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◆プロローグ
001.躾で記憶が戻るとお思いか!?★
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タイトルの ★=R18。
設定が設定なので無理矢理ぽい表現あり。世界観はわりとゆるい。
初っ端からエロいです。
◇◆
「ひ、んぅ...、や、やめ、やめて......っつ、ひぃ」
情けない、それでいて艶やかな声が自分の口からポロポロと零れていって堪らなく恥ずかしい。そんな様を見ながら、その悪い笑みすら美しく映える美貌を誇る男は彼女を淡々と翻弄していく。
「ねえ、思い出せない?」
「んんっ、しらな、い。アナタのこと、わからな、ぁあっ!や、それ止めてっ!__っ!ひゃああっ!」
「体は"僕"のことをしっかり覚えてるみたいだけど?」
「指、止めてください...!ん、ぁ、ああ」
秘部を蹂躙する指は止まらず、ぴちゃぴちゃと水音を部屋に響かせる。それの合間に自分のはしたない声だとか、この男の息遣いとかそういったのが混じって更に情事は盛んになっていく。
女はイヤイヤと首を横に振りながら逃げようとするが、力の差もあって男を振り切れない。
この宿屋に連れ込まれて1時間は経っただろうか。初対面の美しい男に裸を見せて、そして肌を触られることになろうとは思いもしなかった。
「ノア、私の......、__いや、僕のノーアスティ。他のことは何も思い出さなくたって良い。お願いだから僕のことだけでも思い出してくれ」
「ひぃ、ぁああっ!」
___ノーアスティ。
それが彼女の本当の名前らしい。男からそう呼ばれても何も思い出せそうにない。かろうじて「ノア」という響きは覚えていたのか、記憶喪失後の生活でそう名乗って生活していたため、「ノア」と呼ばれれば反応できるが、「ノーアスティ」が自分だとは思えなかった。
「ノア、ノーア、ノーアスティ......」
「んんっ...!」
どれでも良いから反応して欲しいのか、男はそうノアの愛称らしいそれを一つ一つ呼んでくる。懇願しながらも手の動きもノアのことを抱きしめる腕も緩まない男のことなどやはり全く思い出せない。
(こんなキラキラした人、知り合いだったらいくら記憶喪失だとしても記憶のどこかに覚えていそうなのに...)
キラキラのプラチナブロンドの髪も、どこかの宝石のような赤い瞳も美しい。そして色彩だけじゃなく顔の造りも美形という言葉がピッタリの造りをしていた。いわゆるパーツの一つ一つが綺麗に整っているってやつだ。そしてそれを引き立てるようにある口元のホクロが普通にエロい。
そんな男が何故かノアを見た途端、ノアに縋り付き、そしてこうやって強引に彼女のことを翻弄してくるのだ。
「っ、あ、ぁん、あ、ひぁっ」
「ココが良いんだよね?」
ノアの弱いところは全て知っているかのように的確に指を当て刺激をしてくる。
ノアの中に指を入れて弱いところを押し、秘部の肉芽を押し潰して、甘い言葉で酔わしながらノアにはしたない声を上げさせる。
後ろから抱き込みノアの弱い所を散々に溶かしていくこの男はどうやら知り合いらしいのだが、生憎覚えがないため強姦魔としか思えなかった。
「僕達は恋人で...、何より婚約者同士なんだよ?」
「ん、んんっ!は、はぁあっ」
彼はそう何度もノアに言う。「婚約者だ」だの「あと少しで結婚するはずだった」だの言いながら、ノアを責めたてる。
「~~~っ!」
「勝手に達してしまったの?ダメだろう?そういう時はなんて言うか教えたよね?」
「んむっ!?ふ、ふぁ、やぁあんっ」
ノアを咎めるようにそう言って男はノアの口の中に指を入れて、舌を軽く撫でた。背中がゾクゾクして身を捩る。もう片手が秘部を刺激するのも止まらず、更には耳まで甘噛みされ、ノアはわけも分からずまたその快楽に溺れさせられた。
