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3巻
3-3
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「私宛の手紙には、もし何かあった場合は助力してほしいと書かれていた」
「スタン陛下も無理なことを言いますね」
スフェルダム帝国はようやく反乱が終結して、皇帝が代替わりしたばかり。ディアダール陛下は聡明だがまだ若い。神子である俺が大衆の前で彼を皇帝として認めたのだから誰も文句は言えないはずだが、それでもこの腐りきった帝国を立て直すには時間がかかるだろう。他国の反乱に首を突っ込んでいる暇など……
「いや、これは友好関係を結んだ証明とも言えるだろう。我がスフェルダム帝国はリルベルト王国が危機に陥ったら駆けつけると、陛下に伝えてくれたまえ」
目を見開く。
口約束であろうとも、彼なら確実に守るだろう。皇帝になるにあたって俺が後ろ盾となったことや、今回の革命の過程でシルたちをひどい目にあわせたことに借りがあると感じている彼なら、確実に。
「よろしいのですか?」
「ああ。私は恩を仇で返すようなことはしないからな。まぁ、そなたがいれば王国に危機など起きないだろうとも思っているが」
陛下が笑みを見せる。それは俺を信頼しての笑みだった。
しかし、残念ながらその信頼には応えられそうにない。
「それはどうでしょう。今回に限っては私一人の力ではどうにもならないかもしれません」
「はっ!?」
表情を暗くした俺の言葉を聞き、陛下は素っ頓狂な声を上げる。
「そんなわけが……」
俺の力を知っている陛下からすれば、ありえないことだろう。
だが、アクアが言う通り、外神は俺だけの力ではどうにもできないのだ。
「この世の中には私の力を以てしてもどうしようもないことがあるのですよ」
「……はぁ。頭が痛いな。私も腹をくくるしかないか」
「えぇ、約束はしていただきましたからね」
「迂闊だったか」
眉間に皺を寄せる陛下。外神の存在がある以上、味方は多いに越したことはない。陛下には悪いが、これで心置きなく協力してもらえるな。
「なんだ、その笑みは」
「いえ、なんでもありません」
内心でにんまり笑っていたら、どうやら表情にも出てしまっていたらしい。慌てて笑みを引っ込める。
「はぁ、とりあえず今日の夜出発ということでこちらも準備しておこう。くれぐれも気を付けるんだぞ」
「ええ、ありがとうございます」
俺はさっと頭を下げると執務室を後にしたのだった。
†
夜。皇城の前にて。
アクアが言っていた通り、世界は闇が薄れ灰色になっていた。まだ俺だから知覚できるだけで普通の人にはわからないほどではあるが、それでも確実にマレフィが力を奪われたことを痛感させられてしまう。
その中で俺は、王国のメンバーが続々と集まってくる様を見守っていた。目の前にはすでに準備が整った生徒会のメンバーがいる。
「アルライン、言われた通り準備してきましたが、これはどういうことですか?」
「ええ、私も気になるわ。お父様から何かご連絡が?」
フレグとシルが口々に言う。
急な帰国、しかも、夜となれば何か緊急事態が起こったと考えるのは当たり前だった。
「詳しいことは話せないけど、王国で問題が起こったらしくてね。陛下から手紙が来たんだ。一刻も早く戻らないといけない。シルには陛下が詳しく説明してくれるはずだ」
「問題、ですか……」
「わかったわ。お父様に聞いてみる」
俺の言葉に二人が頷く。
「だからと言ってこんな夜に……」
黙って聞いていたミリアが不安そうな表情を浮かべる。
「アルライン卿、彼女の言う通りです。夜に出発するなんて、魔物に襲ってくれと言っているようなものでは?」
すぐ傍でこちらを見守っていた護衛隊長のガイズも険しい顔で言った。
護衛騎士は二十人。確かに夜道を歩くには人数が全然足りていない。だが、昼間に陛下に言った通り、俺には方法があった。それも、時間と危険を大幅に減らせる方法が。
