19 / 39
暗闇に蠢く
18、黒き神の街
しおりを挟む
ここは魔王城から出たすぐ近く、らいの家より城の野原。そこには周りを見渡せば何万もの蠢く黒が居た。黒はこちらを見るなり襲いかかってくる。街に行かなければならないのに、街が落とされるかもしれないのに、ここで足止めを食らう。そんなもどかしさを感じながら、蛇蝎紫蘭、りく、シスターは黒と戦う。それ自体は強くなどないのだが、集団で襲いかかってくるため時間がかかる。彼女らが援軍に行けるのはもう少し後のようだ。
「船長。もう少しで街が攻略できます。後は冒険者ギルドを落とせば全てが完了致します。」
「そうか!もう少しでこの街を俺のものにできるのだな!それではあいつらを動かそうじゃないか。そうすればギルドなどすぐに落ちるだろう?」
「はっ、すぐにでも!朗報をお持ちできると約束致しましょう。」
それはある店の内部で行われていた会話。その会話が行なわれた一刻あと、ギルド側で戦っていた女性冒険者が敵側へと寝返ったのである。均衡が崩れたギルド側は後退せざるを得なくなり、ライトの街は完全に落とされたのである。ある場所を除いて・・・
「No.1、セイラさん!街が落ちた!もうここは無理だ!君たちなら妖怪の森へ行けるだろう?ここに来るであろう敵軍は私でどうにかする。君たちはそこにいる元魔王軍の二人に協力を仰いでくれ!シスターが居ない今。この街を取り戻す義務が私にはある!行け!」
「「了解!」」
さくまと別れ走る二人。
「さくまさん・・・すまないッ・・・」
雨に濡られながら彼はそう謝罪をする。彼は周りからNo.1と呼ばれる存在、「北兎エト」である。彼はライトの街の街長として、街の情勢や情報面をNo.2と一緒に支えていた。シスターに情報を渡すため、付き人のさくまとも、セイラとも仲が良い。そんな仲だったため、この別れは辛いのである。しかし、戻ったところで、さくまの行動を無駄にするだけとわかっていた。エトも、セイラも戦闘特化では無い。それがわかっていたからこそ、助けられないと彼は嘆いていた。しかしそれをセイラが制止する
「諦めるのは早いですよ。先程、少し遠くをねぐせ様が走っていかれました。おそらく援軍として出ているのでしょう。まだ諦めてはいけません。我らは我らにしかできないことをしましょう。」
それを聞いたエトに、エトの身体に力が戻る。踏み出す、踏みしめる一歩が強くなる。
そして彼は彼にしかできないことを、信じてくれた友の為に森へと走る。
霧雨が降る。そんな霧雨が降る野原で大盾を持った男が数千の軍勢の前に立ちはだかる。彼には大盾がある、彼の後ろに誰かが居る。大盾の後ろに誰かがいる。これだけで彼は強くなる。さくまの能力「守護神」は彼の後ろに一人でも護るべき存在がいるのなら自身に強化がかかる。しかし守るための能力のため攻撃が出来ない。守るだけではいつかは綻びが出る。それを承知で彼は二人を行かせたのだ。これがシスターのお付き人、堕天使さくまのシスターへの恩返しである。彼は堕天した所を彼女に拾われている。そんな彼女の街が落ちた、奪われた。赦せない。しかし、彼の能力で奪い返すのは無理である。ならば、自分を犠牲にでも、取り戻せる可能性に賭けたのである。彼は拾われた時のことを思い出す。
「俺がシスターに拾われた時もこんな雨の日だったな。俺より希望のある人を生かしました。これで未来がいい方向に行くといいのですがね。ねぇ?シスターさん。」
そう呟くと彼は目の前に蠢く黒を見る。
「黒を呼び出すとはどういう事なのですかね・・・だが、そんなことで怖気付いていたら、シスターのお付きになれるわけがありません!さぁ来なさい!胸を貸してあげましょう。」
覚悟を決めた彼は大軍へと突っ込んで行く。
それは自殺行為である、しかし、彼にはそれしか思いつかなかった。これだけこそが街奪還へと、あの昨日までの街へと戻るためにはこれしかないのだろうと・・・。
「ちょっっっと待ったぁああ!」
「ん!?」
それから誰かが大軍のど真ん中に飛んでくる。それは彼から見るとそれは紅き流星の様だった。黒を相手に引けを取らない彼女は、紅き髪をなびかせ、嗤う。嗤いながら彼女は黒と戦う。その彼女の名は━━━━━━━━━━━━
「ねぐせさん!」
魔王直下臣下四将星が一体「紅」のねぐせ。そして、それだけではなかった。ねぐせの横には彼女の狼が数十体援軍として来ていた。魔王達より早く城を出ていたため黒に見つからずここまで来ていたのである。森へと走る二人、そして、一人で大軍へと走っていくさくまを見つけ、状況を察し援軍として参加したのである。ねぐせと狼が攻撃、遊撃を、さくまが守る。即席だが最強のタッグがここに生まれた。
