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本編
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「まあ、噂に違わず美しいわね、アンジェリカ」
「恐縮でございます」
令嬢っぽく優雅なカーテシーをする私。操られてる私って悔しいけど完璧な令嬢だ。
そんな私に真っ赤な唇をくっと吊り上げてるのはシアさんのお母様、アニエステ妃だ。
一応「妃」って呼称はあるけど、確か正妃じゃなく愛妾なんだよね。
この国の王族とか貴族って子孫残すため愛妾愛人作り放題。
グレンもいずれそうなるのかな?一夫一婦な倫理観で育った私には中々受け入れられないし、何か腹立つけど……よし!今度これを結婚の条件にしてみるか!
「アンジェリカ、これからはシアの婚約者として支えてくれるのかしら?」
「はい、妃殿下」
「グレンシュフォンティエルを捨ててシアの元へ来てくれるのね?」
「……わた、し……」
「まだ完璧じゃないんだ。いずれ心ごともらい受けるよ、アンジェリカ」
シアさんは妖しく笑うと私の頬っぺたを優しく撫でた。
「さっさとモノにしてしまえばいいものを。お前は本当に間怠っこしいわね」
「大事にしたいのです。本当はこんな手など使いたくなかった」
「お前が王となるのなら何でもいいわ。でもグレンシュフォンティエルだけは確実に殺しなさい。前々からこちらのことを嗅ぎ回っているようだったけれど……もっと早くに殺しておくべきだったわ」
アニエステ妃般若みたいな顔になってるううう!マジ怖い!グレンの存在ってそんなに脅威なんだ。こんなおっかない継母が居て良く今まで生き延びてこれたな……
「そうしたいのは山々なんですが、彼は本当に隙がなくて……下手を打てばこちらが殺られますよ」
「任せろと言ったのはお前よ。たかが人間相手に情けない!」
今たかが人間と仰いました?その思考がナチュラルに漏れるってことは、もしかしなくてもアニエステ妃、間違いなく人外関係者ですよね!?
「アンジェリカが手に入っただけでも収穫でしょう?婚約者変更の手続きを早急に進めます」
うわあああ!やめてくれえええ!マチルダちゃんの人生も狂っちゃうじゃないの!ん?ここは狂った方がいいのかな?
「……め……っや……!」
必死に抵抗してみるけど、金縛り状態の体を無理やり動かそうとするみたいで凄く苦しい。
「アンジェリカ、そんな状態で……君は心も強いんだね。益々欲しくなったよ」
シアさんに頭を撫でられると、抵抗する気持ちがしょぼーんと萎えてしまった。感情すらコントロールされちゃってます私?
「嬉しいですシア様」
うっとりシアさんを見上げる偽アンジェリカ。これ思いっきり「あなたのことが好きですはぁと」って顔ですよね。こんな茶番一方的に見せつけられるなんてムカつく……けど今は我慢!
そんな私の心を知ってか知らずかシアさんは私の頬っぺにキスした。
「可愛いアンジェリカ。大事にするから僕だけを見ていてね」
「はい、シア様。アンジェリカはあなたのものです」
そこでアニエステ妃の高笑いが聞こえた。
「いいわよシア。アンジェリカはあなたの好きになさい。後悔したくなければさっさとモノにすることね。お前には絶対に巫女が必要なのだから」
昔は知らないけど今の巫女って形式的なものじゃないの?私ってそんなに重要な存在なの?ただ見てるしか出来ないって本当もどかしい!
「分かってますよ母上。アンジェリカ、行こうか」
「はい、どこまでもお供いたします」
女子力高いな偽アンジェリカ……って感心してる場合か!
シアさんに差し出された手に、嬉しそうに手を重ねる偽アンジェリカな私。シアさんは私の手を握りながら親指の腹で甲をつつと撫でる。な、なんかヤらしい……
「素直な子は大好きだよ、可愛いアンジェリカ」
ふっとシアさんが浮かべた笑みは思わずうっとりしちゃう位綺麗で艶っぽい。グレンも顔は綺麗だけど、シアさんはもっと中性的で妖艶な感じだ。
「嬉しいですシア様」
「様はダメって言ったろ?」
「申し訳ありません、シアさん」
「赦す。でも今度間違えたらお仕置きだからね」
悪戯っぽく笑うシアさんの瞳の奥にはバッチリ嗜虐的な光が見えた。ああ、この人もドSか……私王族とは相性悪いなぁ……
「シアさんから頂けるものなら何でも嬉しいです」
ああああ!この口閉じろおおお!私はそんな趣味無いんだあああ!
「ああ、本当に可愛いねアンジェリカ。僕としたことが本気になってしまいそうだよ」
「まあ……嬉しいです」
「シア、そういう茶番は他所でやって頂戴。私は忙しいのよ」
アニエステ妃今だけは気が合いますね、完全同意です!
