転生したし死にたくないし

雪蟻

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第2章 学院の中でも準備です

思惑の先は

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「ティアラ様、もうよろしいのですか」
「ええ、どんな思惑にしろ、王位継承権の剥奪と国外追放とのことです、速やかに済まさないといけないわ」
そう、思惑。
唐突な宣言の理由は、弟殺しの罪への罰であった。
まず何もかもがおかしい。
弟が何者かに殺されていたのは事実であったが、仮にわたくしがその犯人と断定されたのだとすれば、普通は極刑である。
追放して王位継承権を剥奪しました、おしまい。
では、軽すぎるのだ。
つまり、意図は別にある。
しかし、見当もつかない。
なにせ、子供が支援もなしに放り出されたところで、できることなどたかが知れている。
わたくしに期待できる動きなどないのだ。
となると、最も有り得るのはわたくしの身の安全を考えてになるが、それならば学院に戻せばいい。
追放する必要が無いのだ。
王位継承権はあってないようなものだったから、剥奪されても痛くもない。
だが、国外追放は困る。
なにせ、頼るところがないのだ。
もし守るためだとすれば、お粗末過ぎる。
どんな思惑があるのか、見極めなくてはならない。
意味もなく、こんなチグハグなことはしないはずである。
とは言え、ここでずっと頭を悩ませていても仕方ない。
すぐにでもここを発たないと行けないのだ。

「アリアまでついてくる必要はないのよ?」
「いえ、私は、ティアラ様がどういった立場になろうと、メイドとしてついて行きます」
国外追放と言っても、本当の意味で野に放つようなことはしない。
必ず、どこかの国などに難民のような形で送られるか、流刑という形でどこの国にも属していない、荒れた土地に送られるかのどちらかとなる。
今回の場合は、後者であり、今はその土地に向かっている道中である。
本来ならば、送り届けられた後、1人でこれからを過ごさねばならないのだが、本人が希望した場合に限り、共に残ることが出来る。
アリアは、その希望者となる。
と言うより、希望者がそこそこの人数でいるのだ。
何より、近衛騎士の2割が希望しているのは国として、止めるべきであったと思う。
ましてや、近衛騎士隊長、並びにその右腕ともされる2人に許可を出すべきではない。
この点からも、思惑があるのは確実だ。

「ティアラ様、お下がりを」
考え事をしていたせいか、反応が遅れてしまった。
いつの間にか目的地の近くに着いていた。
目の前には攻撃態勢の見知らぬ魔獣。
わたくしは言われた通りに後ろに下がり、障壁を張った。
散々串刺しにされてきたからこそ、防げると自信を持っての行動だった。
「何をしていますの!」
わたくしの障壁は確かに攻撃を防いだ。
しかして、私の前に立った2人の騎士は真っ黒に焦げた。
生きているかなんて確認するまでもないほど、それはもう炭と呼ぶべきほど真っ黒に焦げた。
攻撃自体は、大したことは無い。
ただ生身で受けたからこその結論。
意味が分からない。
魔法をわざわざ生身で耐える必要なんて、どこにもなかったのだから。
「聞いていた通りの反応と、ありえない反応があったな」
「だが、やることに変わりはない」
「ああ、消し飛ばそう」
悲観している暇もなく、魔獣達は次の攻撃に移るようであった。
「ヒュドラ、喰らい尽くせ」
わたくしを鍛えてくれた魔獣とは比べ物にならないほど弱い連中に負ける道理もない。
一面に漂うは獣の血の臭い。
反撃を予想もしていない相手ほど容易いものはない。
まともに戦えばこちらが蹂躙されていただろうが、油断しきっているなら造作もない。
「出遅れましたが、何とかなったようですね」
「あら? どうしてこちらに?」
「話は後です、まずは安全な場所へ、貴女達の向かう場所は私達の拠点でもありますから」
そう言って、いつの間に現れていたのか、わたくしと契約を交わした魔獣は笑った。
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