そこは夢の詰め合わせ

らい

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蛙巳

153.堕ちた神、狂気に愛す

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愛って全てを狂わせる呪いなんだ。
それが神であっても変わらぬ。
愛とは呪いなのである。

過去はどんなに崇高な神だったのだろうか。
過去がどれだけ美しく崇高だろうと、神が堕ちれば全て台無し。

その神は人を愛していた。人をずっと守ってきた。
彼女の愛はいつしか増幅して、狂気に染った。愛する心はいつしか狂気に震えた。

愛は運命であり、悦びであり、堕落させる。
どうしようもない呪い。
間違ってる、それはいけない事だと分かっていても。愛は全ての良識を塗りつぶす。
善人は悪人になり、賢者は愚者になり、

美しく尊いものが一瞬にして形を失い、価値の無いものとなる。それが歪み、彼女の愛。
彼女は悪くない。彼女はおかしくない。
なぜなら彼女はずっと狂っていた。
人を愛しすぎて狂っていたから。

「蛇神憑き」

蛇に取り憑かれたように、人に酔い。
人を愛した彼女はそう呼ばれた。

「愛してるよ。かわいいかわいいニンゲン達」

自分の箱庭で飼うニンゲンを眺め、崇高な目で見ている彼女はずっと狂っているだろう。

「ワタシのかわいいかわいいニンゲン・・・」

我が子のように神は人を愛した。
愛して、愛して愛した挙句、彼女は愛した人を自らの手で殺した。

愛ゆえに殺すのだ。
愛して愛して、自分のモノにしたかった神は。人からの愛に縋る前に、人から愛を貰う前にその魂を我がものとした。

神は一人を見ることはあらず、神は個人を愛さない。
多くの人の愛を貰おうとして、愛にゆえ狂った神は、ずっと僕らを見ている。

なぜこの話を知っているかって?
僕もその狂った神の一人だからさ
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