転生したし死にたくないし

雪蟻

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第3章 独立領土 小国ティアラ

何をすべきか

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新たな関係性となった魔獣に、わたくしはある提案をした。
酷く驚かれたのはとても心外だが、いい加減欲しいと思っていたものなのだから仕方ない。
「貴女の名前を教えて下さらない?」
「はい?」

どうやら、彼女達の意思疎通には、人間のように名前を呼ぶことによる区別の仕方が必要ないそうだ。
とは言え、わたくしは人間なので呼び名が欲しいのだ。

「気にしたことがありませんでしたね、では貴女が決めてください、どのような名前でも構いませんので」
「では、フィアと呼ばせてもらいますわ」
本当になんでも良かったのか、特に反対もされなかった。
なので、このまま関係性をはっきりさせようと思う。
「ところで、フィアに聞いておきたいことがあるのですけれど、よろしいかしら?」
「答えられるものでしたら構いませんよ」
いつもの事なので気にしないことにする。
「でしたら、いつ頃わたくしを殺すつもりなのか教えて下さらないかしら? わたくしにも予定というものがあるのですわ」
死ぬにしても、もう少し準備をしておきたい。
まだ、例の国を相手取るには戦力が足りないのだ。
必ず勝たねばならない以上、やれることは全てこなしておきたい。
「なにを、仰って──」
「今更隠すこともありませんでしょう? 今は、わたくしの利用価値がまだあるかの品定めをしているのだと思っておりますが、見限る頃合いを教えて頂かないと準備ができませんわ」
本当なら、仮にもこの小さな領地の領主である以上、その責務を果たしたいが、フィア達にとってそんなこと気にかけるに値しないことなのだ。
それに抵抗したところで、勝てはしないだろう。
期限さえ決めてくれれば、それまでにわたくしがいなくなっても大丈夫なように準備ができる。
「そこまで分かっていてどうして命令権を放棄したんですか!」
何故か、怒られてしまった。
解せない。
「信用しているからと答えられたら良かったんでしょうけれど、単純にすぐには、殺されないと分かっていたからですわ」
最初から殺すことを決めていたのなら、放棄したタイミングで殺せばいい。
しなかったということは、まだ殺す必要がなく、何か考えがあると分かる。
候補として考えられるのは、わたくしの利用価値がまだある、もしくはあるかもしれないと判断されていること。
「分かりました、読み間違えていました。貴女は心底馬鹿なんですね」
「どういう意味ですの!」
いきなり罵倒されて、思わず言い返してしまった。
「都合のいいように騙して、使えなくなれば殺せばいいと思っておりましたが、気が変わりました、貴女は壊れるまで使います」
「わたくし、フィアの主人のはずなのですけれど」
どこで間違えたのか分からないが、どうやら殺される心配はなくなったようである。
「うるさいです、あれこれ考えていた時間を返してください」
「人を殺そうと画策しておいてなんなんですの!」
なんでわたくしが怒られるのか納得がいかない。
「もういいです、本当にちゃんと鍛えてあげます、この領地の領主として力が欲しいのでしょう。騙し倒すより、鍛え上げる方向に変えますので、覚悟しておいて下さい」
「それに関しては助かりますので、感謝致しますわ」
「やりにくい人ですね」
お互い様だと思いますわ。
とは、返さずに聞き流しておく。
何はともあれ、これからの方針が決まったのだ。
後は、がむしゃらにやるだけだ。
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