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第2章 王都動乱編
番外編 アルラインのバレンタイン
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バレンタイン特別企画!
アルファポリスで連載中、『ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します』の作者、都鳥先生とコラボしました!
アルラインたちのバレンタインの一日をどうぞお楽しみください!
◆登場キャラ紹介(『ケモ耳っ娘になったからには~』)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。黒の長い髪に黒い瞳、黒い狼の耳と尾を持つ。小柄で胸も控えめ。15歳で冒険者デビューしてまだ半年足らず。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。
・デニス…リリアンの先輩のAランク冒険者。23歳。栗毛で長身のさっぱりイケメンタイプ。後輩の面倒見が良く皆からの信頼も厚い。最近はリリアンの事が気になっているよう。
・ニール…冒険者見習いとして活動している、貴族の少年。14歳。お坊ちゃんらしく、さらさら金髪に翠玉(エメラルド)の瞳の持ち主だが、性格は貴族らしからぬヤンチャ坊主。初めて出来た友達(リリアンたち)に浮かれ気味。
リリアン視点のお話は下記のページにて公開していますので、ぜひそちらも読んでみてください!
『ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/381869761/958416593
*本編にバレンタインのお話はありませんのでこの企画のみの設定になります。
====================
これは2月14日、そう、バレンタインデーのお話である。
この日、シルティスクはアルラインと出かけることになっていた。
『アルライン君、明日街に出掛けにいかない?』
『いいよ』
シルティスクの計画はこの時点でほぼ成功したと思われていた。待ち合わせ場所で2人の姿を見るまでは。
「アルライン君!ごめんなさい、待たせたかしら?」
「いや、今来たばかりだよ」
恋人との会話のようで、普段のシルティスクならとても喜ぶのだが残念ながら今は喜ぶことができなかった。
「シルティスク様、遅いですよ」
「従姉上《あねうえ》!?」
「なぜリエル様がいらっしゃるのかしら?」
そう、アルラインの隣にはリエルの姿があったからだ。
「ふふっ、アル君をあなたに独り占めなんてさせるものですか」
「私一応王女なのだけれど」
「それとこれとは話が別です」
シルティスクはため息をついた。
(せっかくデートだと思ったのに!)
「ごめんねシルティスク。従姉上がどうしてもって言うものだから......」
「構いませんわ。そろそろ行きましょう」
アルラインが謝ることではないので、シルティスクも諦めた。
「シルティスクは行きたい場所があるの?」
「とりあえず街を散歩してみたいの」
「じゃあ行こうか」
3人は街を見て回ることになった。
「あ、あの雑貨屋さんに入りたいですわ!」
「アル君私も入りたいわ!」
可愛らしい小さなお店を発見。シルティスクとリエルはそわそわし出した。
「もちろんいいよ」
アルラインの優しい笑みに2人は真っ赤になった。
「わぁ!」
「すごいですわね」
中に入ると、シルティスクとリエルは感嘆の声をあげた。女の子が好きそうな小物が可愛らしく置かれ、柔らかな明かりがついている店内はまったりとした雰囲気が漂っていた。
「っと。ごめんなさい!」
目をキラキラさせて小物を見つめていたシルティスクに黒色の尻尾がぶつかった。
(尻尾?)
アルラインはシルティスクに駆け寄ろうとしたが、少女の耳と尻尾を見てはたと立ち止まった。
「可愛い商品に、つい夢中になっちゃって……」
「あなたもそう思います? この店の商品、本当に可愛いですよね」
2人の少女は商品の可愛さについて話していた。
(すぐに仲良くなっちゃうんだなぁ。ほんとシルティスクのコミュ力の高さには驚かされるよね)
アルラインは1人そんなことを思いながらシルティスクにぶつかった少女の方を見ていた。
(獣人だよね?黒い耳に黒い尻尾......いや可愛過ぎないか!?)
