転生したし死にたくないし

雪蟻

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第3章 独立領土 小国ティアラ

奪還

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魔法を駆使し、高速で移動をし続けどうにかフェレル公国にたどり着いた。
予想通り、既に制圧されていたが……
「周辺に待機してる敵がいないか索敵後、こちらから仕掛けるとしますわ」
こちらの騎士達は、すぐに応じてくれるのだが、当然リアム様の騎士達はそうはいかない。
当然だろう、エルド王国は女性は弱い存在であり、このように指示をする側ではないのだ。
反感を持たれてしまうのは致し方ない。
「リアム様、そちらは好きに動いてくださいませ。エルド王国のやり方は存じておりませんので、連携が上手く行きませんわ」
なので、自由に動いてもらう。
やり方がまるで違うのだ、無理に合わせる方が危険だろう。
「すまない、では先に仕掛けさせてもらう!」
言うが早いか、敵めがけて一気に突撃して行った。
「伏兵の索敵はわたくしがやります。皆様はリアム様たちとは反対側へ、敵を見つけ次第時間を稼いでくださるかしら。倒せそうなら倒して構いませんけれど、1人で立ち向かわないようにお願いしますわね」
こちらはこちらでやるべき事をする。
まずはフェレル公国全域を探査の魔法で索敵。
人数は4人。
東西南北に配置されている。
リアム様達が1人相手取っているので、こちらの騎士達でもう1人。
なのでまずは、残り2人をわたくしが倒すことにする。
次に、フェレル公国の周辺、半径5kmを目安に索敵。
どうやら、連絡係と思われる兵が1人待機しているようだ。
つまり、たった5名でひとつの国が落とされたことになる。
末恐ろしい国だ。
とりあえず、連絡係と思われる兵は無視する。
是非とも報告に戻ってもらいたい。

殺し損ねた姫が、殺しに来たと

索敵を終えた後は直ぐに行動する。
幸いこちらには気づいていないようなので、仕留めてしまう。
「御機嫌よう。そして、さようならですわね」
喋らせる間もなく上半身が吹き飛ぶように槍で貫く。
周りが呆然としている間に、反対側にいる兵のところへ向かう。
とんでもない悲鳴が上がるのはその後だった。
まずは1人だ。

今度も、直ぐに終わらせようと思っていたが、そうは、うまくいかないらしい。
「やけにうるさいと思ったら、なんだ? お前が何かやったのか?」
来るまでに叫ばれ過ぎて、今度は最初から気づかれてしまった。
「お仲間を一人消してあげましたわ。上半分だけですけれど」
血だらけになっているわたくしを見れば冗談ではないと分かってくれたことだろう。
そのまま上半身でも爆破してやろうと思ったのだが。
「不意打ちしかできないようなガキに、俺が殺せるわけないだろう?」
身構えられていると、鎧が防いでしまうらしい。
仕方ないので魔力を込め直す。
「人は、内側から破裂するとどうなるのかしら?」
返事をする間もなく、壁に叩きつけた水風船のような音を立て、破裂する。
返り血でわたくしの見た目がさすがに宜しくないので魔法で元に戻す。
次は、わたくし側の騎士達のもとへ加勢しに行きましょう。
1人ずつ確実に殺す。

到着してみると、思いの外善戦していたようだ。
「ちまちまと鬱陶しい!」
「散開、攻撃をさせるな。まともに受ければ死ぬのはこちらになる」
どうやら的確に時間を稼ぎつつ、攻撃を繰り返していたようだ。
おかげで被害は少ない。
せっかく、奮闘してくれたのだ、さっさと終わらせよう。
「隙だらけですわね。時間稼ぎをされている時は、周囲に警戒しておくべきですわよ」
でないと、簡単に死ぬことになる。
虚空より現れるヒュドラの首など、警戒のしようもないかもしれないが。
身体の大半を一度に食いちぎられ、一瞬で事切れてくれた。
装備による防御能力はかなり高いようだが、この程度なら大したことは無い。
最後は、リアム様たちに加勢しに行こう。
どうせ苦戦しているだろう。

派手な音がしたので、遅かったかと思ったがそうでもないようだ。
「相変わらず硬いな」
「おいおい、颯爽と駆けつけた割に弱すぎやしないか? 少年よ」
戦況確認するに、リアム様がどうにか奮闘しているようだが、味方の騎士が使い物にならないようだ。
リアム様の攻撃は盾を使って防いでいるがその他の攻撃は見向きもしていない。
逆に狙いやすいのだが、近接戦を仕掛けているリアム様ごと殺しかねないので、仕方なくリアム様を引き剥がす。
「すみません、邪魔ですわ」
足元を浮かせて、後ろに滑らせる。
そのまま、今度はわたくしが対峙する。
「少しは、楽しめそうなお嬢ちゃんだな」
上から下まで舐め回すような不快な視線。
少女趣味なのだろう。
「あら、そんなちっぽけなもので満足させてくれるのかしら? 技巧派なんですのね」
軽く、挑発しておく。
判断を鈍らせる常套手段だ。
とは言え、変に駆け引きに時間をかけ過ぎて、リアム様たちに邪魔をされても困るので、一気に仕留める。
「お嬢様らしくない物言いだが、嫌いじゃないね」
より一層、不快度が増したが真面目に相手をしても仕方ない。
「ごめんあそばせ、下品な方には相応の対応しかいたしませんの」
大技を仕掛けるように槍に雷撃を纏わせる。
本命は全く違うものだが。
「それはまた、壊しがいが──」
最後まで言わせない、注意が逸れた段階で、仕掛ける。
長引けばこちらが不利なのだから。
「貫かれる気持ちはどうかしら? あまりの良さに一瞬で果てたのではなくて?」
聞こえてはいないだろうが、つい余計な口撃をしてしまった。
反省である。
仕掛けたのは、この槍の本来の使い方。
串刺し。
正面のわたくしに気を取られ、真下からの攻撃を想定しない。
魔法戦の場合、いかなる瞬間も気を抜けない。
だが、強すぎる装備が仇となる。
どうせ防げるという油断。
敵を観察もしない兵なら、わたくし1人でも相手できる。
囲まれると、面倒だが。
「ティアラ嬢、助かった。だが、少々言葉が」
「リアム様、女というのは戦争に負けたら勝利国のおもちゃですわよ? あのような視線だけではなく、本当にそう扱われるのです。わたくしは姫でしたのよ? それも武力の国のですわ。負けたらどうなるのか知らされておりますもの、あのような言葉の返しぐらいなら、覚えてしまいますわ」
リアム様は、女性に心まで綺麗でいてもらいたいようだが、わたくしが姫として育てられたからと言って、そこは甘やかされていない。
理解出来るかどうかではない、本能に頭に焼き付けるのだ。
いざと言う時、容赦なく相手を殺せるように。
男とは、誰しもが優しいわけではない。
だが女とは、誰しもが弱いわけではない。
戦う術は持っておくべきなのだ。
一矢報いることもできないままだなんて、ユース帝国の姫として生まれておきながら許されるものではない。
とは言え、戦う術まで教えこまれるのは、あくまで王位継承権が高いものだけだが。
わたくしは、転生した際のイカサマのおかげで、自衛のための手段をひたすら磨くことになったからこそ今生きているだけで、本来なら処刑されて終わっている。



かくして、わたくし達はフェレル公国を奪還した。
見逃した兵が後は魔導騎士の国へと報告してくれるだろう。
是非とも今度はもう少し人数を引連れて来ていただきたい。

その前にわたくし達は、1度外に出ることになるだろうが。
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