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真夜と孝介
61 マジックロック
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ミアが率いていたアンデッドの小隊は、いつの間にか溶けていた。
異世界人玲人が率いるパーティーは、今や強くなり過ぎている。それをミアは実感してしまった。スケルトンとグール、マミーで編成されていた小隊は、ひとつの欠片も残さず灰になって消えた。
気がつけば1VS4である。もちろん、ミアが1だ。が、だからといって任務を放棄するわけにはいかない。
それにしても、今回はやたらと長期戦になっている。ミアは戦闘の最中にそう考え、同時に体力と魔力の摩耗をはっきり感じ取った。
「ダークデサイア!」
ミアがそう叫ぶと、漆黒の津波が4人を襲った。しかしそれは、ヒューの防御魔術クリスタルプロテクトで無効化される。
そこで一瞬だけできた隙を見計らい、
「行くぞ、ミア!」
と、セシリアがレイピアを持って飛び出した。
ミアも魔杖を兼ねたパイクでそれに対抗する。剣と槍の刃が交差し、火花と殺気が弾け飛ぶ。ここでミアが、
「止まれ!」
声を発した。するとセシリアの両足がピタリと止まる。これはミアの言葉に従ったからではない。向かい合っている相手の足を一定時間止める魔術である。
「く、クソッ!」
まるで足の裏に根が生えたかのような感覚に陥るセシリア。そんな彼女の後ろから、
「セシリア、しゃがんで!」
と、ヒューの叫び声がやって来た。咄嗟にしゃがみ込むセシリア。
「セイントシャイン!」
両掌を前に突き出し、相手の魔力を吸収する魔術セイントシャインをセシリアの頭越しに繰り出した。
この魔術は、本来であればミアのような高等魔操師には通用しない。彼女が万全の状態であれば。
しかし自分たちを殺しにやって来たミアに対し、わざと1時間近く引っ張るような戦い方を繰り広げ、ミアの体力と魔力を削ることに成功した。こうなればセイントシャインに対する防御魔術は発動できないはずだ。そしてその通りになった。
ヒューの全身に魔力が染み渡っていく。さすがは魔王軍の幹部、質の高い魔力がまだまだ余っていたようだ。
その魔力を、今度は覚えたてのマジックロックに振り分ける番だ。
*****
その場に両膝を落としたミアは、息を切らせながらキシロヌ王国のパーティーが自分にとどめを刺す瞬間を覚悟した。
が、その時は訪れなかった。どういうわけか4人は自分に背を向け、ここを去ってしまった。
残ったのは体力、魔力共にほぼ枯渇した闇の魔操師だけである。
そしてミアは、己の胸の奥底に妙な「引っ掛かり」があることにようやく気づいた。しかもそれは、魔力の自然回復を阻害するものだ。地面に朽ち果てる寸前のミアは、目を見開いて動揺した。
これはもしや、魔力に「鍵」をかける魔術か!?
より正確に表現すれば、相手の魔力を吸収した上で、後々回復できないように「鍵」をしてしまう。すると「鍵」をかけられた者はいくら休憩しようと、或いはマジックポーションを飲もうと、絶対に魔力を取り戻せない。
この魔術の存在だけは、ミアも知っていた。しかしある一定以上のレベルの魔操師にはまずかからないと言っていいほど、決定力に欠けた魔術でもある。セイントシャインも詠唱のしどころが難しい魔術だが、マジックロックはそれ以上。故にこの魔術自体が、半ば忘れ去られていた。
それをミアは食らってしまった。魔王軍幹部の上級魔操師であるミアが——。
だが、なぜ奴らは私にトドメを刺さない!?
ミアはその場でただひとり、地面に呑み込まれるように意識を失った。
異世界人玲人が率いるパーティーは、今や強くなり過ぎている。それをミアは実感してしまった。スケルトンとグール、マミーで編成されていた小隊は、ひとつの欠片も残さず灰になって消えた。
気がつけば1VS4である。もちろん、ミアが1だ。が、だからといって任務を放棄するわけにはいかない。
それにしても、今回はやたらと長期戦になっている。ミアは戦闘の最中にそう考え、同時に体力と魔力の摩耗をはっきり感じ取った。
「ダークデサイア!」
ミアがそう叫ぶと、漆黒の津波が4人を襲った。しかしそれは、ヒューの防御魔術クリスタルプロテクトで無効化される。
そこで一瞬だけできた隙を見計らい、
「行くぞ、ミア!」
と、セシリアがレイピアを持って飛び出した。
ミアも魔杖を兼ねたパイクでそれに対抗する。剣と槍の刃が交差し、火花と殺気が弾け飛ぶ。ここでミアが、
「止まれ!」
声を発した。するとセシリアの両足がピタリと止まる。これはミアの言葉に従ったからではない。向かい合っている相手の足を一定時間止める魔術である。
「く、クソッ!」
まるで足の裏に根が生えたかのような感覚に陥るセシリア。そんな彼女の後ろから、
「セシリア、しゃがんで!」
と、ヒューの叫び声がやって来た。咄嗟にしゃがみ込むセシリア。
「セイントシャイン!」
両掌を前に突き出し、相手の魔力を吸収する魔術セイントシャインをセシリアの頭越しに繰り出した。
この魔術は、本来であればミアのような高等魔操師には通用しない。彼女が万全の状態であれば。
しかし自分たちを殺しにやって来たミアに対し、わざと1時間近く引っ張るような戦い方を繰り広げ、ミアの体力と魔力を削ることに成功した。こうなればセイントシャインに対する防御魔術は発動できないはずだ。そしてその通りになった。
ヒューの全身に魔力が染み渡っていく。さすがは魔王軍の幹部、質の高い魔力がまだまだ余っていたようだ。
その魔力を、今度は覚えたてのマジックロックに振り分ける番だ。
*****
その場に両膝を落としたミアは、息を切らせながらキシロヌ王国のパーティーが自分にとどめを刺す瞬間を覚悟した。
が、その時は訪れなかった。どういうわけか4人は自分に背を向け、ここを去ってしまった。
残ったのは体力、魔力共にほぼ枯渇した闇の魔操師だけである。
そしてミアは、己の胸の奥底に妙な「引っ掛かり」があることにようやく気づいた。しかもそれは、魔力の自然回復を阻害するものだ。地面に朽ち果てる寸前のミアは、目を見開いて動揺した。
これはもしや、魔力に「鍵」をかける魔術か!?
より正確に表現すれば、相手の魔力を吸収した上で、後々回復できないように「鍵」をしてしまう。すると「鍵」をかけられた者はいくら休憩しようと、或いはマジックポーションを飲もうと、絶対に魔力を取り戻せない。
この魔術の存在だけは、ミアも知っていた。しかしある一定以上のレベルの魔操師にはまずかからないと言っていいほど、決定力に欠けた魔術でもある。セイントシャインも詠唱のしどころが難しい魔術だが、マジックロックはそれ以上。故にこの魔術自体が、半ば忘れ去られていた。
それをミアは食らってしまった。魔王軍幹部の上級魔操師であるミアが——。
だが、なぜ奴らは私にトドメを刺さない!?
ミアはその場でただひとり、地面に呑み込まれるように意識を失った。
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