この世界に来て初めて見る獣人の姿にアルラインは内心大興奮していた。立ち止まってしまったのはそのあまりの可愛さにくらっときたからだった。
「おーい、リリアン。そろそろ行くぞー」
20歳ぐらいの男性が少女に声をかけた。
「わかったー。そういうことだから私行きますねー」
「ええ!またどこかで会いましょう!」
「またねー!」
獣人の少女は去って行った。アルラインはシルティスクに話しかけに行った。
「仲良さそうに話していたね」
「気さくないい子だったのよ。楽しかったわ!」
満面の笑みを浮かべるシルティスクにアルラインもなんだか嬉しくなった。
「あれ?なんか足元に落ちてない?」
「えっ? 本当だわ。これはハンカチね」
シルティスクが白いシンプルなハンカチを拾い上げた。隅に犬の刺繍が入っている。
「さっきの子のかな?」
「多分、尻尾に当たってしまった時に落としたのだわ」
「届けに行かないとだね」
アルラインが言うと、シルティスクは探るような表情になった。
「ふーん。あの子に一目惚れしちゃったのかしら?」
「えっ!?そんなことないよ?」
アルラインは慌てて否定した。
(確かに可愛いなあとは思ったけど好きとかじゃないよ!?)
2人はしばらく見つめ合っていたがやがてシルティスクが視線を逸らしてため息をついた。
「まあそういうことにしておいてあげるわ」
「そういう事って......。だから違うって言ってるのに」
「わかったから。とにかくこれを早く届けましょ」
話を逸らされただけな気がするが、これ以上追求されなくて済むならとアルラインもその話はやめにした。
「そうだね。名前は確か、リリアンさんだっけ?」
「呼んでいた男性がそう言ってたから多分そうだと思うわ」
「じゃあ従姉上も呼んで探しに行こうか」
リエルを呼び寄せて事情を説明すると、少し不満げではあったが一緒に探してくれることになった。
街を歩きながらさっきの2人を探すがなかなか見つからない。リエルに至っては2人のことを見ていなかったようでお店の商品にばかり気が向いている。
「うーん、見つからないね」
「黒い尻尾が特徴的だったからいたらすぐに気がつくと思うのだけれど」
アルラインとシルティスクの2人が頭を悩ませていると。
「わぁ!これ美味しそうだよアルくん!」
リエルがガラス張りの明るいカフェの前にある看板に吸い寄せられた。その様子にアルラインは思わず苦笑してしまった。
「従姉上、人探しをしているのですよ?」
「ちょっとくらいいいじゃない」
そう言って頬を膨らませるリエルはシルティスクよりも子供に見える。と、その時。
「あれ?あの子じゃないかしら?」
シルティスクの視線の方を見るとあの少女がそのカフェの窓からこちらを見ていて軽く会釈をしてくれた。
「彼女だね!良かった」
「渡しに行きましょうか」
「せっかくだしお昼食べようよ!」
リエルだけ目的がずれているが3人でカフェの中に入った。
「よかった! 探してたんです」
シルティスクがさっきの少女に声をかけると彼女はキョトンとした表情をした。しかし、ハンカチを差し出すと驚いた表情でポケットを確認する。やはり彼女のだったようだ。
「さっきの店に落ちてたんです」
「それでわざわざ? ありがとうございます」
「また会えましたね」
そう言ってシルティスクが微笑むと彼女に、彼女も笑顔を浮かべた。
彼女ーーリリアンさんというらしいーーと20歳くらいの男性ーーデニスさんはとても気さくで一緒にお茶をする事になった。
注文を決め落ち着いた頃、アルラインは1人の男の子が窓の外からリリアンを見ている事に気づき、怪訝な表情をした。
「ねえ、リリアンさん。お知り合い?」
「ああ、私たちの友人です」
リリアンが気づいたことに気づくと男の子が嬉しそうな表情でカフェに入ってきた。
「リリアン、デニスさん。こんな所で珍しいなー 俺も混ぜてよ」
金髪の彼は人懐っこい笑みを浮かべて2人に話しかけた。
リリアンが気にするようにシルティスク達を見たのでシルティスクが気にしないで、という気持ちを込めてにっこりと笑う。
「ありがとうございます。彼は冒険者仲間のニールです」
リリアンがニールを紹介するとアルラインたちも自己紹介をした。
互いの話をしているうちに、ケーキとお茶が運ばれてくる。どれも綺麗に飾り付けられていてこれはリエルが興味を持つわけだ。
「わぁ美味しそう!」
リエルがはしゃぐ。シルティスクも顔を期待に輝かせていた。
アルラインはデニスがリリアンのチョコケーキをじっと見つめている事に気づいた。
(お?これはもしかするのかな?)
