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二章
冷害による不毛の大地
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ジャストスキル信者のワタナベは、けんさんとたてさんのジャストスキルを使いこなす姿を見て興奮しっぱなしであった。
「ワタナベ、けんさんとたてさんってそんなに凄いの? あんなに可愛いのに。確かに掛け声は気合い入ってるけどさ。」
「ああ。凄いってもんじゃないな。あのスキルが発動すると力の差や身体的不利が無くなると言っても良い。普通はあんな連発で高等技術を繰り出せないよ。」
「へぇー。俺にも使えるかな?」
「んー、どうだろ? 例えるならTASさんレベル。」
「リアルTASさんとか完全に無理じゃん。俺がリアルTASさんならもうクリアしてるかな?」
「どうだろうな。その前に異世界ってクリアという概念あんのかな?」
「えっ? ないの??」
けんさんとたてさんの攻防を観戦しながら下らない会話をしていると訓練場の入り口から騒がしい声が聞こえる。
「どうか、お待ち下さいませ! 勇者タクヤ様! それに皆様も!」
ん? カティアさん? 何かトラブルかな?
「ええい、たかがギルドの受付嬢が、我が国が誇る勇者殿に口を聞くな!」
遠目に見ても豪華な服装の男はあろう事かカティアさんを突き飛ばし、倒れた彼女に向かい暴言を続けている。
「ちょっとちょっと、カシムちゃんさー。オバサン相手に容赦なくなーい? ねー?」
と女に囲まれた黒髪のいかにもチャラい男が声を上げる。すると、取り巻きの女達がうるさく騒ぎ始める。
「タクヤ様、オバサンにもやさしー!」「タクヤ様、オバサンなんか見ないであたしを見て!」「ずるい! タクヤ様、私の方を見て!」「何よっ!」「タクヤ様は私を見るの!」
「まぁまぁ、それじゃ皆の顔を見させておくれ。」
「「「「「キャー!」」」」」
見るからに腐れハーレム野郎である。取り巻きの声がめっちゃ煩い。
だがそこで偉そうな男の後ろに控えていた男達がさり気なくカティアの周りを囲むとカシムの前にダンディなおじさんが跪く。
「カシム様、相手は冒険者ギルドの人間にございます。これ以上は我が国とギルドの関係にわだかまりが生まれましょう。それよりもあちらに例の情報を持つであろう者達がおります。」
ハーレムタクヤを囲む黄色い声はどんどん大きくなり、カティアを囲みカシムから守る立ち位置を取った男とカシムが静かに睨み合う。
混沌としている状態だが、場の空気だけは重くなってゆく。跪く男の圧力に耐えかねたのかカシムは舌打ちし、訓練場を見渡す。
「フン、奴等が報告にあった情報提供者か? 薄汚いゴミ冒険者ではないか。おい! こっちに来て詳しく話を聞かせろ。」
カシムは右腕を水平にし、こっちに来いと合図を送ってくる。
「ワタナベ、おまえの事呼んでるぞ?」
「は? 俺は薄汚くねぇし。薄汚いのはツキシマじゃね?」
「は? 確かに薄汚いかもしれないけど、俺なりに身支度は整えてるよ!」
「そうか? まぁ好き好んでおっさんと話すのもなぁ。しかも、ダルいよな。」
「だな。偉そうなおっさんとかマジないな。せめて下手に出てくれば会話してやっても良い。」
と二人でカシムの指示を拒否すると、タイミングが良いのか悪いのか、けんさんがたてさんに吹き飛ばされ、けんさんの持つアイスソードがカシムの頭頂部の髪の毛を断ち、毛根を冷気により根絶やしにする。
「あーあ、ツキシマ。俺は知らないぞ?」
「は? けんさんは見えてないから誰のせいでもないだろ? つむじ風とかかまいたちとかと同じ自然現象だろ。ノーカンだ。」
「あー、確かに自然現象ならノーカンだな。」
と俺達が話していると、カティアを取り囲んでいた男達から忍び笑いの声が漏れ、勇者タクヤもカシムの頭を見て爆笑し始める。取り巻きの女達もクスクスと口の前を手で隠し声を殺している。
プルプルと体を震わせるカシムが顔を真っ赤にし叫ぶ。
「貴様ら! この私に向かって、何たる屈辱! その場に直れ、その首、叩き斬ってやる!」
「ツキシマ、顔真っ赤なハゲおっさんがなんか言ってるけど、処理しといてくんね?」
「なんで俺だよ。自然現象でこの先ハゲるのが今ハゲただけだろ? 床屋いらずでラッキーじゃん。な!」
「ツキシマ、おまえさ。流石にラッキーだったな! で納得しないだろ。確かに綺麗に剃るのって大変そうではあるが。」
カシムは受けた事のない不敬っぷりに怒りが限界を超えてしまい、一周回って二人に疑問を持つ。
ここまで態度が大きいとなると何か後ろ盾があるのでは?と。その考えが生まれると少し狼狽えてしまう。
「あー、君達さ、カシムちゃんはこの国でもなかなか権力あるのね。女性を突き飛ばすクズ野郎だけど、流石に不敬すぎるんじゃない?」
勇者と呼ばれていた男もカシムを普通にクズ呼ばわりであった。
すると、「かー!」とかーくんが急に声を上げる。まるでバランスが悪いのでとカシムの頭髪右側面(こめかみ付近)の髪をエアーカッターで切り落とし、結果を見てやっぱりバランス悪いなぁと首を可愛くて傾げるのだった。
「ワタナベ、けんさんとたてさんってそんなに凄いの? あんなに可愛いのに。確かに掛け声は気合い入ってるけどさ。」
「ああ。凄いってもんじゃないな。あのスキルが発動すると力の差や身体的不利が無くなると言っても良い。普通はあんな連発で高等技術を繰り出せないよ。」
「へぇー。俺にも使えるかな?」
「んー、どうだろ? 例えるならTASさんレベル。」
「リアルTASさんとか完全に無理じゃん。俺がリアルTASさんならもうクリアしてるかな?」
「どうだろうな。その前に異世界ってクリアという概念あんのかな?」
「えっ? ないの??」
けんさんとたてさんの攻防を観戦しながら下らない会話をしていると訓練場の入り口から騒がしい声が聞こえる。
「どうか、お待ち下さいませ! 勇者タクヤ様! それに皆様も!」
ん? カティアさん? 何かトラブルかな?