「......は、はぁ、......はうっ」
ノアは疲れ果ててぐったりする。するといつの間にか景色が反転し、ベッドに押さえ付けられていた。
「やっと、やっと見つけた...」
「はぁ...、はぁ......」
ノアを見下ろして男はうっとりと顔を綻ばせる。息を荒くして男を見上げたノアは、やはり彼のことなど思い出せそうになくて視線をウロウロと彷徨わせた。
「僕はブラッドフォードだよ。お願い、いつもみたいにブラッドって呼んで......。すまなかった。何も気付かなくて...。ごめん、ごめん.....」
「ブラッドフォード、さま...」
「ごめん、怖かったよね。何も覚えていないノアからしたらただの頭の可笑しな男だ。酷いことしてごめん...」
先程までのはなんだったのか、彼はただひたすらそう言って次は謝り始めた。どうも情緒が安定していないらしい。
綺麗な顔を歪めて涙を零す男を見上げる。綺麗な顔を流れ落ちていく雫がノアの顔に雨のように落ちてきた。
あまり感情を見せるタイプではなさそうなのに、とは思ったが、知り合いらしいノアがこの有様なので相当悲しかったのだろうか。
何だか申しわけなさが胸に渦巻いた。一旦この行為を止めて数メートル距離を置いてくれるのならほんの少しだけ話を聞いても良いかもしれない。そんなことを思った。
「でも、大丈夫だよ?」
「へ?」
「体は僕のこと覚えてるんだ。ちゃんと躾てまた思い出させてあげるから。ね?」
(この人、何言ってるの!?こんなエッチな躾で記憶が戻るわけないじゃんか!!)
信じられない、とブラッドフォードを見上げるが、彼は至って真剣な顔をしてノアに口付けを落とした。慌てて逃げようとしたが頭に添えられた手のせいで逃げられず、深い深い口付けにノアは危うく窒息しそうになった。
「っふ、はっ」
「.....うーん、相変わらずキスは下手くそだね」
ブラッドフォードがそう言って笑うものだから、何だか恥ずかしくなったが、やはり何回も言うとおり何も思い出せない。
(新手の詐欺だったらどうしよう.....)
まだ最後までしていないが、このまま流されると確実に食われてしまう。本当に婚約者だったとしても記憶のない状態でされるのは嫌だし、もしこれが顔のいい男が甘言で女を騙して良いように喰らい尽くすタイプの詐欺だったらと思うと恐怖でしかない。
(うん、逃げよう.....)
__こんな顔の良い知り合い、いるとは思えないや。
そう判断したノアは、男が顔を離した瞬間起き上がり、力を込めて男を一瞬で押し倒した。
__"テレポート"
不意をつかれたブラッドフォードが目を見開いて固まっているうちに魔法を使って一瞬で自分の住処へと転移をした。
◇◆
「.......あー。服、忘れちゃった...」
慌てて魔法を使ったがちゃんと発動して、家へと帰ってきたらしい。力が抜けて床にぺたりと崩れ落ちる。
ほっと息をついて自分の体を見れば服を着ていなかった。迷わずこの隠れ家のような我が家を選んで帰ってきて本当に良かったと考えながら、そのままお風呂に入ろうと立ち上がる。
「爺様、ただいま」
数ヶ月前に亡くなった薬草売りの老人を頭に思い浮かべてそう呟いた。記憶もなく、生活する術もよく分かっていなかったノアを拾って、ほんの僅かな間だったが生きる術を教えてくれた彼に心の中で語り掛ける。
「私はノア。__"ただのノア"」
浴室の鏡を見てポツリと呟く。胸のところに散った赤い華を忌々しく思いつつ、水をお湯にするために魔石に魔力を込める。
「.......」
爺様がくれた指輪を外せば、茶色の髪はローズピンクに、青い目はエメラルドグリーンになった。
(さっきのブラッドフォードっていう人は、そういえば髪の色変えたの?って言ってたな。もしかしたら本当に知り合い?)