さっきニールが来た時もデニスは微妙な表情を浮かべていた。もしかしたらデニスはリリアンのことが好きなのかもしれない。
「どうしたんですか? もしかして、食べたいんですかーー?」
リリアンが揶揄うように訊くと、「え、いや……」と、デニスはどうにも歯切れが悪い。
(デニスさん頑張れ!)
アルラインが心の中で応援していると。
「欲しいなら少しあげますよー」
リリアンはそう言って、一口分を分けてデニスさんの皿に乗せた。途端にちょっと嬉しそうな顔になる。
(やっぱり好きなんだなぁ)
アルラインはちょっとニヤッとしてしまった。
2人のやりとりを見ていたニールが羨ましそうに割って入った。
「あー、いいな。俺も欲しいー 俺のケーキとも交換こしようぜ」
(リリアンさんモテモテだなぁ)
アルラインが眺めているとリエルが反応した。
「アルくん、はい、あ~ん!」
リエルが自分のチョコケーキをアルラインに一口差し出す。
「あ、従姉上、僕はもう子供じゃ......」
「いいからいいから」
「じ、じゃあ......」
アルラインが食べるとリエルはちょっと上目遣いで見た。
「美味しいです!ありがとう!」
「ふ、ふふん、よかった~!あ、アルくんのも一口「だめですわ!アルライン君次は私のもどうぞ!」ちょっ...」
シルティスクが珍しく強引に割って入った。自分のいちごタルトを一口差し出してくる。
「えっ、いや...」
「私のは食べてくださらないのかしら?」
(流石に王族がそんなことやっちゃだめでしょ!)
アルラインは心の中で焦る。が、シルティスクのしょんぼりした顔を見て諦めて食べた。
「どう、かしら......?」
「美味しいよ。ありがとう!」
アルラインの答えにシルティスクは満面の笑みを浮かべた。
「その表情はずるいよ......」
「うん? 何か言ったかしら?」
「いやなんでもない」
アルラインは思わず呟いてしまったが、シルティスクには聞こえなかったようだ。ちょっとほっとする。
「もう!アルくんったらシルティスク様ばかりに構いすぎ!」
「いや従姉上は一緒に住んでるでしょう?」
リエルがいじけるように言うのでアルラインは思わずつっこんでしまった。
「3人とも仲良いのねー」
「アルライン君だけですわ」
「アルくんだけです!」
2人が同時に言うのでアルラインは笑ってしまった。それに釣られてかリリアンたちも笑い、その場は穏やかな笑いに包まれたのだった。
ケーキもお茶もどれも美味しくて、知り合ったばかりの3人との会話もとても楽しくてアルライン達はほっこりした気持ちになっていた。
またいつか会えたらいいねと、3人とは手を振ってカフェの前で別れた。
「楽しかったね」
「ええ!リリアンさんたちもいい方たちでとても楽しかったですわ」
「ケーキも美味しかったね!」
相変わらずのリエルの言葉にアルラインとシルティスクは苦笑した。
「そういえば、アルラインくんリリアンさんのことずっと見てたでしょ」
「えっ? そんなことないけど……」
急なシルティスクの言葉にアルラインは驚いた。急に不機嫌になったシルティスクを見て背中に冷たい汗が伝った。
しかも、アルラインの隣からも冷気が漂ってきた。
「アルくん? どういうことかな?」
「あ、従姉上? ど、どうしました……?」
リエルのただならぬ様子にアルラインは慄く。
(ど、どういう状況だよ……)
アルラインは二人から少し距離を取ろうとするが、それを察してか二人揃ってアルラインの腕を抱きしめて顔を寄せてきた。
「リリアンさんのことが好きなのかしら?」
「リリアンさんに一目惚れしちゃったの?」
アルラインは内心テンパっていた。
(ち、近いよ二人とも! む、胸が当たってるから!)
アルラインは顔を真っ赤にしながら必死に言った。
「違うから! リリアンさんを見ていたのは楽しそうだからであってそれ以外の理由なんてないから!」
「本当かしら?」
「本当だって!」
「アルくん嘘はついちゃだめよー?」
「ついてないから!」
シルティスクとリエルがアルラインの目をじーっと見つめる。
(い、いたたまれない……)
思わず目を伏せそうになった時、そういえば、とアルラインはあることを思い出した。
「二人にプレゼントあるんだけどその様子だと要らないかなぁ?」
アルラインがちょっと意地悪な笑みを浮かべて言うと、リエルとシルティスクはすぐに反応した。
「「プレゼント!?」」
二人ともこういうところの反応はとても似ている。
「うん。でも二人はいらないみたいだし誰か別の人に「「だめ!」」っえ?」
リエルとシルティスクはパッと両手を離した。そして期待するようにアルラインを見る。しょうがないな、とアルラインはアイテムボックスから二つの小包を取り出した。
「まずは従姉上。どうぞ」
「わぁ、可愛い!これってさっきのお店の小包じゃ……」
「そうですよ?」
「開けてみてもいい?」
「もちろんです!」
リエルがそっと包みを開けると、中からシルバーの羽根をかたどったペンダントが現れる。リエルはそれを見て絶句した。
「これは……」
「従姉上に似合うと思ったのですが、あまり好きではありませんでしたか?」
リエルの反応にあるラインが不安になって尋ねるとリエルは首をフルフルと横に振った。そしてアルラインをまっすぐ見つめて満面の笑みを浮かべる。
「アルくんありがとう!とても気に入ったわ!」
「よかった!」
リエルが喜んでくれたことにアルラインはホッとした。そして今度はシルティスクの方に向く。
「これはシルティスクに」
アルラインはシルティスクにも同じ包みを渡した。が、シルティスクは違いに気がついた。
「これは……」
「開けてみて」
アルラインはそれについて言わずに優しく促した。シルティスクが恐る恐る包みを開けると、そこにはシルティスクがお店で買おうか迷ってやめたゴールドの髪飾りがあった。
しかも、それだけではない。シルティスクはその髪飾りからかすかな魔力を感じ取った。
「これって、魔法が付与されているわよね?」
「そうだよ。もし君が危険に晒されたら守ってくれるように魔法を付与しておいたんだ」
アルラインはなんてことないように言うが、物体に魔法を付与する付与魔法は高等技術だ。それを簡単にやってしまう、しかも、自分のために、ということにシルティスクは感動した。
「ありがとう!大切にするわ!」
「喜んでもらえたようでよかったよ」
二人は目を合わせて笑いあった。
「へえ、アルくん、私は危険に晒されてもいいの?」
付与魔法がかけられていなかったリエルが拗ねたように言う。アルラインは苦笑した
「従姉上は僕がちゃんと守りますよ。シルティスクはずっと一緒にはいられないからね」
シルティスクは王女である。まだ王女であることを知られていないから自由が許されているが、それでもやはりアルラインがずっと一緒にいることはできない。
「そういうことなら許してあげる!」
リエルが満足げに言った。反対にシルティスクは少し悲しそうな笑みを浮かべていた。
「大丈夫だよ。君もちゃんと守るから」
「ええ。ありがとう」
(やっぱりシルティスクは笑顔でないとね)
アルラインは笑顔になったシルティスクを見てそう思った。
「そういえば、アルラインくん。私からもプレゼントがあるの」
「えっ?」
アルラインは驚いた表情になった。
「はいこれ! 私の手作りのお菓子なのだけれど……」
シルティスクが自信なさげにピンク色の包みをアルラインに渡す。
「手作り? シルティスクが作ったの!?」
「え、ええ。お口に合うといいのだけれど」
「嬉しい! 家でゆっくり食べるね」
アルラインがお礼を言うとシルティスクはホッとしたように笑った。
「あ! アルくん私も用意してるからね! 家で渡すね!」
「従姉上まで……。ありがとうございます!」
今日はバレンタインデー。もらえると思っていなかったアルラインは二人がわざわざ準備してくれたことが嬉しくて今日一番の笑みを見せた。つられるようにしてシルティスクとリエルも笑顔になった。
「今日は誘ってくれてありがとう。とても楽しかった」
「ううん、こちらこそありがとう」
アルラインとリエルはシルティスクを王城まで送った。別れ際、意を決した様子でシルティスクはアルラインの腕を掴んで自分の方に引き寄せると。
チュッ。
頬にキスをした。
「えっ……?」
「今日のお礼!じゃあまた学園でね!」
シルティスクはそう言うと、呆然とした様子のアルラインを置いて走って王城の中に入ってしまった。
「な、なんだったんだ……?」
アルラインは呆然と呟く。しかしそれ以上にプルプル震えている者がいた。
「もう!私のアルくんになんてことしてくれるのよー!!」
夕暮れ時の王都にリエルの絶叫が響き渡ったのだった。
============================
これにてバレンタイン企画は終了になります!読んでくださりありがとうございました!
本編の続きもお楽しみに!
アルファポリスで連載中、『ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します』の作者、都鳥先生とコラボしました!
アルラインたちのバレンタインの一日をどうぞお楽しみください!
◆登場キャラ紹介(『ケモ耳っ娘になったからには~』)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。黒の長い髪に黒い瞳、黒い狼の耳と尾を持つ。小柄で胸も控えめ。15歳で冒険者デビューしてまだ半年足らず。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。
・デニス…リリアンの先輩のAランク冒険者。23歳。栗毛で長身のさっぱりイケメンタイプ。後輩の面倒見が良く皆からの信頼も厚い。最近はリリアンの事が気になっているよう。
・ニール…冒険者見習いとして活動している、貴族の少年。14歳。お坊ちゃんらしく、さらさら金髪に翠玉(エメラルド)の瞳の持ち主だが、性格は貴族らしからぬヤンチャ坊主。初めて出来た友達(リリアンたち)に浮かれ気味。
リリアン視点のお話は下記のページにて公開していますので、ぜひそちらも読んでみてください!
『ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/381869761/958416593
*本編にバレンタインのお話はありませんのでこの企画のみの設定になります。
====================
これは2月14日、そう、バレンタインデーのお話である。
この日、シルティスクはアルラインと出かけることになっていた。
『アルライン君、明日街に出掛けにいかない?』
『いいよ』
シルティスクの計画はこの時点でほぼ成功したと思われていた。待ち合わせ場所で2人の姿を見るまでは。
「アルライン君!ごめんなさい、待たせたかしら?」
「いや、今来たばかりだよ」
恋人との会話のようで、普段のシルティスクならとても喜ぶのだが残念ながら今は喜ぶことができなかった。
「シルティスク様、遅いですよ」
「従姉上《あねうえ》!?」
「なぜリエル様がいらっしゃるのかしら?」
そう、アルラインの隣にはリエルの姿があったからだ。
「ふふっ、アル君をあなたに独り占めなんてさせるものですか」
「私一応王女なのだけれど」
「それとこれとは話が別です」
シルティスクはため息をついた。
(せっかくデートだと思ったのに!)
「ごめんねシルティスク。従姉上がどうしてもって言うものだから......」
「構いませんわ。そろそろ行きましょう」
アルラインが謝ることではないので、シルティスクも諦めた。
「シルティスクは行きたい場所があるの?」
「とりあえず街を散歩してみたいの」
「じゃあ行こうか」
3人は街を見て回ることになった。
「あ、あの雑貨屋さんに入りたいですわ!」
「アル君私も入りたいわ!」
可愛らしい小さなお店を発見。シルティスクとリエルはそわそわし出した。
「もちろんいいよ」
アルラインの優しい笑みに2人は真っ赤になった。
「わぁ!」
「すごいですわね」
中に入ると、シルティスクとリエルは感嘆の声をあげた。女の子が好きそうな小物が可愛らしく置かれ、柔らかな明かりがついている店内はまったりとした雰囲気が漂っていた。
「っと。ごめんなさい!」
目をキラキラさせて小物を見つめていたシルティスクに黒色の尻尾がぶつかった。
(尻尾?)
アルラインはシルティスクに駆け寄ろうとしたが、少女の耳と尻尾を見てはたと立ち止まった。
「可愛い商品に、つい夢中になっちゃって……」
「あなたもそう思います? この店の商品、本当に可愛いですよね」
2人の少女は商品の可愛さについて話していた。
(すぐに仲良くなっちゃうんだなぁ。ほんとシルティスクのコミュ力の高さには驚かされるよね)
アルラインは1人そんなことを思いながらシルティスクにぶつかった少女の方を見ていた。
(獣人だよね?黒い耳に黒い尻尾......いや可愛過ぎないか!?)
この世界に来て初めて見る獣人の姿にアルラインは内心大興奮していた。立ち止まってしまったのはそのあまりの可愛さにくらっときたからだった。
「おーい、リリアン。そろそろ行くぞー」
20歳ぐらいの男性が少女に声をかけた。
「わかったー。そういうことだから私行きますねー」
「ええ!またどこかで会いましょう!」
「またねー!」
獣人の少女は去って行った。アルラインはシルティスクに話しかけに行った。
「仲良さそうに話していたね」
「気さくないい子だったのよ。楽しかったわ!」
満面の笑みを浮かべるシルティスクにアルラインもなんだか嬉しくなった。
「あれ?なんか足元に落ちてない?」
「えっ? 本当だわ。これはハンカチね」
シルティスクが白いシンプルなハンカチを拾い上げた。隅に犬の刺繍が入っている。
「さっきの子のかな?」
「多分、尻尾に当たってしまった時に落としたのだわ」
「届けに行かないとだね」
アルラインが言うと、シルティスクは探るような表情になった。
「ふーん。あの子に一目惚れしちゃったのかしら?」
「えっ!?そんなことないよ?」
アルラインは慌てて否定した。
(確かに可愛いなあとは思ったけど好きとかじゃないよ!?)
2人はしばらく見つめ合っていたがやがてシルティスクが視線を逸らしてため息をついた。
「まあそういうことにしておいてあげるわ」
「そういう事って......。だから違うって言ってるのに」
「わかったから。とにかくこれを早く届けましょ」
話を逸らされただけな気がするが、これ以上追求されなくて済むならとアルラインもその話はやめにした。
「そうだね。名前は確か、リリアンさんだっけ?」
「呼んでいた男性がそう言ってたから多分そうだと思うわ」
「じゃあ従姉上も呼んで探しに行こうか」
リエルを呼び寄せて事情を説明すると、少し不満げではあったが一緒に探してくれることになった。
街を歩きながらさっきの2人を探すがなかなか見つからない。リエルに至っては2人のことを見ていなかったようでお店の商品にばかり気が向いている。
「うーん、見つからないね」
「黒い尻尾が特徴的だったからいたらすぐに気がつくと思うのだけれど」
アルラインとシルティスクの2人が頭を悩ませていると。
「わぁ!これ美味しそうだよアルくん!」
リエルがガラス張りの明るいカフェの前にある看板に吸い寄せられた。その様子にアルラインは思わず苦笑してしまった。
「従姉上、人探しをしているのですよ?」
「ちょっとくらいいいじゃない」
そう言って頬を膨らませるリエルはシルティスクよりも子供に見える。と、その時。
「あれ?あの子じゃないかしら?」
シルティスクの視線の方を見るとあの少女がそのカフェの窓からこちらを見ていて軽く会釈をしてくれた。
「彼女だね!良かった」
「渡しに行きましょうか」
「せっかくだしお昼食べようよ!」
リエルだけ目的がずれているが3人でカフェの中に入った。
「よかった! 探してたんです」
シルティスクがさっきの少女に声をかけると彼女はキョトンとした表情をした。しかし、ハンカチを差し出すと驚いた表情でポケットを確認する。やはり彼女のだったようだ。
「さっきの店に落ちてたんです」
「それでわざわざ? ありがとうございます」
「また会えましたね」
そう言ってシルティスクが微笑むと彼女に、彼女も笑顔を浮かべた。
彼女ーーリリアンさんというらしいーーと20歳くらいの男性ーーデニスさんはとても気さくで一緒にお茶をする事になった。
注文を決め落ち着いた頃、アルラインは1人の男の子が窓の外からリリアンを見ている事に気づき、怪訝な表情をした。
「ねえ、リリアンさん。お知り合い?」
「ああ、私たちの友人です」
リリアンが気づいたことに気づくと男の子が嬉しそうな表情でカフェに入ってきた。
「リリアン、デニスさん。こんな所で珍しいなー 俺も混ぜてよ」
金髪の彼は人懐っこい笑みを浮かべて2人に話しかけた。
リリアンが気にするようにシルティスク達を見たのでシルティスクが気にしないで、という気持ちを込めてにっこりと笑う。
「ありがとうございます。彼は冒険者仲間のニールです」
リリアンがニールを紹介するとアルラインたちも自己紹介をした。
互いの話をしているうちに、ケーキとお茶が運ばれてくる。どれも綺麗に飾り付けられていてこれはリエルが興味を持つわけだ。
「わぁ美味しそう!」
リエルがはしゃぐ。シルティスクも顔を期待に輝かせていた。
アルラインはデニスがリリアンのチョコケーキをじっと見つめている事に気づいた。
(お?これはもしかするのかな?)
さっきニールが来た時もデニスは微妙な表情を浮かべていた。もしかしたらデニスはリリアンのことが好きなのかもしれない。
「どうしたんですか? もしかして、食べたいんですかーー?」
リリアンが揶揄うように訊くと、「え、いや……」と、デニスはどうにも歯切れが悪い。
(デニスさん頑張れ!)