「緊急事態ですから特別な方法を使います」
「「特別な方法?」」
「ええ。まあ心配はいりません。すぐに説明するので少し待ってください」
すんなりと頷いたガイズ隊長と未だに心配そうなミリア。対照的な二人の反応に苦笑しながら、俺は周りを見回した。
「そろそろかな」
全ての護衛や馬車が揃い、夜でありながら辺りは彼らが持つランタンの明かりで明るくなっていた。
「こほん」
咳払いを一つするとその場が静まり返る。
俺は全員の顔を見てから口を開いた。
「急に集まってもらってすみません。国王陛下からすぐに帰ってくるよう連絡がありました」
俺の言葉に緊張が走る。
「一刻を争う事態です。この留学はここで終わりとし、このまま王国に帰ります」
「「「「「っ……!?」」」」」
皆一様に不安そうな表情を浮かべているけれど、シルとフレグだけは違った。
二人だけは呆れ顔で、これから俺が何をしようとしているか察している様子。良い友人を持ったものである。
「静かに」
一同が再び静かになる。
俺は笑みを浮かべ、そして……
「このまま〈転移〉で王城に行こうと思います」
「「「「「はっ!?」」」」」
みんなが絶句した。俺は言葉を継ぐ。
「ここにいる全員と、荷物と、馬車。全てをそっくりそのままリルベルト王国王城に移すので、皆さんが心配することはありません」
「「「「「……」」」」」
「転移って、あの、伝説の……?」
凍りついた空気の中、真っ先に声を上げたのはミリアだった。
「ああ。そういえば、ミリアには転移のことを話していなかったね」
シルは王都動乱の時に、フレグは先のシルとミリアの誘拐事件の時に転移を見ているから知っているが、どちらの時もミリアは見ていない。知らなくて当たり前だ。
俺の言葉にミリアは息を呑む。
「ほ、本当に、使えるの……?」
「もちろん。緊急事態以外では内緒にしているけどね」
「う、うん」
まだ理解が追いつかない様子のミリアを横目に、その場にいた護衛騎士たちに向かって告げる。
「皆さんも僕の力についてはくれぐれも他言しないようにお願いします。国王陛下からも、基本的に口外禁止と言われていますから」
「「「「「はっ!」」」」」
直立不動になる護衛騎士たち。まだ納得できていない表情の者もいるが、それでも言葉に出さずに返事をするあたり、さすが王国が誇る騎士である。
と、思ったのだが。
「護衛、必要なかったんじゃ……」
俺の言葉にガイズ隊長が落ち込んでいた。あ、あれ、そんな反応を見たかったわけでは……
「転移できるなんて反則では……」
「帝国に来る時に魔物も大量に倒してたよな?」
「強くて、魔法も得意で。神様って理不尽だな……」
隊長の言葉を皮切りに後ろにいる他の護衛騎士たちまで落ち込んだ様子で呟き始める。
なんでそうなる!?
「緊急事態だから転移を使うだけなので、行きや滞在中は護衛騎士の皆さんがいてくださって助かりました」
「本当ですか!?」
「え、ええ。そもそも一度行った場所と場所を繋ぐことしかできないので、一度は自分の足で帝国に来る必要がありましたし」
ま、まあ、精霊に感覚共有してもらえば行ったことがない場所にも行けるが、あれは命の危険があるからできるだけ使いたくないし。
「よかったです……私たちちゃんと役立ってたんですね……」
いらぬ言い訳を内心でしていると、安堵のため息を漏らすガイズ隊長。後ろの護衛騎士たちも縋るような目でこちらを見ていた。
え、何これ?
「アルラインがそんな能力を持っているせいで、護衛騎士の皆さんが自信喪失してますよ」
「これ僕のせい?」
「当たり前でしょう」
俺にだけ聞こえる声でフレグに淡々と言われて思わず落ち込む。俺は最善の行動をとっているだけなのに……
「アルラインくんってほんとに……なんというか、すごいね……」
「ミリアさん、アルくんのことはもう諦めるしかないわ」
「そうですね、シルティスクさん」
シルとミリアの会話が聞こえてくる。やめて、なんかダメージ大きいから!