「ねぐせさん!三歩右!」
「了解!」
連携が即席とは言えない程に綺麗。流れるように切り替わる。それは戦場に咲く二つの花のように、綺麗であった。それから数刻の時。数千の軍勢は壊滅した。
「船長。もう少しで街が攻略できます。後は冒険者ギルドを落とせば全てが完了致します。」
「そうか!もう少しでこの街を俺のものにできるのだな!それではあいつらを動かそうじゃないか。そうすればギルドなどすぐに落ちるだろう?」
「はっ、すぐにでも!朗報をお持ちできると約束致しましょう。」
それはある店の内部で行われていた会話。その会話が行なわれた一刻あと、ギルド側で戦っていた女性冒険者が敵側へと寝返ったのである。均衡が崩れたギルド側は後退せざるを得なくなり、ライトの街は完全に落とされたのである。ある場所を除いて・・・
「No.1、セイラさん!街が落ちた!もうここは無理だ!君たちなら妖怪の森へ行けるだろう?ここに来るであろう敵軍は私でどうにかする。君たちはそこにいる元魔王軍の二人に協力を仰いでくれ!シスターが居ない今。この街を取り戻す義務が私にはある!行け!」
「「了解!」」
さくまと別れ走る二人。
「さくまさん・・・すまないッ・・・」
雨に濡られながら彼はそう謝罪をする。彼は周りからNo.1と呼ばれる存在、「北兎エト」である。彼はライトの街の街長として、街の情勢や情報面をNo.2と一緒に支えていた。シスターに情報を渡すため、付き人のさくまとも、セイラとも仲が良い。そんな仲だったため、この別れは辛いのである。しかし、戻ったところで、さくまの行動を無駄にするだけとわかっていた。エトも、セイラも戦闘特化では無い。それがわかっていたからこそ、助けられないと彼は嘆いていた。しかしそれをセイラが制止する
「諦めるのは早いですよ。先程、少し遠くをねぐせ様が走っていかれました。おそらく援軍として出ているのでしょう。まだ諦めてはいけません。我らは我らにしかできないことをしましょう。」
それを聞いたエトに、エトの身体に力が戻る。踏み出す、踏みしめる一歩が強くなる。
そして彼は彼にしかできないことを、信じてくれた友の為に森へと走る。
霧雨が降る。そんな霧雨が降る野原で大盾を持った男が数千の軍勢の前に立ちはだかる。彼には大盾がある、彼の後ろに誰かが居る。大盾の後ろに誰かがいる。これだけで彼は強くなる。さくまの能力「守護神」は彼の後ろに一人でも護るべき存在がいるのなら自身に強化がかかる。しかし守るための能力のため攻撃が出来ない。守るだけではいつかは綻びが出る。それを承知で彼は二人を行かせたのだ。これがシスターのお付き人、堕天使さくまのシスターへの恩返しである。彼は堕天した所を彼女に拾われている。そんな彼女の街が落ちた、奪われた。赦せない。しかし、彼の能力で奪い返すのは無理である。ならば、自分を犠牲にでも、取り戻せる可能性に賭けたのである。彼は拾われた時のことを思い出す。
「俺がシスターに拾われた時もこんな雨の日だったな。俺より希望のある人を生かしました。これで未来がいい方向に行くといいのですがね。ねぇ?シスターさん。」
そう呟くと彼は目の前に蠢く黒を見る。
「黒を呼び出すとはどういう事なのですかね・・・だが、そんなことで怖気付いていたら、シスターのお付きになれるわけがありません!さぁ来なさい!胸を貸してあげましょう。」
覚悟を決めた彼は大軍へと突っ込んで行く。
それは自殺行為である、しかし、彼にはそれしか思いつかなかった。これだけこそが街奪還へと、あの昨日までの街へと戻るためにはこれしかないのだろうと・・・。
「ちょっっっと待ったぁああ!」
「ん!?」
それから誰かが大軍のど真ん中に飛んでくる。それは彼から見るとそれは紅き流星の様だった。黒を相手に引けを取らない彼女は、紅き髪をなびかせ、嗤う。嗤いながら彼女は黒と戦う。その彼女の名は━━━━━━━━━━━━
「ねぐせさん!」
魔王直下臣下四将星が一体「紅」のねぐせ。そして、それだけではなかった。ねぐせの横には彼女の狼が数十体援軍として来ていた。魔王達より早く城を出ていたため黒に見つからずここまで来ていたのである。森へと走る二人、そして、一人で大軍へと走っていくさくまを見つけ、状況を察し援軍として参加したのである。ねぐせと狼が攻撃、遊撃を、さくまが守る。即席だが最強のタッグがここに生まれた。
「ねぐせさん!三歩右!」
「了解!」
連携が即席とは言えない程に綺麗。流れるように切り替わる。それは戦場に咲く二つの花のように、綺麗であった。それから数刻の時。数千の軍勢は壊滅した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる