【13万字完結】結婚相手は魔王の尖兵!

ジャワカレー澤田

文字の大きさ
13 / 77
巨人族の足跡

13 クルマで行ける巨人スポット

しおりを挟む
「さて、本題に入るが……あんた、デイラボッチのことは何か知ってるか?」

 孝介はそう切り出した。

「デイラボッチ……ダイダラボッチのことね? 日本全国にある巨人伝説の張本人。富士山を運んだり、琵琶湖や浜名湖を作ったり」

「そのデイラボッチについての記事を書く羽目になっちまったんだが、俺は迷信には詳しくなくってな……。ボス、あんたの知恵を貸してほしい。ここに行けばデイラボッチのことがよく分かる、って感じのスポットは何かないか?」

「ないどころか、腐るほどあるわよ」

 山木田は小皿にクッキーを分けながら、

「相模原はダイダラボッチの足跡の宝庫だし、東京にも“代田”って地名があるでしょ? あれもダイダラボッチの足跡があるから“だいた”って名前がついたの。スポットには事欠かないと思うけれど?」

 と、解説した。

「そりゃあそうだな。俺たちもさっきまで、相模原の鹿沼公園でいろいろと調べてたんだ。……真夜、お前のスケッチブック出してみな」

 孝介にそう言われた真夜は、バッグからスケッチブックを出して「デイラボッチの足跡」の絵を山木田に見せる。

「あら、これ真夜ちゃんが描いたの? 上手ね!」

「俺も真夜にこんな特技があるなんてこたぁ知らなんだ」

「これなら松島くんの記事の挿絵にだってできるんじゃないかしら? 写実的だけど、同時にどこかエキゾチックな感じもするわね」

 山木田は真夜の絵を見つめながら、

「……これだけ上手だと、あそこへ行ってもいい絵が描けるわね」

 と、つぶやいた。

「あそこ?」

「ええ、ダイラボウというところ。ここもダイダラボッチの足跡で有名なんだけれど」

「どこだそこは?」

「静岡県静岡市にある、600m弱の山よ」

 そう言われた孝介は、

「……山か」

 と、少し残念そうに頭を掻いた。

「山も悪くはねぇし、真夜と富士山にも登ったことがあるけどな……。ただ、取材旅行はできるなら最初から最後までクルマで行きてぇ」

「松島くんはクルマが大好きだものね。あの2人乗りのオープンカー……なんて言ったかしら?」

「マツダ・NAロードスター。あんだけケツにしっくりくるクルマは、他にありゃしねぇさ」

「大丈夫よ、松島くん。ダイラボウはクルマでそのまま頂上に行けるから」

 それを聞いた孝介は、

「マジか!?」

 と、山木田に食いつくように反応した。

「ええ、あそこは林道が通ってるから。あなたの大事なクルマを麓で乗り捨てなくても、ダイダラボッチの足跡を見学することができるわよ」

「それなら話は別だ! おい、真夜」

 孝介は真夜の顔に目をやり、

「お前、このあと家帰ったら鉛筆削っておけよ。早速明日、静岡に出かけてみようぜ」

 と、告げた。

 もちろん、真夜がそれを断る理由はない。この世界の高位魔操師が、ダイラボウとかいう場所を勧めたのだ。間違いなくこのダイラボウに、デイラボッチの謎が隠されているはず——。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

処理中です...