「なるほど、転移で帰るとは考えたものだな」
「陛下」
後ろにいたディアダール陛下が感心と呆れが混ざったような声を発した。その声に、護衛騎士たちの間にピリッとした空気が走る。
いくら陛下に事情があったとはいえ、彼はシルとミリアを誘拐している。
護衛としては面目をつぶされてしまった形。当たり前だが、陛下に対して良い印象を持っている者の方が少ない。
陛下はそんな騎士たちを気にした様子もなく言葉を継ぐ。
「留学生が転移で帰るなど、前代未聞だぞ……いや、それを言ったらアルライン卿は存在自体が前代未聞だったな」
「意味がわかりません」
陛下はいつも俺のことを人外扱いする。存在自体が前代未聞とかどういう意味だ。
「ははっ、すまない。ただ、私たちのような『普通』の人間にはそなたの行動を理解するのは難しいということだ」
「理解されなくても構いません。ただ、受け入れてくだされば」
「あぁ、とっくの昔に諦めてそうしているさ。そなたがすることが悪いことであるわけがないとも思ってるからな」
「信頼してくれてありがとうございます?」
「疑問形にするな」
陛下が声を上げて笑う。その様子に護衛騎士たちの空気が緩んだ。
俺は両者の様子を見てそっと笑みを浮かべる。
出会ったばかりの頃の陛下は何を考えているのかわからない笑みを顔に張りつけていたが、今はだいぶ雰囲気も柔らかくなり余裕が生まれたように感じる。
屈託のない態度、穏やかでありながら自信に溢れた笑み。皇帝らしい威厳がありつつも、第五皇子として帝国民のために走り回った時に身についたと思しき気安い様子は、国民に好かれる君主そのもの。
だから護衛騎士たちもほんの少し警戒を緩めたのだろう。
彼ならこの帝国をより良くするに違いない。
「これから大変だとは思いますが、陛下ならきっとこの国を良い方向に導けますよ」
「ん? そなたにそう言ってもらえると少しは気が楽だな」
「ヘタレな陛下の姿を見たことがあるのは私だけですもんね」
「それを言わないでくれ……」
今度は俺が声を上げて笑う。
反乱が成功するかどうか不安で弱気になっていた陛下の姿はもうない。ここにあるのは、反乱と父親の死を経て成長した頼もしい君主の姿だった。
「私たちはそろそろ帰ります。約束、忘れないでくださいね」
「もちろんだ」
「あと……」
俺は笑みを消して陛下の目をじっと見つめ、深々と頭を下げる。
「リョウのこと、頼みます」
「顔を上げてくれ。彼に関しては処分が決まり次第連絡する」
「お願いします」
俺の親友であり、陛下の異母弟。彼は悲しい勘違いにより父親であった前皇帝を殺してしまった。いろいろな事情があったにせよ、その罪は消えない。今は勾留されて処分を待つ身だった。
いくら親友であろうと、リルベルト王国の貴族である俺が帝国皇族の問題に口を挟むわけにはいかず、彼をかばうことはできない。俺にできるのは陛下を信じることだけだ。
ぎゅっと唇を噛みしめる俺をよそに、陛下が一歩前に出て使節団を見た。
「そなたたちには本当に世話になった。これからの健闘を祈っている」
帝国皇帝の言葉に全員が一斉に礼をとる。俺はもう色々バレているしいいやと思ってとらなかったが。
「それじゃあ、帰国しましょうか」
「「「「「はい!」」」」」
帝国復興のシンボルでもある煌びやかな皇城を今一度仰ぎ見る。
満天の星をバックに浮かぶ皇城は、不気味な灰色の世界の中でもこの帝国に来た時よりずっと美しく輝いていた。
――また、この城を見ることができますように。
俺は心の中でそう願うと、静かに唱えた。
「〈転移〉」
一瞬にして変わる風景。そして。
「アルライン卿!? ど、どうして帝国にいるはずの君がここにっ……って他にも人がいる!? 馬車まで!?」
「アルライン様らしい……」
気が付けば、目の前にはシルと同じ銀髪を持つ男の子と黒髪の青年がいて、驚きの表情で固まっていた。
……どうやら、義兄上(予定)の目の前に転移してしまったようだ。というか、ダーク? なんで騎士の服なんか着てるんだい?
†
「まさか、転移で帰ってくるとは。お主は何を考えておるのだ」
リルベルト王国王城、国王陛下の執務室にて。
俺は、スタン国王陛下から詰められていた。
その場にいるのは、俺とシル、スタン国王陛下、シルの兄で俺の義兄(予定)でもある第一王子のシルヴェスタ殿下、そしてなぜか殿下と一緒にいたダークだ。
夜も遅いので生徒会の他のメンバーはひとまず帰らせて、護衛騎士たちもそれぞれの職務に戻っていた。
俺は陛下の問いに無表情で答える。
「緊急事態のようでしたので、こうする方が効率的かと思いまして」
「効率的でもやっていいことと悪いことがあるだろう」
はぁ、とため息を吐く陛下。俺は間違ったことはしていないはずなんだが。
俺の様子に目の前に座っていたシルヴェスタ殿下が苦笑する。
「アルライン卿……突然人や馬車が王城の庭に現れたのは多くの人間が見ていた。これでは父上が君の力を隠そうとしても隠せるものではない。君自身が隠す意識を持ってくれないと」
「そのことに関しては申し訳ございません。ただ、これくらい早く帰ってきた方が良いかと思いまして。あとのことは陛下の力を以てすればどうにかなるかなと」
「ぐっ……」
俺の言葉に陛下が言葉を詰まらせる。
国王という立場の者としてここでできないとは言えないはず。少し罪悪感はあるが今回は仕方がなかったと思ってもらうしかない。
俺の思惑を正確に読んだらしく、陛下が再び深々とため息を吐いた。
ため息を吐くと幸せが逃げ――
「そう思うならため息を吐かせるな」
「あ、表情に出てましたか?」
「わざと出しただろうが」
ただ顔に出やすいだけだと思う。
「ずる賢いところまで貴族らしくならなくてもよかったのだが……」
「諦めてください。私に爵位を与えたのは陛下なんですから」
「だからと言ってお主は仕事をしていないだろ……」
心外な。
「この留学でちゃんと成果を挙げてきましたが?」
「……そうだったな。その話をしようか」
陛下は諦めたように話を変えた。
俺は帝国で何があり、どうなったかを簡潔に説明した。
もちろん、リョウのことも、俺が契約していた精霊が姿を消したことも伝えた。今後のことを考えれば今言っておくのが最善だと判断したためだ。
外神のことだけは混乱を招きかねないと思い、隠したけれど。
アクアはみんなで協力すれば倒せるかもしれない、と話していたが、そもそも今の段階ではどこにいるのかもわからない、倒すことが絶望的に難しい相手だ。話してしまえば味方の戦闘意欲を削いでしまいかねない。もう少し状況がわかって準備ができてから話すべきだろう。
そんなことを考えつつ話し終えた時、陛下、シルヴェスタ殿下、そしてダークまでもが唖然とした表情を浮かべていた。
「皇帝を本当に譲位させるとはな……」
「元々そういうお話だったではありませんか、陛下」
「だからといってこんな短期間で成し遂げてくるとは思うまい」
まぁ、確かに。
俺たちが王国を出発してから経った日数といえば二週間程度。そのうちの約半分は王国を出発して帝国に辿り着くまでにかかった時間であることを考えれば、帝国にいたのは一週間足らずだ。
さらにそのうちの三日間、俺は眠っていた。
つまり、およそ三日で前皇帝に譲位させ、ディアダール陛下を即位させたことになる。
普通ならありえないスピードだろう。
だいたいはディアダール陛下が急いだせいなのだが。
「あの帝国の様子を見れば急がなければいけないことくらいわかりますよ。ディアダール陛下も我々が到着したらすぐに反乱に決着をつけようとしましたし」
「なるほどな」
陛下が納得したように頷く。
「まぁ、その新皇帝とは近いうちに話をせねばなるまい……娘を誘拐した件には話をつけなければな」
「お父様? それは先ほどアルくんの話にもあった通り、ディアダール陛下にもやむにやまれぬ事情が……それに友好関係を結ぶという約束で水に流すと言ってしまいましたし……」
酷薄な表情を浮かべる陛下にシルが恐る恐る言う。だが。
「シルティスク、これは私とその小童の問題だ。口出し無用」
「は、はい」
強く言われてシルは黙ってしまった。
こればっかりは親バカな陛下を止めることは無理だろう。ディアダール陛下には諦めてもらうしかない。
「ま、まあまあそれは置いといて。現皇帝がアルライン卿と同じ年齢というのは大丈夫なのでしょうか?」
シルヴェスタ殿下が苦笑いしながら話を変える。
確かにその懸念はあるだろう。俺が伯爵位を持っていることすら年齢的にはおかしいのだ。皇帝が十三歳というのは前代未聞と言わないまでも、他国から舐められる原因になるだろう。
「その点は大丈夫だろう。先帝が死亡して帝位を引き継いだのならともかく、今回の場合は反乱を起こして帝位を奪うことで国を救った英雄だ。それだけで能力は十分、いや、そこら辺の君主より優れていると言える。アルラインを呼び出した手段といい、稀代の天才とすら言えるだろうな」
「なるほど。それなら心配することはなさそうですね」
人のことをめったに褒めない陛下にしては珍しく、ディアダール陛下のことを高く買っているようだ。
留学という名目を使って俺を帝国に送り込ませたディアダール陛下の策略に、一杯食わされたという意識があるからだろうが。
そこで俺はシルヴェスタ殿下に聞きたいことがあったと思い出す。
「スタン陛下も無理なことを言いますね」
スフェルダム帝国はようやく反乱が終結して、皇帝が代替わりしたばかり。ディアダール陛下は聡明だがまだ若い。神子である俺が大衆の前で彼を皇帝として認めたのだから誰も文句は言えないはずだが、それでもこの腐りきった帝国を立て直すには時間がかかるだろう。他国の反乱に首を突っ込んでいる暇など……
「いや、これは友好関係を結んだ証明とも言えるだろう。我がスフェルダム帝国はリルベルト王国が危機に陥ったら駆けつけると、陛下に伝えてくれたまえ」
目を見開く。
口約束であろうとも、彼なら確実に守るだろう。皇帝になるにあたって俺が後ろ盾となったことや、今回の革命の過程でシルたちをひどい目にあわせたことに借りがあると感じている彼なら、確実に。
「よろしいのですか?」
「ああ。私は恩を仇で返すようなことはしないからな。まぁ、そなたがいれば王国に危機など起きないだろうとも思っているが」
陛下が笑みを見せる。それは俺を信頼しての笑みだった。
しかし、残念ながらその信頼には応えられそうにない。
「それはどうでしょう。今回に限っては私一人の力ではどうにもならないかもしれません」
「はっ!?」
表情を暗くした俺の言葉を聞き、陛下は素っ頓狂な声を上げる。
「そんなわけが……」
俺の力を知っている陛下からすれば、ありえないことだろう。
だが、アクアが言う通り、外神は俺だけの力ではどうにもできないのだ。
「この世の中には私の力を以てしてもどうしようもないことがあるのですよ」
「……はぁ。頭が痛いな。私も腹をくくるしかないか」
「えぇ、約束はしていただきましたからね」
「迂闊だったか」
眉間に皺を寄せる陛下。外神の存在がある以上、味方は多いに越したことはない。陛下には悪いが、これで心置きなく協力してもらえるな。
「なんだ、その笑みは」
「いえ、なんでもありません」
内心でにんまり笑っていたら、どうやら表情にも出てしまっていたらしい。慌てて笑みを引っ込める。
「はぁ、とりあえず今日の夜出発ということでこちらも準備しておこう。くれぐれも気を付けるんだぞ」
「ええ、ありがとうございます」
俺はさっと頭を下げると執務室を後にしたのだった。
†
夜。皇城の前にて。
アクアが言っていた通り、世界は闇が薄れ灰色になっていた。まだ俺だから知覚できるだけで普通の人にはわからないほどではあるが、それでも確実にマレフィが力を奪われたことを痛感させられてしまう。
その中で俺は、王国のメンバーが続々と集まってくる様を見守っていた。目の前にはすでに準備が整った生徒会のメンバーがいる。
「アルライン、言われた通り準備してきましたが、これはどういうことですか?」
「ええ、私も気になるわ。お父様から何かご連絡が?」
フレグとシルが口々に言う。
急な帰国、しかも、夜となれば何か緊急事態が起こったと考えるのは当たり前だった。
「詳しいことは話せないけど、王国で問題が起こったらしくてね。陛下から手紙が来たんだ。一刻も早く戻らないといけない。シルには陛下が詳しく説明してくれるはずだ」
「問題、ですか……」
「わかったわ。お父様に聞いてみる」
俺の言葉に二人が頷く。
「だからと言ってこんな夜に……」
黙って聞いていたミリアが不安そうな表情を浮かべる。
