ちしておりました、リアム様」
「すまない、こんなに早く来ているとは思っていなかった」
当然である、わたくしはリアム様が女性を待たせるはずがないと判断したからこそ、常識外れの早い時間に来たのだから。
「いえ、わたくしが待つために早く来たのです、お気になさらず」
「そこまでして、どうして早く来たのか教えて貰っても?」
「申し上げたいことが沢山あるからですわ」
そう告げて、わたくしは切り出した。
「まず、エルド王国では剣術が盛んと聞いておりますわ、ジョシュア様もかなりの使い手だとか」
「ああ、その通りだ。兄上はその中でも上位に入るだろう。年齢を考えれば異例なことだ」
そんな兄であるジョシュア様と比べられれば、相応に劣等感も抱くだろう。
「当然、リアム様もそれなりの使い手であるはず、なぜその腕を磨かないのですか?」
「言ったろ、何をしても兄上には勝てないと悟ったからだ」
何をしても、ですか。
「申し訳ございませんが、この剣を振ってもらえますか、もちろん本気で」
「構わないが、本当にいいのか?」
「近衛騎士達の修練をよく観覧しておりますもの、怖がったりはしませんので、ご存分に」
きっと、わたくしの思う通りならこれだけで分かるはず。
「分かった、いざ」
やっぱり、そういう事でしたのね。
「ありがとうございます。確かに、そんな剣では一生かけても誰にも勝てませんわ」
「そんな事は自分が一番分かってるさ」
「いいえ、分かっておりません」
目を白黒させてる間にある意味でのお説教スタートですわ。
「まず、リアム様の剣は相手を想定しておりません。ただお手本のように剣を振っているだけですわ。そもそも、剣術というのは相手を倒すためのもので、もっと言うなら殺すための技ですわ」
それ故に、剣を振るう際は相手を想定する。
殺すつもりで振るのだ。
そうして、振り続けることで相対した時、本気の一撃を放てる。
「相手も想定していないような軽い剣は、当然怖くないので、簡単にあしらえますわ。リアム様、まず剣を振るう上でもっとも大事なことが出来ていないのに何をやっても勝てなかったなんて、おこがましいですわ」
やるべき事ができていない、見えてもいない。
そんな状態で、ただ闇雲に練習しても時間の無駄である。
「そして、自分に出来ることを正確に把握することですわ。相手を見据えて振るえるようになっても、それはただ最初の1歩を踏んだに過ぎません」
何でもかんでも、努力すればできるようになるわけじゃない。
どうやったって、限界は出てくる。
「人には、得手不得手がどうしてもありますの。これを無視して、とにかく手広くやっても結果は着いてきませんわ。なので、自分ができるものを伸ばしていくしかありませんわ」
中には、なんでも出来る万能の天才もいるでしょうけれど、そんなのは例外のようなものである。
「ただの振り下ろしでも、何度も何度も本気で相手を倒すつもりでやり続ければ必殺の域まで伸ばせるものですわ。リアム様に必要なのはそういった凡人がたどり着ける境地を目指すことですわ」
わたくしが本気で魔法を練習し続けている理由でもある。
魔法は誰でも極められるもの。
得手不得手はもちろんあるけれど、それでも出来ることを必死に伸ばし続ければ応えてくれる技術だ。
天才でもないわたくしが、わたくしのために選んだ力、それが魔法である。
「リアム様、わたくしも才能なんてものに恵まれてはおりませんわ。でも、ずっと欠かさずにやり続けたおかげでここまではできるようになりましたの」
そうして、持ってきていたもう1振りの剣を振った。
魔法剣、魔法を用いて行う剣術。
一つ一つ区切りながら見せるように振るう。
「女であるわたくしでも、相手を見据えて振るえるこの剣をリアム様が出来ないはずありませんわ、わたくしのように魔法を使えなんて言いません。ただ、リアム様ができる剣術を一つだけでも極めたと言えるまでやり続けてくださいませ」
わたくしも極めたなんて到底言えない。
だからこそ、苛立ちを覚えたのだ。
やるべき事をやってから嘆くのではなく、出来ることもしてないのに、何をやっても勝てなかったと言った事に、諦めて逃げたことを正当化したリアム様に、わたくしは黙っていられなかったのだ。
「近々、男性限定ですが学院の行事として剣術の大会がありますわ。少しでも見返すために努力して挑むのも良し、逆に参加しないのも良し。ですが、わたくしにここまで言われて何も出来ないようなら今後どんなに足掻いても、リアム様は一生そのままですわ」
煽るだけ煽って、わたくしは剣を返してもらい、その場を去った。
後はリアム様がどうするかに委ねますわ。
わたくしはわたくしで、やるべき事がありますもの。
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