ブラッドフォードはノアに急に話しかけてきた時、確か「髪も目も色を変えたのか?」と言っていた。急に美形に馴れ馴れしく話しかけられ、得体がしれないと思っていたせいで聞き流してしまっていたからか今更それを思い出した。
ズキッ
「__.....っ!」
__『逃げないと』
___『早く、早く逃げないと...!!』
またあの声が頭に響く。突然襲ってくる頭痛には相変わらず慣れず、ノアは顔を顰めた。
(私は"何か"から逃げないといけない)
もしかしたらその"何か"はさっきの男のことかもしれない。記憶のない自分にはそれすら思い出せないのだから、用心は必要だ。
「さっきの選択は間違ってない、よね?」
ブラッドフォードが泣いていたのは気になったが、演技派の人間はこの世に沢山いる。ノアに記憶がないことは、ノアが住んでいるこの村の人はみんな知っているし、ブラッドフォードと先程あったあの街の人たちも何人かは知っている。
__そこから噂されて、いいカモにされては困るのだ。
「暫くこの森から出ないでおこうかな.....」
ノアの住むこの住処は森の奥にある。同じ村人の家からも距離が少しあり、見た目も隠れ家のような感じだ。内装は意外と住みやすいようにハイテクな物に溢れているが、何も知らない人間が簡単にはたどり着けない場所にある。
同じ村の人ですら、爺様が本当に信用した人しかこの場所を知らない。今はそのことに感謝しつつ、ノアは風呂好きの爺様がこだわりにこだわって作ったという木の浴槽にお湯が溜まるさまを見つめた。
幸い昨日買い溜めしておいたので食料にも困らないし、拾ってくれた老人から引き継いだ薬売りの仕事は今週分は今日終わらせていた。
今日のように隣街に出向くことじたい殆どしないため、もうあの男には会わないはずだ。
「.....いったい...」
ズキズキと痛む頭に手を当ててゆっくりと深呼吸をする。
(どうか、私のことはもう忘れて.....)
例え知り合いであっても、詐欺師であっても関係ない。ノアはもう"ただのノア"で、"薬草売りのノア"だ。ここに来てから約1年の間に新たな生活にも慣れてきた。
___自分はここでひっそり生きて、そして爺様のように穏やかに死んでいくの。
そう言い聞かせて、体が冷えないように纏っていたタオルを取ると、湯船に肩まで浸かって目を閉じた。
◇◆
2作目書き始めました。もう1つの作品を書いてる途中に思い浮かんだので覚えているうちに投稿します。もう一つの作品は、「著者近況や作者名」から「作品」のところをタップしてご参照ください。
TwitterIDは、「 @nemui_aoi 」です。
小説はわりと初心者なのでお手柔らかに。
感想、お気に入りよろしくお願い致します!
設定が設定なので無理矢理ぽい表現あり。世界観はわりとゆるい。
初っ端からエロいです。
◇◆
「ひ、んぅ...、や、やめ、やめて......っつ、ひぃ」
情けない、それでいて艶やかな声が自分の口からポロポロと零れていって堪らなく恥ずかしい。そんな様を見ながら、その悪い笑みすら美しく映える美貌を誇る男は彼女を淡々と翻弄していく。
「ねえ、思い出せない?」
「んんっ、しらな、い。アナタのこと、わからな、ぁあっ!や、それ止めてっ!__っ!ひゃああっ!」
「体は"僕"のことをしっかり覚えてるみたいだけど?」
「指、止めてください...!ん、ぁ、ああ」
秘部を蹂躙する指は止まらず、ぴちゃぴちゃと水音を部屋に響かせる。それの合間に自分のはしたない声だとか、この男の息遣いとかそういったのが混じって更に情事は盛んになっていく。
女はイヤイヤと首を横に振りながら逃げようとするが、力の差もあって男を振り切れない。
この宿屋に連れ込まれて1時間は経っただろうか。初対面の美しい男に裸を見せて、そして肌を触られることになろうとは思いもしなかった。
「ノア、私の......、__いや、僕のノーアスティ。他のことは何も思い出さなくたって良い。お願いだから僕のことだけでも思い出してくれ」
「ひぃ、ぁああっ!」
___ノーアスティ。
それが彼女の本当の名前らしい。男からそう呼ばれても何も思い出せそうにない。かろうじて「ノア」という響きは覚えていたのか、記憶喪失後の生活でそう名乗って生活していたため、「ノア」と呼ばれれば反応できるが、「ノーアスティ」が自分だとは思えなかった。
「ノア、ノーア、ノーアスティ......」
「んんっ...!」
どれでも良いから反応して欲しいのか、男はそうノアの愛称らしいそれを一つ一つ呼んでくる。懇願しながらも手の動きもノアのことを抱きしめる腕も緩まない男のことなどやはり全く思い出せない。
(こんなキラキラした人、知り合いだったらいくら記憶喪失だとしても記憶のどこかに覚えていそうなのに...)