「アルライン卿、彼女の言う通りです。夜に出発するなんて、魔物に襲ってくれと言っているようなものでは?」
すぐ傍でこちらを見守っていた護衛隊長のガイズも険しい顔で言った。
護衛騎士は二十人。確かに夜道を歩くには人数が全然足りていない。だが、昼間に陛下に言った通り、俺には方法があった。それも、時間と危険を大幅に減らせる方法が。
「緊急事態ですから特別な方法を使います」
「「特別な方法?」」
「ええ。まあ心配はいりません。すぐに説明するので少し待ってください」
すんなりと頷いたガイズ隊長と未だに心配そうなミリア。対照的な二人の反応に苦笑しながら、俺は周りを見回した。
「そろそろかな」
全ての護衛や馬車が揃い、夜でありながら辺りは彼らが持つランタンの明かりで明るくなっていた。
「こほん」
咳払いを一つするとその場が静まり返る。
俺は全員の顔を見てから口を開いた。
「急に集まってもらってすみません。国王陛下からすぐに帰ってくるよう連絡がありました」
俺の言葉に緊張が走る。
「一刻を争う事態です。この留学はここで終わりとし、このまま王国に帰ります」
「「「「「っ……!?」」」」」
皆一様に不安そうな表情を浮かべているけれど、シルとフレグだけは違った。
二人だけは呆れ顔で、これから俺が何をしようとしているか察している様子。良い友人を持ったものである。
「静かに」
一同が再び静かになる。
俺は笑みを浮かべ、そして……
「このまま〈転移〉で王城に行こうと思います」
「「「「「はっ!?」」」」」
みんなが絶句した。俺は言葉を継ぐ。
「ここにいる全員と、荷物と、馬車。全てをそっくりそのままリルベルト王国王城に移すので、皆さんが心配することはありません」
「「「「「……」」」」」
「転移って、あの、伝説の……?」
凍りついた空気の中、真っ先に声を上げたのはミリアだった。
「ああ。そういえば、ミリアには転移のことを話していなかったね」
シルは王都動乱の時に、フレグは先のシルとミリアの誘拐事件の時に転移を見ているから知っているが、どちらの時もミリアは見ていない。知らなくて当たり前だ。
俺の言葉にミリアは息を呑む。
「ほ、本当に、使えるの……?」
「もちろん。緊急事態以外では内緒にしているけどね」
「う、うん」
まだ理解が追いつかない様子のミリアを横目に、その場にいた護衛騎士たちに向かって告げる。
「皆さんも僕の力についてはくれぐれも他言しないようにお願いします。国王陛下からも、基本的に口外禁止と言われていますから」
「「「「「はっ!」」」」」
直立不動になる護衛騎士たち。まだ納得できていない表情の者もいるが、それでも言葉に出さずに返事をするあたり、さすが王国が誇る騎士である。
と、思ったのだが。
「護衛、必要なかったんじゃ……」
俺の言葉にガイズ隊長が落ち込んでいた。あ、あれ、そんな反応を見たかったわけでは……
「転移できるなんて反則では……」
「帝国に来る時に魔物も大量に倒してたよな?」
「強くて、魔法も得意で。神様って理不尽だな……」
隊長の言葉を皮切りに後ろにいる他の護衛騎士たちまで落ち込んだ様子で呟き始める。
なんでそうなる!?
「緊急事態だから転移を使うだけなので、行きや滞在中は護衛騎士の皆さんがいてくださって助かりました」
「本当ですか!?」
「え、ええ。そもそも一度行った場所と場所を繋ぐことしかできないので、一度は自分の足で帝国に来る必要がありましたし」
ま、まあ、精霊に感覚共有してもらえば行ったことがない場所にも行けるが、あれは命の危険があるからできるだけ使いたくないし。
「よかったです……私たちちゃんと役立ってたんですね……」
いらぬ言い訳を内心でしていると、安堵のため息を漏らすガイズ隊長。後ろの護衛騎士たちも縋るような目でこちらを見ていた。
え、何これ?
「アルラインがそんな能力を持っているせいで、護衛騎士の皆さんが自信喪失してますよ」
「これ僕のせい?」
「当たり前でしょう」
俺にだけ聞こえる声でフレグに淡々と言われて思わず落ち込む。俺は最善の行動をとっているだけなのに……
「アルラインくんってほんとに……なんというか、すごいね……」
「ミリアさん、アルくんのことはもう諦めるしかないわ」
「そうですね、シルティスクさん」
シルとミリアの会話が聞こえてくる。やめて、なんかダメージ大きいから!