アルラインが心の中で応援していると。
「欲しいなら少しあげますよー」
リリアンはそう言って、一口分を分けてデニスさんの皿に乗せた。途端にちょっと嬉しそうな顔になる。
(やっぱり好きなんだなぁ)
アルラインはちょっとニヤッとしてしまった。
2人のやりとりを見ていたニールが羨ましそうに割って入った。
「あー、いいな。俺も欲しいー 俺のケーキとも交換こしようぜ」
(リリアンさんモテモテだなぁ)
アルラインが眺めているとリエルが反応した。
「アルくん、はい、あ~ん!」
リエルが自分のチョコケーキをアルラインに一口差し出す。
「あ、従姉上、僕はもう子供じゃ......」
「いいからいいから」
「じ、じゃあ......」
アルラインが食べるとリエルはちょっと上目遣いで見た。
「美味しいです!ありがとう!」
「ふ、ふふん、よかった~!あ、アルくんのも一口「だめですわ!アルライン君次は私のもどうぞ!」ちょっ...」
シルティスクが珍しく強引に割って入った。自分のいちごタルトを一口差し出してくる。
「えっ、いや...」
「私のは食べてくださらないのかしら?」
(流石に王族がそんなことやっちゃだめでしょ!)
アルラインは心の中で焦る。が、シルティスクのしょんぼりした顔を見て諦めて食べた。
「どう、かしら......?」
「美味しいよ。ありがとう!」
アルラインの答えにシルティスクは満面の笑みを浮かべた。
「その表情はずるいよ......」
「うん? 何か言ったかしら?」
「いやなんでもない」
アルラインは思わず呟いてしまったが、シルティスクには聞こえなかったようだ。ちょっとほっとする。
「もう!アルくんったらシルティスク様ばかりに構いすぎ!」
「いや従姉上は一緒に住んでるでしょう?」
リエルがいじけるように言うのでアルラインは思わずつっこんでしまった。
「3人とも仲良いのねー」
「アルライン君だけですわ」
「アルくんだけです!」
2人が同時に言うのでアルラインは笑ってしまった。それに釣られてかリリアンたちも笑い、その場は穏やかな笑いに包まれたのだった。
ケーキもお茶もどれも美味しくて、知り合ったばかりの3人との会話もとても楽しくてアルライン達はほっこりした気持ちになっていた。
またいつか会えたらいいねと、3人とは手を振ってカフェの前で別れた。
「楽しかったね」
「ええ!リリアンさんたちもいい方たちでとても楽しかったですわ」
「ケーキも美味しかったね!」
相変わらずのリエルの言葉にアルラインとシルティスクは苦笑した。
「そういえば、アルラインくんリリアンさんのことずっと見てたでしょ」
「えっ? そんなことないけど……」
急なシルティスクの言葉にアルラインは驚いた。急に不機嫌になったシルティスクを見て背中に冷たい汗が伝った。
しかも、アルラインの隣からも冷気が漂ってきた。
「アルくん? どういうことかな?」
「あ、従姉上? ど、どうしました……?」
リエルのただならぬ様子にアルラインは慄く。
(ど、どういう状況だよ……)
アルラインは二人から少し距離を取ろうとするが、それを察してか二人揃ってアルラインの腕を抱きしめて顔を寄せてきた。
「リリアンさんのことが好きなのかしら?」
「リリアンさんに一目惚れしちゃったの?」
アルラインは内心テンパっていた。
(ち、近いよ二人とも! む、胸が当たってるから!)
アルラインは顔を真っ赤にしながら必死に言った。
「違うから! リリアンさんを見ていたのは楽しそうだからであってそれ以外の理由なんてないから!」
「本当かしら?」
「本当だって!」
「アルくん嘘はついちゃだめよー?」
「ついてないから!」
シルティスクとリエルがアルラインの目をじーっと見つめる。
(い、いたたまれない……)
思わず目を伏せそうになった時、そういえば、とアルラインはあることを思い出した。
「二人にプレゼントあるんだけどその様子だと要らないかなぁ?」
アルラインがちょっと意地悪な笑みを浮かべて言うと、リエルとシルティスクはすぐに反応した。
「「プレゼント!?」」
二人ともこういうところの反応はとても似ている。
「うん。でも二人はいらないみたいだし誰か別の人に「「だめ!」」っえ?」
リエルとシルティスクはパッと両手を離した。そして期待するようにアルラインを見る。しょうがないな、とアルラインはアイテムボックスから二つの小包を取り出した。
「まずは従姉上。どうぞ」
「わぁ、可愛い!これってさっきのお店の小包じゃ……」
「そうですよ?」
「開けてみてもいい?」
「もちろんです!」
リエルがそっと包みを開けると、中からシルバーの羽根をかたどったペンダントが現れる。リエルはそれを見て絶句した。
「これは……」
「従姉上に似合うと思ったのですが、あまり好きではありませんでしたか?」
リエルの反応にあるラインが不安になって尋ねるとリエルは首をフルフルと横に振った。そしてアルラインをまっすぐ見つめて満面の笑みを浮かべる。
「アルくんありがとう!とても気に入ったわ!」
「よかった!」
リエルが喜んでくれたことにアルラインはホッとした。そして今度はシルティスクの方に向く。
「これはシルティスクに」
アルラインはシルティスクにも同じ包みを渡した。が、シルティスクは違いに気がついた。
「これは……」
「開けてみて」
アルラインはそれについて言わずに優しく促した。シルティスクが恐る恐る包みを開けると、そこにはシルティスクがお店で買おうか迷ってやめたゴールドの髪飾りがあった。
しかも、それだけではない。シルティスクはその髪飾りからかすかな魔力を感じ取った。
「これって、魔法が付与されているわよね?」
「そうだよ。もし君が危険に晒されたら守ってくれるように魔法を付与しておいたんだ」
アルラインはなんてことないように言うが、物体に魔法を付与する付与魔法は高等技術だ。それを簡単にやってしまう、しかも、自分のために、ということにシルティスクは感動した。
「ありがとう!大切にするわ!」
「喜んでもらえたようでよかったよ」
二人は目を合わせて笑いあった。
「へえ、アルくん、私は危険に晒されてもいいの?」
付与魔法がかけられていなかったリエルが拗ねたように言う。アルラインは苦笑した
「従姉上は僕がちゃんと守りますよ。シルティスクはずっと一緒にはいられないからね」
シルティスクは王女である。まだ王女であることを知られていないから自由が許されているが、それでもやはりアルラインがずっと一緒にいることはできない。
「そういうことなら許してあげる!」
リエルが満足げに言った。反対にシルティスクは少し悲しそうな笑みを浮かべていた。
「大丈夫だよ。君もちゃんと守るから」
「ええ。ありがとう」
(やっぱりシルティスクは笑顔でないとね)
アルラインは笑顔になったシルティスクを見てそう思った。
「そういえば、アルラインくん。私からもプレゼントがあるの」
「えっ?」
アルラインは驚いた表情になった。
「はいこれ! 私の手作りのお菓子なのだけれど……」
シルティスクが自信なさげにピンク色の包みをアルラインに渡す。
「手作り? シルティスクが作ったの!?」
「え、ええ。お口に合うといいのだけれど」
「嬉しい! 家でゆっくり食べるね」
アルラインがお礼を言うとシルティスクはホッとしたように笑った。
「あ! アルくん私も用意してるからね! 家で渡すね!」
「従姉上まで……。ありがとうございます!」
今日はバレンタインデー。もらえると思っていなかったアルラインは二人がわざわざ準備してくれたことが嬉しくて今日一番の笑みを見せた。つられるようにしてシルティスクとリエルも笑顔になった。
「今日は誘ってくれてありがとう。とても楽しかった」
「ううん、こちらこそありがとう」
アルラインとリエルはシルティスクを王城まで送った。別れ際、意を決した様子でシルティスクはアルラインの腕を掴んで自分の方に引き寄せると。
チュッ。
頬にキスをした。
「えっ……?」
「今日のお礼!じゃあまた学園でね!」
シルティスクはそう言うと、呆然とした様子のアルラインを置いて走って王城の中に入ってしまった。
「な、なんだったんだ……?」
アルラインは呆然と呟く。しかしそれ以上にプルプル震えている者がいた。
「もう!私のアルくんになんてことしてくれるのよー!!」
夕暮れ時の王都にリエルの絶叫が響き渡ったのだった。
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これにてバレンタイン企画は終了になります!読んでくださりありがとうございました!
本編の続きもお楽しみに!
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