キラキラのプラチナブロンドの髪も、どこかの宝石のような赤い瞳も美しい。そして色彩だけじゃなく顔の造りも美形という言葉がピッタリの造りをしていた。いわゆるパーツの一つ一つが綺麗に整っているってやつだ。そしてそれを引き立てるようにある口元のホクロが普通にエロい。
そんな男が何故かノアを見た途端、ノアに縋り付き、そしてこうやって強引に彼女のことを翻弄してくるのだ。
「っ、あ、ぁん、あ、ひぁっ」
「ココが良いんだよね?」
ノアの弱いところは全て知っているかのように的確に指を当て刺激をしてくる。
ノアの中に指を入れて弱いところを押し、秘部の肉芽を押し潰して、甘い言葉で酔わしながらノアにはしたない声を上げさせる。
後ろから抱き込みノアの弱い所を散々に溶かしていくこの男はどうやら知り合いらしいのだが、生憎覚えがないため強姦魔としか思えなかった。
「僕達は恋人で...、何より婚約者同士なんだよ?」
「ん、んんっ!は、はぁあっ」
彼はそう何度もノアに言う。「婚約者だ」だの「あと少しで結婚するはずだった」だの言いながら、ノアを責めたてる。
「~~~っ!」
「勝手に達してしまったの?ダメだろう?そういう時はなんて言うか教えたよね?」
「んむっ!?ふ、ふぁ、やぁあんっ」
ノアを咎めるようにそう言って男はノアの口の中に指を入れて、舌を軽く撫でた。背中がゾクゾクして身を捩る。もう片手が秘部を刺激するのも止まらず、更には耳まで甘噛みされ、ノアはわけも分からずまたその快楽に溺れさせられた。
「......は、はぁ、......はうっ」
ノアは疲れ果ててぐったりする。するといつの間にか景色が反転し、ベッドに押さえ付けられていた。
「やっと、やっと見つけた...」
「はぁ...、はぁ......」
ノアを見下ろして男はうっとりと顔を綻ばせる。息を荒くして男を見上げたノアは、やはり彼のことなど思い出せそうになくて視線をウロウロと彷徨わせた。
「僕はブラッドフォードだよ。お願い、いつもみたいにブラッドって呼んで......。すまなかった。何も気付かなくて...。ごめん、ごめん.....」
「ブラッドフォード、さま...」
「ごめん、怖かったよね。何も覚えていないノアからしたらただの頭の可笑しな男だ。酷いことしてごめん...」
先程までのはなんだったのか、彼はただひたすらそう言って次は謝り始めた。どうも情緒が安定していないらしい。
綺麗な顔を歪めて涙を零す男を見上げる。綺麗な顔を流れ落ちていく雫がノアの顔に雨のように落ちてきた。
あまり感情を見せるタイプではなさそうなのに、とは思ったが、知り合いらしいノアがこの有様なので相当悲しかったのだろうか。
何だか申しわけなさが胸に渦巻いた。一旦この行為を止めて数メートル距離を置いてくれるのならほんの少しだけ話を聞いても良いかもしれない。そんなことを思った。
「でも、大丈夫だよ?」
「へ?」
「体は僕のこと覚えてるんだ。ちゃんと躾てまた思い出させてあげるから。ね?」
(この人、何言ってるの!?こんなエッチな躾で記憶が戻るわけないじゃんか!!)
信じられない、とブラッドフォードを見上げるが、彼は至って真剣な顔をしてノアに口付けを落とした。慌てて逃げようとしたが頭に添えられた手のせいで逃げられず、深い深い口付けにノアは危うく窒息しそうになった。
「っふ、はっ」
「.....うーん、相変わらずキスは下手くそだね」
ブラッドフォードがそう言って笑うものだから、何だか恥ずかしくなったが、やはり何回も言うとおり何も思い出せない。
(新手の詐欺だったらどうしよう.....)
まだ最後までしていないが、このまま流されると確実に食われてしまう。本当に婚約者だったとしても記憶のない状態でされるのは嫌だし、もしこれが顔のいい男が甘言で女を騙して良いように喰らい尽くすタイプの詐欺だったらと思うと恐怖でしかない。
(うん、逃げよう.....)
