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本編
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「サクラギアンリ?」
流石のグレンも唖然としてた。でも私は構わず神様に聞いたことで話せそうなことは全部話した。話してるうちにグレンは段々冷静さを取り戻してる感じだった。
「……私はこの世界とは別の処で生まれ育ったけど、魂は本当のアンジェリカだって神様は言ってた」
グレン考える人のポーズで固まってる。こんな話急に信じろって方が酷だよね。
「アンジェリカ……いや、サクラギアンリ?」
「桜木が姓で杏梨が名前だよ」
「そうか、アンリと呼んだ方がいいか?」
「え、あんた私の話信じるの?」
「まだ全部は整理できてないが……色々俺の中で腑に落ちたからな。俺はお前を信じるよ」
まただ。またグレンはあっさり私を受け入れるんだ。命狙われまくりなら普通もっと猜疑心の塊とかにならない?そんな簡単に私受け入れちゃっていいの?言いたいこといっぱいあるんだけど何か言葉にならなかった。ホント調子狂うな。私グレンの胸に飛び込んじゃったよ。
「グレン、ありがとう……」
グレンの手が躊躇いがちに私の背中に回された。そして反対の手でポンポンて優しく頭撫でてくれる。
「アンリ」
ぶわって身体中の毛が逆立つような感覚。ばか!そんな優しく骨の髄まで馴染んだ名前で呼ぶな!もう、もう我慢できなくなるじゃんか──!
「ふっ、ぅう……ああああ!」
号泣する私をグレンは落ち着くまで黙って抱き締めてくれてた。もう認めるよ、グレンの腕の中は今の私にとって一番安心できる場所だってさ。
泣き疲れて涙引っ込んでからも、ぼーっとグレンの胸にもたれかかってた。やっぱりグレンは良い匂いがするな。
グレンはグレンで私の髪が好きみたいで、相変わらずクルクル指に巻き付けて弄んでた。
「グレン」
泣き過ぎか、声枯れてる……
「ふ、酷い声だな」
「あんた王様になりたいの?」
グレンの手が止まる。
「じゃなきゃ私と結婚するメリットないよね。好きでもない女のせいで益々命狙われて……あんたホント良いこと無いじゃん」
「アンリ」
あれ、声のトーンが下がってる。私思わずビクってしちゃったよ。
「俺の意思に関係なく、そういう勢力があるのも事実だ。まあ本音を言えば王位なんてどうでも良い」
「なら──」
「今は全てのメリットデメリット抜きにしても、アンリと結婚するのは悪くないと思ってる」
「へ?」
「お前といると楽しいからな」
どっか頭でもぶつけたんか?って思いつつ、もしグレンと結婚しない道を選ぶとするなら、今一番安心できる場所を私は永遠に失うんだなって気付いた。楽しそうに笑うグレンにズキって傷む胸。
「……アンリとしての私はまだこの結婚に同意してないから」
「お前の同意なんて要るかよ。こんな面白い女逃す訳ない」
あれ?急に顔つきから口調まで変わったな。まさかこっちが素?
「そう言われると全力で逃げたくなるわ」
くって魔王みたいに笑うグレン。な、なんなのこいつ!?ちょっとビビってる自分に腹立つし!
「アンリ、アンジェリカがお前で良かったと俺は思ってる。前のアンジェリカが何で俺を選んだかは知らないが──」
ガッと顎掴んで目覗き込まれた。ひいい目反らしたいけど逃げらんない!
「アンリも俺を選べ」
「や、やだ」
「何がイヤなんだ?」
「あんたタイプじゃないし!」
「見た目の話か?」
「性格も!」
グレンは私に目線を固定したまま何か探ってる風だ。
「口で言うほど嫌われてる様には感じないんだけどな」
ぐっ……確かに最近は前ほどイヤじないし嫌いでもない。でも相変わらずドSだしもやし……いや結構着痩せするみたいで筋肉はあるんだよね。意外と優しいし、何だかんだ私のこと気にかけて心配してくれてる。杏梨としての私もあっさり受け入れてくれた。物好きにも私との結婚にかなり前向き。あれ?グレンでイヤな要素ってドSと王子様ってとこ位じゃない?ガサツで庶民な私に王子妃とかホント無理だし。
「あんたが王子様じゃなかったら一考の余地はあるかも、ね」
「なんだそんなことか。いずれ臣籍降下するつもりだから解決だな」
なんですと!?そんなあっさり身分捨てるって!?グレンは笑いながらビックリして固まってる私の頬っぺたムニって摘んだ。
「何て顔してんだ。俺はとっとと王室から離れたいくらいなんだ。お前のためじゃなくても、な」
きっと物心ついた時から命狙われるような人生だったんだろな。本人の意思なんて関係なくね。しかもその相手は継母……レベッカちゃんがグレンは「簡単に女性に心を許さない」って言ってたけど当然なんだ。女たらしどころか女性不信になるわなぁ……今まで取られたイヤな態度はムカつくけど、背景を知ってしまったら怒るに怒れないや。
流石のグレンも唖然としてた。でも私は構わず神様に聞いたことで話せそうなことは全部話した。話してるうちにグレンは段々冷静さを取り戻してる感じだった。
「……私はこの世界とは別の処で生まれ育ったけど、魂は本当のアンジェリカだって神様は言ってた」
グレン考える人のポーズで固まってる。こんな話急に信じろって方が酷だよね。
「アンジェリカ……いや、サクラギアンリ?」
「桜木が姓で杏梨が名前だよ」
「そうか、アンリと呼んだ方がいいか?」
「え、あんた私の話信じるの?」
「まだ全部は整理できてないが……色々俺の中で腑に落ちたからな。俺はお前を信じるよ」
まただ。またグレンはあっさり私を受け入れるんだ。命狙われまくりなら普通もっと猜疑心の塊とかにならない?そんな簡単に私受け入れちゃっていいの?言いたいこといっぱいあるんだけど何か言葉にならなかった。ホント調子狂うな。私グレンの胸に飛び込んじゃったよ。
「グレン、ありがとう……」
グレンの手が躊躇いがちに私の背中に回された。そして反対の手でポンポンて優しく頭撫でてくれる。
「アンリ」
ぶわって身体中の毛が逆立つような感覚。ばか!そんな優しく骨の髄まで馴染んだ名前で呼ぶな!もう、もう我慢できなくなるじゃんか──!
「ふっ、ぅう……ああああ!」
号泣する私をグレンは落ち着くまで黙って抱き締めてくれてた。もう認めるよ、グレンの腕の中は今の私にとって一番安心できる場所だってさ。
泣き疲れて涙引っ込んでからも、ぼーっとグレンの胸にもたれかかってた。やっぱりグレンは良い匂いがするな。
グレンはグレンで私の髪が好きみたいで、相変わらずクルクル指に巻き付けて弄んでた。
「グレン」
泣き過ぎか、声枯れてる……
「ふ、酷い声だな」
「あんた王様になりたいの?」
グレンの手が止まる。
「じゃなきゃ私と結婚するメリットないよね。好きでもない女のせいで益々命狙われて……あんたホント良いこと無いじゃん」
「アンリ」
あれ、声のトーンが下がってる。私思わずビクってしちゃったよ。
「俺の意思に関係なく、そういう勢力があるのも事実だ。まあ本音を言えば王位なんてどうでも良い」
「なら──」
「今は全てのメリットデメリット抜きにしても、アンリと結婚するのは悪くないと思ってる」
「へ?」
「お前といると楽しいからな」
どっか頭でもぶつけたんか?って思いつつ、もしグレンと結婚しない道を選ぶとするなら、今一番安心できる場所を私は永遠に失うんだなって気付いた。楽しそうに笑うグレンにズキって傷む胸。
「……アンリとしての私はまだこの結婚に同意してないから」
「お前の同意なんて要るかよ。こんな面白い女逃す訳ない」
あれ?急に顔つきから口調まで変わったな。まさかこっちが素?
「そう言われると全力で逃げたくなるわ」
くって魔王みたいに笑うグレン。な、なんなのこいつ!?ちょっとビビってる自分に腹立つし!
「アンリ、アンジェリカがお前で良かったと俺は思ってる。前のアンジェリカが何で俺を選んだかは知らないが──」
ガッと顎掴んで目覗き込まれた。ひいい目反らしたいけど逃げらんない!
「アンリも俺を選べ」
「や、やだ」
「何がイヤなんだ?」
「あんたタイプじゃないし!」
「見た目の話か?」
「性格も!」
グレンは私に目線を固定したまま何か探ってる風だ。
「口で言うほど嫌われてる様には感じないんだけどな」
ぐっ……確かに最近は前ほどイヤじないし嫌いでもない。でも相変わらずドSだしもやし……いや結構着痩せするみたいで筋肉はあるんだよね。意外と優しいし、何だかんだ私のこと気にかけて心配してくれてる。杏梨としての私もあっさり受け入れてくれた。物好きにも私との結婚にかなり前向き。あれ?グレンでイヤな要素ってドSと王子様ってとこ位じゃない?ガサツで庶民な私に王子妃とかホント無理だし。
「あんたが王子様じゃなかったら一考の余地はあるかも、ね」
「なんだそんなことか。いずれ臣籍降下するつもりだから解決だな」
なんですと!?そんなあっさり身分捨てるって!?グレンは笑いながらビックリして固まってる私の頬っぺたムニって摘んだ。
「何て顔してんだ。俺はとっとと王室から離れたいくらいなんだ。お前のためじゃなくても、な」
きっと物心ついた時から命狙われるような人生だったんだろな。本人の意思なんて関係なくね。しかもその相手は継母……レベッカちゃんがグレンは「簡単に女性に心を許さない」って言ってたけど当然なんだ。女たらしどころか女性不信になるわなぁ……今まで取られたイヤな態度はムカつくけど、背景を知ってしまったら怒るに怒れないや。
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