9 / 153
第2話・さらばシベリア鉄道
【積木の部屋】
しおりを挟む
1989年7月2日の朝5時半頃だった。
この時、私はJR荒尾駅の待合室のベンチでゴロ寝していた。
その時であった。
ベンチでゴロ寝している私の元に、巡回中のおまわりさんがやって来た。
おまわりさんは、私の身体をゆすりながら声をかけた。
「もしもし、坊や…坊や…」
「(寝ぼけ声で)はあ?」
寝ぼけ声で答えた私に、おまわりさんはどこから来たのかと訪ねた。
「坊やはどこから来たのかなぁ~」
「どこからって?」
「坊やの家はどこにあるのかなぁ~」
「家?」
「坊やのおかーちゃんとおとーちゃんはいてはるのかなぁ~」
「おかーちゃんとおとーちゃん?」
「この近くに身よりはいるのかなぁ~」
おまわりさんからアレコレとめんどいことを聞かれた私は、ひどくイラついた。
ちょっとおまわりさん…
私にそななこと聞いてどないすんねん…
私は、ショルダーバッグの中から期限切れになった在留証明書を出しておまわりさんに言うた。
「おまわりさん。」
「なんやねんもう~」
「おまわりさん、入管(入国管理局)はどこにありますか?」
「(すっとぼけた声で)はあ?」
「入管はどこにあるねんと聞いとんねん!!」
「(ますますすっとぼけた声で)はあ?」
「せやから、入管はどこにあるねんと聞いとんねん!!」
「ニュウカン?」
「せや!!」
おまわりさんは、ひどくコンワクした声で私に言うた。
「それって、会社帰りのおとーちゃんが駅の売店でかうやつ?」
「それは夕刊ですよ!!」
「(うなりながら言う)ほんなら~あついめん類のあれ…」
「それはにゅうめん!!」
ますますコンワクしているおまわりさんは、私に言うた。
「思い出した~…『おっちゃん、いつものつけて~』」
「それはあつかん!!」
「ああ、ほんなら、お鍋の時に使うなんとかポン…」
「それはミツカン!!」
「ああ~…かゆいかゆい…虫にかまれたねん…あれや~」
「それはキンカン!!」
「ほんなら、和菓子…」
「それはかるかん!!」
「ああ、ほんならあれや~…昔テレビでやってた男女対抗のクイズ番組…」
「それは『霊感ヤマ感第六感』(朝日放送)じゃないの?」
「せやせや~」
「せやせやじゃないでしょーが!!おまわりさん!!まじめに聞いてください!!」
「聞きよるねん~」
「あのね!!在留証明書の資格の有効期限がおとついで切れたねん!!せやから、大急ぎで入管に行かないとどえらいことになるねん!!」
「ザイリュウってなに~」
「せやから、外国人が日本で生活する時にいる証明書ですよ!!有効期限が切れたら不法滞在者になるのですよ!!」
「(しんどい声で)せやけん、坊やはどないしたいねん~」
「どないしたいって、日本の国から出たいねん!!せやから入管へ行きたいねん!!」
「ニュウカンって、会社帰りのおとーちゃんが駅の売店でかう…」
「夕刊!!」
「あついめん類…」
「にゅうめん!!」
「『おっちゃんいつものつけて~』」
「あつかん!!」
「お鍋の時に使うなんとかポン…」
「ミツカン!!」
「かゆいかゆい~」
「キンカン!!」
「和菓子…」
「かるかん!!」
「男女対抗のクイズ番組…」
「『霊感ヤマ感第六感』!!」
おまわりさんと私がああでもないこうでもないとグダグダ言い合いをしている時、端にいた駅員さんが止めに入った。
私は、駅員さんに切迫詰まった声で『入管に電話してください。』とお願いした。
駅員さんは、しんどい声で『あ~分かった分かった。』と言うて、私を鉄道警察へ連れてゆこうとした。
そんな時であった。
トナカイ色のサマーコートを着た晶姐はんがやって来た。
「よーくん、よーくん!!」
「晶姐はん。」
私のもとへやって来た晶姐はんは、私をギュッと抱きしめた。
「よーくん…無事でよかった…晶が来たからもう大丈夫よ…」
晶姐はんは、おまわりさんと駅員さんに『この子は私の知人の息子さんです…』と言うて、身元引受人を申し出た。
その後、晶姐はんは私の手を引いて旅に出た。
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
晶姐はんと私は、荒尾駅から特急有明に乗って博多駅へ向かった。
博多駅から新幹線こだまに乗り換えて新下ノ関駅へ向かった。
新下ノ関駅から山陽本線の電車に乗り換えて下ノ関駅へ向かった。
昼2時半頃に、晶姐はんと私は下ノ関駅に到着した。
そして、夜7時45分ごろ…
(ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ…)
晶姐はんと私は、下ノ関港国際ターミナルから出航した関釜フェリーに乗って旅に出た。
ゆめいろ市の高校をやめる手続きは、晶姐はんの知人の弁護士さんを通して行われた。
晶姐はんは、私にもうなんの心配もいらないよとやさしく言うた。
私は、もう一度ここから人生をやり直すのだと言い聞かせながら港夜景をながめていた。