__こんな顔の良い知り合い、いるとは思えないや。
そう判断したノアは、男が顔を離した瞬間起き上がり、力を込めて男を一瞬で押し倒した。
__"テレポート"
不意をつかれたブラッドフォードが目を見開いて固まっているうちに魔法を使って一瞬で自分の住処へと転移をした。
◇◆
「.......あー。服、忘れちゃった...」
慌てて魔法を使ったがちゃんと発動して、家へと帰ってきたらしい。力が抜けて床にぺたりと崩れ落ちる。
ほっと息をついて自分の体を見れば服を着ていなかった。迷わずこの隠れ家のような我が家を選んで帰ってきて本当に良かったと考えながら、そのままお風呂に入ろうと立ち上がる。
「爺様、ただいま」
数ヶ月前に亡くなった薬草売りの老人を頭に思い浮かべてそう呟いた。記憶もなく、生活する術もよく分かっていなかったノアを拾って、ほんの僅かな間だったが生きる術を教えてくれた彼に心の中で語り掛ける。
「私はノア。__"ただのノア"」
浴室の鏡を見てポツリと呟く。胸のところに散った赤い華を忌々しく思いつつ、水をお湯にするために魔石に魔力を込める。
「.......」
爺様がくれた指輪を外せば、茶色の髪はローズピンクに、青い目はエメラルドグリーンになった。
(さっきのブラッドフォードっていう人は、そういえば髪の色変えたの?って言ってたな。もしかしたら本当に知り合い?)
ブラッドフォードはノアに急に話しかけてきた時、確か「髪も目も色を変えたのか?」と言っていた。急に美形に馴れ馴れしく話しかけられ、得体がしれないと思っていたせいで聞き流してしまっていたからか今更それを思い出した。
ズキッ
「__.....っ!」
__『逃げないと』
___『早く、早く逃げないと...!!』
またあの声が頭に響く。突然襲ってくる頭痛には相変わらず慣れず、ノアは顔を顰めた。
(私は"何か"から逃げないといけない)
もしかしたらその"何か"はさっきの男のことかもしれない。記憶のない自分にはそれすら思い出せないのだから、用心は必要だ。
「さっきの選択は間違ってない、よね?」
ブラッドフォードが泣いていたのは気になったが、演技派の人間はこの世に沢山いる。ノアに記憶がないことは、ノアが住んでいるこの村の人はみんな知っているし、ブラッドフォードと先程あったあの街の人たちも何人かは知っている。
__そこから噂されて、いいカモにされては困るのだ。
「暫くこの森から出ないでおこうかな.....」
ノアの住むこの住処は森の奥にある。同じ村人の家からも距離が少しあり、見た目も隠れ家のような感じだ。内装は意外と住みやすいようにハイテクな物に溢れているが、何も知らない人間が簡単にはたどり着けない場所にある。
同じ村の人ですら、爺様が本当に信用した人しかこの場所を知らない。今はそのことに感謝しつつ、ノアは風呂好きの爺様がこだわりにこだわって作ったという木の浴槽にお湯が溜まるさまを見つめた。
幸い昨日買い溜めしておいたので食料にも困らないし、拾ってくれた老人から引き継いだ薬売りの仕事は今週分は今日終わらせていた。
今日のように隣街に出向くことじたい殆どしないため、もうあの男には会わないはずだ。
「.....いったい...」
ズキズキと痛む頭に手を当ててゆっくりと深呼吸をする。
(どうか、私のことはもう忘れて.....)
例え知り合いであっても、詐欺師であっても関係ない。ノアはもう"ただのノア"で、"薬草売りのノア"だ。ここに来てから約1年の間に新たな生活にも慣れてきた。
___自分はここでひっそり生きて、そして爺様のように穏やかに死んでいくの。
そう言い聞かせて、体が冷えないように纏っていたタオルを取ると、湯船に肩まで浸かって目を閉じた。
◇◆
2作目書き始めました。もう1つの作品を書いてる途中に思い浮かんだので覚えているうちに投稿します。もう一つの作品は、「著者近況や作者名」から「作品」のところをタップしてご参照ください。
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