「ええい、たかがギルドの受付嬢が、我が国が誇る勇者殿に口を聞くな!」
遠目に見ても豪華な服装の男はあろう事かカティアさんを突き飛ばし、倒れた彼女に向かい暴言を続けている。
「ちょっとちょっと、カシムちゃんさー。オバサン相手に容赦なくなーい? ねー?」
と女に囲まれた黒髪のいかにもチャラい男が声を上げる。すると、取り巻きの女達がうるさく騒ぎ始める。
「タクヤ様、オバサンにもやさしー!」「タクヤ様、オバサンなんか見ないであたしを見て!」「ずるい! タクヤ様、私の方を見て!」「何よっ!」「タクヤ様は私を見るの!」
「まぁまぁ、それじゃ皆の顔を見させておくれ。」
「「「「「キャー!」」」」」
見るからに腐れハーレム野郎である。取り巻きの声がめっちゃ煩い。
だがそこで偉そうな男の後ろに控えていた男達がさり気なくカティアの周りを囲むとカシムの前にダンディなおじさんが跪く。
「カシム様、相手は冒険者ギルドの人間にございます。これ以上は我が国とギルドの関係にわだかまりが生まれましょう。それよりもあちらに例の情報を持つであろう者達がおります。」
ハーレムタクヤを囲む黄色い声はどんどん大きくなり、カティアを囲みカシムから守る立ち位置を取った男とカシムが静かに睨み合う。
混沌としている状態だが、場の空気だけは重くなってゆく。跪く男の圧力に耐えかねたのかカシムは舌打ちし、訓練場を見渡す。
「フン、奴等が報告にあった情報提供者か? 薄汚いゴミ冒険者ではないか。おい! こっちに来て詳しく話を聞かせろ。」
カシムは右腕を水平にし、こっちに来いと合図を送ってくる。
「ワタナベ、おまえの事呼んでるぞ?」
「は? 俺は薄汚くねぇし。薄汚いのはツキシマじゃね?」
「は? 確かに薄汚いかもしれないけど、俺なりに身支度は整えてるよ!」
「そうか? まぁ好き好んでおっさんと話すのもなぁ。しかも、ダルいよな。」
「だな。偉そうなおっさんとかマジないな。せめて下手に出てくれば会話してやっても良い。」
と二人でカシムの指示を拒否すると、タイミングが良いのか悪いのか、けんさんがたてさんに吹き飛ばされ、けんさんの持つアイスソードがカシムの頭頂部の髪の毛を断ち、毛根を冷気により根絶やしにする。
「あーあ、ツキシマ。俺は知らないぞ?」
「は? けんさんは見えてないから誰のせいでもないだろ? つむじ風とかかまいたちとかと同じ自然現象だろ。ノーカンだ。」
「あー、確かに自然現象ならノーカンだな。」
と俺達が話していると、カティアを取り囲んでいた男達から忍び笑いの声が漏れ、勇者タクヤもカシムの頭を見て爆笑し始める。取り巻きの女達もクスクスと口の前を手で隠し声を殺している。
プルプルと体を震わせるカシムが顔を真っ赤にし叫ぶ。
「貴様ら! この私に向かって、何たる屈辱! その場に直れ、その首、叩き斬ってやる!」
「ツキシマ、顔真っ赤なハゲおっさんがなんか言ってるけど、処理しといてくんね?」
「なんで俺だよ。自然現象でこの先ハゲるのが今ハゲただけだろ? 床屋いらずでラッキーじゃん。な!」
「ツキシマ、おまえさ。流石にラッキーだったな! で納得しないだろ。確かに綺麗に剃るのって大変そうではあるが。」
カシムは受けた事のない不敬っぷりに怒りが限界を超えてしまい、一周回って二人に疑問を持つ。
ここまで態度が大きいとなると何か後ろ盾があるのでは?と。その考えが生まれると少し狼狽えてしまう。
「あー、君達さ、カシムちゃんはこの国でもなかなか権力あるのね。女性を突き飛ばすクズ野郎だけど、流石に不敬すぎるんじゃない?」
勇者と呼ばれていた男もカシムを普通にクズ呼ばわりであった。
すると、「かー!」とかーくんが急に声を上げる。まるでバランスが悪いのでとカシムの頭髪右側面(こめかみ付近)の髪をエアーカッターで切り落とし、結果を見てやっぱりバランス悪いなぁと首を可愛くて傾げるのだった。
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