この時、私はJR荒尾駅の待合室のベンチでゴロ寝していた。
その時であった。
ベンチでゴロ寝している私の元に、巡回中のおまわりさんがやって来た。
おまわりさんは、私の身体をゆすりながら声をかけた。
「もしもし、坊や…坊や…」
「(寝ぼけ声で)はあ?」
寝ぼけ声で答えた私に、おまわりさんはどこから来たのかと訪ねた。
「坊やはどこから来たのかなぁ~」
「どこからって?」
「坊やの家はどこにあるのかなぁ~」
「家?」
「坊やのおかーちゃんとおとーちゃんはいてはるのかなぁ~」
「おかーちゃんとおとーちゃん?」
「この近くに身よりはいるのかなぁ~」
おまわりさんからアレコレとめんどいことを聞かれた私は、ひどくイラついた。
ちょっとおまわりさん…
私にそななこと聞いてどないすんねん…
私は、ショルダーバッグの中から期限切れになった在留証明書を出しておまわりさんに言うた。
「おまわりさん。」
「なんやねんもう~」
「おまわりさん、入管(入国管理局)はどこにありますか?」
「(すっとぼけた声で)はあ?」
「入管はどこにあるねんと聞いとんねん!!」
「(ますますすっとぼけた声で)はあ?」
「せやから、入管はどこにあるねんと聞いとんねん!!」
「ニュウカン?」
「せや!!」
おまわりさんは、ひどくコンワクした声で私に言うた。
「それって、会社帰りのおとーちゃんが駅の売店でかうやつ?」
「それは夕刊ですよ!!」
「(うなりながら言う)ほんなら~あついめん類のあれ…」
「それはにゅうめん!!」
ますますコンワクしているおまわりさんは、私に言うた。
「思い出した~…『おっちゃん、いつものつけて~』」
「それはあつかん!!」
「ああ、ほんなら、お鍋の時に使うなんとかポン…」
「それはミツカン!!」
「ああ~…かゆいかゆい…虫にかまれたねん…あれや~」
「それはキンカン!!」
「ほんなら、和菓子…」
「それはかるかん!!」
「ああ、ほんならあれや~…昔テレビでやってた男女対抗のクイズ番組…」
「それは『霊感ヤマ感第六感』(朝日放送)じゃないの?」
「せやせや~」
「せやせやじゃないでしょーが!!おまわりさん!!まじめに聞いてください!!」
「聞きよるねん~」
「あのね!!在留証明書の資格の有効期限がおとついで切れたねん!!せやから、大急ぎで入管に行かないとどえらいことになるねん!!」
「ザイリュウってなに~」
「せやから、外国人が日本で生活する時にいる証明書ですよ!!有効期限が切れたら不法滞在者になるのですよ!!」
「(しんどい声で)せやけん、坊やはどないしたいねん~」
「どないしたいって、日本の国から出たいねん!!せやから入管へ行きたいねん!!」
「ニュウカンって、会社帰りのおとーちゃんが駅の売店でかう…」
「夕刊!!」
「あついめん類…」
「にゅうめん!!」
「『おっちゃんいつものつけて~』」
「あつかん!!」
「お鍋の時に使うなんとかポン…」
「ミツカン!!」
「かゆいかゆい~」
「キンカン!!」
「和菓子…」
「かるかん!!」
「男女対抗のクイズ番組…」
「『霊感ヤマ感第六感』!!」
おまわりさんと私がああでもないこうでもないとグダグダ言い合いをしている時、端にいた駅員さんが止めに入った。
私は、駅員さんに切迫詰まった声で『入管に電話してください。』とお願いした。
駅員さんは、しんどい声で『あ~分かった分かった。』と言うて、私を鉄道警察へ連れてゆこうとした。
そんな時であった。
トナカイ色のサマーコートを着た晶姐はんがやって来た。
「よーくん、よーくん!!」
「晶姐はん。」
私のもとへやって来た晶姐はんは、私をギュッと抱きしめた。
「よーくん…無事でよかった…晶が来たからもう大丈夫よ…」
晶姐はんは、おまわりさんと駅員さんに『この子は私の知人の息子さんです…』と言うて、身元引受人を申し出た。
その後、晶姐はんは私の手を引いて旅に出た。
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
晶姐はんと私は、荒尾駅から特急有明に乗って博多駅へ向かった。
博多駅から新幹線こだまに乗り換えて新下ノ関駅へ向かった。
新下ノ関駅から山陽本線の電車に乗り換えて下ノ関駅へ向かった。
昼2時半頃に、晶姐はんと私は下ノ関駅に到着した。
そして、夜7時45分ごろ…
(ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ、ボーッ…)
晶姐はんと私は、下ノ関港国際ターミナルから出航した関釜フェリーに乗って旅に出た。
ゆめいろ市の高校をやめる手続きは、晶姐はんの知人の弁護士さんを通して行われた。
晶姐はんは、私にもうなんの心配もいらないよとやさしく言うた。
私は、もう一度ここから人生をやり直すのだと言い聞かせながら港夜景をながめていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる