二次創作小説

らい

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ゆうひ

あの手に触れて欲しくて

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「ね~?彼女が目の前におるとになんもせんでいいとー?」

少し訛りの入った声。
見ていた雑誌から目を離して、声の出処をチラリと見ると、膨れっ面でこちらを見る彼女の姿があった。

「なんかして欲しいんか?」

「それを言わせるのは卑怯じゃない?」

「言わなきゃ分からんが」

両者、お互いの主張のみで歩み寄らない。
彼女は察して欲しい。彼は言わないと分からないといった様子のいがみ合いだった。

「ゆうひ~?ごめんってば!拗ねんでや」

ついに宵乃が拗ねた。
彼はやれやれと思い、そっと後ろから彼女を抱きしめる。彼女の身体がビクッと跳ねる。

「な、なんやぁ・・・!こんな程度じゃ宵乃の機嫌は直らないぞぉ!」

「じゃあどうしたら機嫌直してくれる?」

彼が優しく宵乃の耳元で囁く。
宵乃は肩を震わせると、小さな小さな声で答えた。

「頭・・・撫でて欲しい・・・」

「ん、よく言えました」

彼の大きくて硬い手が、宵乃の頭を撫でる。
優しくて、暖かくて、とても幸せな手。
宵乃は満足そうに顔を赤らめ、口をもごもごと動かす。

「可愛いね、ゆうひは」

「う、うるしぇーにゃー!」

そう怒るけれど彼女はそこから離れようとはしない。だってもっと撫でて欲しいから。
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