「なるほど、転移で帰るとは考えたものだな」
「陛下」
後ろにいたディアダール陛下が感心と呆れが混ざったような声を発した。その声に、護衛騎士たちの間にピリッとした空気が走る。
いくら陛下に事情があったとはいえ、彼はシルとミリアを誘拐している。
護衛としては面目をつぶされてしまった形。当たり前だが、陛下に対して良い印象を持っている者の方が少ない。
陛下はそんな騎士たちを気にした様子もなく言葉を継ぐ。
「留学生が転移で帰るなど、前代未聞だぞ……いや、それを言ったらアルライン卿は存在自体が前代未聞だったな」
「意味がわかりません」
陛下はいつも俺のことを人外扱いする。存在自体が前代未聞とかどういう意味だ。
「ははっ、すまない。ただ、私たちのような『普通』の人間にはそなたの行動を理解するのは難しいということだ」
「理解されなくても構いません。ただ、受け入れてくだされば」
「あぁ、とっくの昔に諦めてそうしているさ。そなたがすることが悪いことであるわけがないとも思ってるからな」
「信頼してくれてありがとうございます?」
「疑問形にするな」
陛下が声を上げて笑う。その様子に護衛騎士たちの空気が緩んだ。
俺は両者の様子を見てそっと笑みを浮かべる。
出会ったばかりの頃の陛下は何を考えているのかわからない笑みを顔に張りつけていたが、今はだいぶ雰囲気も柔らかくなり余裕が生まれたように感じる。
屈託のない態度、穏やかでありながら自信に溢れた笑み。皇帝らしい威厳がありつつも、第五皇子として帝国民のために走り回った時に身についたと思しき気安い様子は、国民に好かれる君主そのもの。
だから護衛騎士たちもほんの少し警戒を緩めたのだろう。
彼ならこの帝国をより良くするに違いない。
「これから大変だとは思いますが、陛下ならきっとこの国を良い方向に導けますよ」
「ん? そなたにそう言ってもらえると少しは気が楽だな」
「ヘタレな陛下の姿を見たことがあるのは私だけですもんね」
「それを言わないでくれ……」
今度は俺が声を上げて笑う。
反乱が成功するかどうか不安で弱気になっていた陛下の姿はもうない。ここにあるのは、反乱と父親の死を経て成長した頼もしい君主の姿だった。
「私たちはそろそろ帰ります。約束、忘れないでくださいね」
「もちろんだ」
「あと……」
俺は笑みを消して陛下の目をじっと見つめ、深々と頭を下げる。
「リョウのこと、頼みます」
「顔を上げてくれ。彼に関しては処分が決まり次第連絡する」
「お願いします」
俺の親友であり、陛下の異母弟。彼は悲しい勘違いにより父親であった前皇帝を殺してしまった。いろいろな事情があったにせよ、その罪は消えない。今は勾留されて処分を待つ身だった。
いくら親友であろうと、リルベルト王国の貴族である俺が帝国皇族の問題に口を挟むわけにはいかず、彼をかばうことはできない。俺にできるのは陛下を信じることだけだ。
ぎゅっと唇を噛みしめる俺をよそに、陛下が一歩前に出て使節団を見た。
「そなたたちには本当に世話になった。これからの健闘を祈っている」
帝国皇帝の言葉に全員が一斉に礼をとる。俺はもう色々バレているしいいやと思ってとらなかったが。
「それじゃあ、帰国しましょうか」
「「「「「はい!」」」」」
帝国復興のシンボルでもある煌びやかな皇城を今一度仰ぎ見る。
満天の星をバックに浮かぶ皇城は、不気味な灰色の世界の中でもこの帝国に来た時よりずっと美しく輝いていた。
――また、この城を見ることができますように。
俺は心の中でそう願うと、静かに唱えた。
「〈転移〉」
一瞬にして変わる風景。そして。
「アルライン卿!? ど、どうして帝国にいるはずの君がここにっ……って他にも人がいる!? 馬車まで!?」
「アルライン様らしい……」
気が付けば、目の前にはシルと同じ銀髪を持つ男の子と黒髪の青年がいて、驚きの表情で固まっていた。
……どうやら、義兄上(予定)の目の前に転移してしまったようだ。というか、ダーク? なんで騎士の服なんか着てるんだい?
†
「まさか、転移で帰ってくるとは。お主は何を考えておるのだ」
リルベルト王国王城、国王陛下の執務室にて。
俺は、スタン国王陛下から詰められていた。
その場にいるのは、俺とシル、スタン国王陛下、シルの兄で俺の義兄(予定)でもある第一王子のシルヴェスタ殿下、そしてなぜか殿下と一緒にいたダークだ。
夜も遅いので生徒会の他のメンバーはひとまず帰らせて、護衛騎士たちもそれぞれの職務に戻っていた。
俺は陛下の問いに無表情で答える。
「緊急事態のようでしたので、こうする方が効率的かと思いまして」
「効率的でもやっていいことと悪いことがあるだろう」
はぁ、とため息を吐く陛下。俺は間違ったことはしていないはずなんだが。
俺の様子に目の前に座っていたシルヴェスタ殿下が苦笑する。
「アルライン卿……突然人や馬車が王城の庭に現れたのは多くの人間が見ていた。これでは父上が君の力を隠そうとしても隠せるものではない。君自身が隠す意識を持ってくれないと」
「そのことに関しては申し訳ございません。ただ、これくらい早く帰ってきた方が良いかと思いまして。あとのことは陛下の力を以てすればどうにかなるかなと」
「ぐっ……」
俺の言葉に陛下が言葉を詰まらせる。
国王という立場の者としてここでできないとは言えないはず。少し罪悪感はあるが今回は仕方がなかったと思ってもらうしかない。
俺の思惑を正確に読んだらしく、陛下が再び深々とため息を吐いた。
ため息を吐くと幸せが逃げ――
「そう思うならため息を吐かせるな」
「あ、表情に出てましたか?」
「わざと出しただろうが」
ただ顔に出やすいだけだと思う。
「ずる賢いところまで貴族らしくならなくてもよかったのだが……」
「諦めてください。私に爵位を与えたのは陛下なんですから」
「だからと言ってお主は仕事をしていないだろ……」
心外な。
「この留学でちゃんと成果を挙げてきましたが?」
「……そうだったな。その話をしようか」
陛下は諦めたように話を変えた。
俺は帝国で何があり、どうなったかを簡潔に説明した。
もちろん、リョウのことも、俺が契約していた精霊が姿を消したことも伝えた。今後のことを考えれば今言っておくのが最善だと判断したためだ。
外神のことだけは混乱を招きかねないと思い、隠したけれど。
アクアはみんなで協力すれば倒せるかもしれない、と話していたが、そもそも今の段階ではどこにいるのかもわからない、倒すことが絶望的に難しい相手だ。話してしまえば味方の戦闘意欲を削いでしまいかねない。もう少し状況がわかって準備ができてから話すべきだろう。
そんなことを考えつつ話し終えた時、陛下、シルヴェスタ殿下、そしてダークまでもが唖然とした表情を浮かべていた。
「皇帝を本当に譲位させるとはな……」
「元々そういうお話だったではありませんか、陛下」
「だからといってこんな短期間で成し遂げてくるとは思うまい」
まぁ、確かに。
俺たちが王国を出発してから経った日数といえば二週間程度。そのうちの約半分は王国を出発して帝国に辿り着くまでにかかった時間であることを考えれば、帝国にいたのは一週間足らずだ。
さらにそのうちの三日間、俺は眠っていた。
つまり、およそ三日で前皇帝に譲位させ、ディアダール陛下を即位させたことになる。
普通ならありえないスピードだろう。
だいたいはディアダール陛下が急いだせいなのだが。
「あの帝国の様子を見れば急がなければいけないことくらいわかりますよ。ディアダール陛下も我々が到着したらすぐに反乱に決着をつけようとしましたし」
「なるほどな」
陛下が納得したように頷く。
「まぁ、その新皇帝とは近いうちに話をせねばなるまい……娘を誘拐した件には話をつけなければな」
「お父様? それは先ほどアルくんの話にもあった通り、ディアダール陛下にもやむにやまれぬ事情が……それに友好関係を結ぶという約束で水に流すと言ってしまいましたし……」
酷薄な表情を浮かべる陛下にシルが恐る恐る言う。だが。
「シルティスク、これは私とその小童の問題だ。口出し無用」
「は、はい」
強く言われてシルは黙ってしまった。
こればっかりは親バカな陛下を止めることは無理だろう。ディアダール陛下には諦めてもらうしかない。
「ま、まあまあそれは置いといて。現皇帝がアルライン卿と同じ年齢というのは大丈夫なのでしょうか?」
シルヴェスタ殿下が苦笑いしながら話を変える。
確かにその懸念はあるだろう。俺が伯爵位を持っていることすら年齢的にはおかしいのだ。皇帝が十三歳というのは前代未聞と言わないまでも、他国から舐められる原因になるだろう。
「その点は大丈夫だろう。先帝が死亡して帝位を引き継いだのならともかく、今回の場合は反乱を起こして帝位を奪うことで国を救った英雄だ。それだけで能力は十分、いや、そこら辺の君主より優れていると言える。アルラインを呼び出した手段といい、稀代の天才とすら言えるだろうな」
「なるほど。それなら心配することはなさそうですね」
人のことをめったに褒めない陛下にしては珍しく、ディアダール陛下のことを高く買っているようだ。
留学という名目を使って俺を帝国に送り込ませたディアダール陛下の策略に、一杯食わされたという意識があるからだろうが。
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