乙女ゲーに転生!?ある日公爵令嬢になった私の物語

ゆーかり

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本編

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ダン!

連れてこられた先はいつかのグレンの私室……なのかな?ドアを閉めるなりまたまたされました壁ドン。

「グレン、何怒ってるの?」

「アンジェリカ、俺たちの婚約はままごとじゃない、政治なんだ。簡単に破棄だとか公の場で口にする愚かさが分からないのか?」

「あ……」

言われてやっと自分の言動の浅はかさ、愚かさを知った。この件に関しては全面的に私が悪い。

「ごめんなさい……」

素直に頭を下げる。俯いた私の顎を掴んで上向かされた。何だろう、王者の目っていうのかな、逆らえない威圧みたいなのグレンの目からビシバシ感じて私は固まる。

「記憶喪失ということで大目に見ては来たが、お前は良い加減自分が持つ影響力というものの大きさを知れ。俺は第3王子ではあるが王位継承権もある。そしてお前はその俺の婚約者なんだ。些細なことも命取りになる、お前がいるのはそういう世界だ」

何だろう、口調は突き放すように冷たいのに、私を案じてるのが分かる。こいつ実は結構イイ奴なんじゃない?じわっと不覚にも涙腺が緩んでしまった。

「なっ……!」

女の涙で狼狽るなんて、案外可愛いとこあるんだな。私はちょっぴりだけグレンが嫌いじゃなくなった……かもしれない。

「自分の軽率さとバカさ加減に嫌気がさしただけ。迷惑かけてホントごめんなさい。でも余計に今の私はグレンに相応しくな──」

「それを決めるのはお前じゃない」

少し不貞腐れたようにグレンが顔を顰めると、躊躇いがちに私を抱き締めた。

「ちょっ……離してよっ」

「泣き止んだら離してやる」

「な、泣いてないからっ!」

「俺が泣いてると判断したからお前は泣いてるんだ」

「なっ……」

貴様はジャ◯アン様かっ!胸をドンドン叩いてもびくともしない。モヤシだと思ってたけど結構硬いな。
グレンはくくっと楽しそうに笑うと、「少し大人しくしてろ」って言いながら腕に力を込めた。より強く体を押しつけられて、案外筋肉質な体つきが感じられた。
細マッチョっていうのかな、脱いだら凄いんです、みたいな?ま、私の好みじゃないけどね!

私は当て付けのようにグレンのシャツに涙と鼻水を擦り付けてやった。勝手に俺の胸貸してやる、みたいなことしてるのグレンだしさ、後で怒ったって知ーらないっと。

でもグレンてやたらイイ匂いがするんだよね。香水だけじゃなくてこれ体臭なのかな。あれ、体臭が好みってことは私達遺伝的にも相性バッチリってこと?いやいや、こいつドSだし色々好みじゃないし、妃とか柄じゃないし、やっぱ当初の予定通り何とか破棄の方向で頑張ろう!

この時密かにすんすんとグレンの匂いを嗅ぎながら、ちょっとうっとりしてしまったことは絶対に絶対に内緒だ。
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