シアさんは欧米人みたいに肩を竦めると、そのまま私をエスコートして部屋を出た。
「恐縮でございます」
令嬢っぽく優雅なカーテシーをする私。操られてる私って悔しいけど完璧な令嬢だ。
そんな私に真っ赤な唇をくっと吊り上げてるのはシアさんのお母様、アニエステ妃だ。
一応「妃」って呼称はあるけど、確か正妃じゃなく愛妾なんだよね。
この国の王族とか貴族って子孫残すため愛妾愛人作り放題。
グレンもいずれそうなるのかな?一夫一婦な倫理観で育った私には中々受け入れられないし、何か腹立つけど……よし!今度これを結婚の条件にしてみるか!
「アンジェリカ、これからはシアの婚約者として支えてくれるのかしら?」
「はい、妃殿下」
「グレンシュフォンティエルを捨ててシアの元へ来てくれるのね?」
「……わた、し……」
「まだ完璧じゃないんだ。いずれ心ごともらい受けるよ、アンジェリカ」
シアさんは妖しく笑うと私の頬っぺたを優しく撫でた。
「さっさとモノにしてしまえばいいものを。お前は本当に間怠っこしいわね」
「大事にしたいのです。本当はこんな手など使いたくなかった」
「お前が王となるのなら何でもいいわ。でもグレンシュフォンティエルだけは確実に殺しなさい。前々からこちらのことを嗅ぎ回っているようだったけれど……もっと早くに殺しておくべきだったわ」
アニエステ妃般若みたいな顔になってるううう!マジ怖い!グレンの存在ってそんなに脅威なんだ。こんなおっかない継母が居て良く今まで生き延びてこれたな……
「そうしたいのは山々なんですが、彼は本当に隙がなくて……下手を打てばこちらが殺られますよ」
「任せろと言ったのはお前よ。たかが人間相手に情けない!」
今たかが人間と仰いました?その思考がナチュラルに漏れるってことは、もしかしなくてもアニエステ妃、間違いなく人外関係者ですよね!?
「アンジェリカが手に入っただけでも収穫でしょう?婚約者変更の手続きを早急に進めます」
うわあああ!やめてくれえええ!マチルダちゃんの人生も狂っちゃうじゃないの!ん?ここは狂った方がいいのかな?
「……め……っや……!」
必死に抵抗してみるけど、金縛り状態の体を無理やり動かそうとするみたいで凄く苦しい。
「アンジェリカ、そんな状態で……君は心も強いんだね。益々欲しくなったよ」
シアさんに頭を撫でられると、抵抗する気持ちがしょぼーんと萎えてしまった。感情すらコントロールされちゃってます私?
「嬉しいですシア様」
うっとりシアさんを見上げる偽アンジェリカ。これ思いっきり「あなたのことが好きですはぁと」って顔ですよね。こんな茶番一方的に見せつけられるなんてムカつく……けど今は我慢!
そんな私の心を知ってか知らずかシアさんは私の頬っぺにキスした。
「可愛いアンジェリカ。大事にするから僕だけを見ていてね」
「はい、シア様。アンジェリカはあなたのものです」
そこでアニエステ妃の高笑いが聞こえた。
「いいわよシア。アンジェリカはあなたの好きになさい。後悔したくなければさっさとモノにすることね。お前には絶対に巫女が必要なのだから」
昔は知らないけど今の巫女って形式的なものじゃないの?私ってそんなに重要な存在なの?ただ見てるしか出来ないって本当もどかしい!
「分かってますよ母上。アンジェリカ、行こうか」
「はい、どこまでもお供いたします」
女子力高いな偽アンジェリカ……って感心してる場合か!
シアさんに差し出された手に、嬉しそうに手を重ねる偽アンジェリカな私。シアさんは私の手を握りながら親指の腹で甲をつつと撫でる。な、なんかヤらしい……
「素直な子は大好きだよ、可愛いアンジェリカ」
ふっとシアさんが浮かべた笑みは思わずうっとりしちゃう位綺麗で艶っぽい。グレンも顔は綺麗だけど、シアさんはもっと中性的で妖艶な感じだ。
「嬉しいですシア様」
「様はダメって言ったろ?」
「申し訳ありません、シアさん」
「赦す。でも今度間違えたらお仕置きだからね」
悪戯っぽく笑うシアさんの瞳の奥にはバッチリ嗜虐的な光が見えた。ああ、この人もドSか……私王族とは相性悪いなぁ……
「シアさんから頂けるものなら何でも嬉しいです」
ああああ!この口閉じろおおお!私はそんな趣味無いんだあああ!
「ああ、本当に可愛いねアンジェリカ。僕としたことが本気になってしまいそうだよ」
「まあ……嬉しいです」
「シア、そういう茶番は他所でやって頂戴。私は忙しいのよ」
アニエステ妃今だけは気が合いますね、完全同意です!
シアさんは欧米人みたいに肩を竦めると、そのまま私をエスコートして部屋を出た。
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