乙女ゲーに転生!?ある日公爵令嬢になった私の物語

ゆーかり

文字の大きさ
33 / 77
本編

31

しおりを挟む

「……私、この世界を旅して見て回りたいな」

ふと思ったことそのまま口にしてみたら、何か妙にストンって胸に落ちてきた。そうか、私今いる現実を目で見て感じて触れたいんだ。元々感覚的な人間だったしな。

「旅、か」

グレンは顎に手当てて何か考え込んでた。私はそれを尻目に温くなった紅茶をごくごく飲み干す。わーわー泣いたし叫んだし喉渇いちゃったよ。そしたらグレンが紅茶注いでくれた。へー意外とマメなんだな。

「お前との旅は面白そうだな。結婚したら連れて行ってやるよ」

「え、結婚が条件なの?」

「当たり前だ」

ならグレンと結婚するのって悪くないんじゃないかな?私のことは知った上で信じて受け入れてくれてるみたいだし。

「……考えとく」

「ふん、本来ならお前の同意なんて必要ないんだけどな」

悪魔みたいに笑うのやめて下さい。何だろな、近づけば近づくほどグレンの仮面がボロボロ剥がれてく。親しくなれば当然なんだけど、得体の知れない私をそんな簡単に受け入れていいの?ってちょっと心配になる。いや、戸惑いの方が大きいかな。「簡単に女性に心を許さない」王子様が何で?ってね。

「お前は考えてることが分かりやすいな」

「え!?あんた心読めるの!?」

「いや、お前は全部顔に出てる」

アズにも同じようなこと言われたな。そして杏梨時代もよく言われてたんだ、考えてること分かりやすいって。

「……気をつける」

紅茶ふぅふぅしながら唇とんがらせたらグレンが吹き出した。いや変顔ちゃうから!

「俺の前では構わない。むしろそのままでいろ。変に気取られても気持ち悪りぃしな」

気持ち悪りぃだと!?失敬な!にしてもなんかグレンってたまに私並みに口悪くない?

「グレンも何か時々王子様っぽくない言葉混じってるけど?」

「ああ、良く城抜けて市井の子どもたちと遊んでたからな。気抜くとお前みたいに口悪くなるんだ」

「気抜かなくても十分悪いと思うけど」

「お前に気取ってもしょうがないだろ」

何か腹立つけどその通りだなあって思ってしまった。今更グレンに気取られても気持ち悪りぃや。それにさ、グレンとの言い合いって気遣わないし、むしろ楽しいって思えるようになってた。
私グレンといるの楽しいんだ。男友達って実はいたことないから分かんないけど、こんな感じなのかな?
そこでふっと思い出す。グレンまだ私の質問に答えてないじゃん!

「グレン、私の質問まだ答えもらってないよ」

「なんだ覚えてたのか」

グレンは顔にかかった金髪を気怠げに掻き上げた。悔しいけど映画のワンシーンみたいに様になってる。

「正直に言うと……アンジェリカは好きではない……むしろ鬱陶しかった。嫌いな相手から毎日熱烈にアプローチされたらどう思う?」

想像してみる。気分がどんよりしてきた。

「しんどい……」

「ああ、毎日しんどかった。むしろ嫌われたくて嫌がらせ紛いのこともしてきたが、どれも効果はなかったな」

やっぱり下僕扱いはわざとだったのか。好きな人にこんな嫌われるって何やらかしたんだよ元アンジェリカさん……

「私元アンジェリカの性格知らないから無責任なこと言えないけど、何でそんな嫌ってたの?」

途端にグレン物凄い渋い顔。強烈に酸っぱい梅干しでも食べたんかってレベルだよ。

「……アンジェリカは陰気で癇癪持ちだったんだ。俺のことが好きで仕方なかったらしく、いつもいつも監視されてて息苦しかったな。俺は現状から逃げることばかり考えてた」

監視とか重っ!グレンの態度もどうかと思うけどさ、もうどっちがどうってレベルじゃないよね。何かこの2人ってやることなすこと負のスパイラルだ。

「うん、2人のことは何となく分かった。イヤなこと思い出させてごめん」

グレン何とも言えないって顔してた。相当積もり積もってたんだな……元アンジェリカも頑張れば頑張るほど報われない感じで、もう君達相性最悪じゃないですか……

「アンリになってからは一緒にいるのが楽しくて仕方なかったから、不思議でしょうがなかったんだ」

「それで別人って思ったんか」

「そうとしか思えなかったな」

元アンジェリカさん、桜木杏梨として幸せになってくれるといいな。全く神様何で取り違えなんて凡ミスやらかすかなぁ……ホント罪深いわ。

「今度神様会ったら文句言っとく」

「ああ、ただ神は人を試すとも言われてる。アンリに接触してくる意図は何だろな」

ん?私何か試されてるの?でもそう考えると取り違え自体実はミスじゃなくて……イヤイヤそこ深く考えるのはやめよう。だって文句だけじゃ済まなくなりそうだしさ!
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

婚約破棄までの七日間

たぬきち25番
恋愛
突然、乙女ゲームの中の悪役令嬢ロゼッタに転生したことに気付いた私。しかも、気付いたのが婚約破棄の七日前!! 七日前って、どうすればいいの?!  ※少しだけ内容を変更いたしました!! ※他サイト様でも掲載始めました!

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さくら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

男装の騎士に心を奪われる予定の婚約者がいる私の憂鬱

恋愛
私は10歳の時にファンタジー小説のライバル令嬢だと気付いた。 婚約者の王太子殿下は男装の騎士に心を奪われ私との婚約を解消する予定だ。 前世も辛い失恋経験のある私は自信が無いから王太子から逃げたい。 だって、二人のラブラブなんて想像するのも辛いもの。 私は今世も勉強を頑張ります。だって知識は裏切らないから。 傷付くのが怖くて臆病なヒロインが、傷付く前にヒーローを避けようと頑張る物語です。 王道ありがちストーリー。ご都合主義満載。 ハッピーエンドは確実です。 ※ヒーローはヒロインを振り向かせようと一生懸命なのですが、悲しいことに避けられてしまいます。

処理中です...