二次創作小説

らい

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ゆうひ

差し出した手は永遠への片道切符

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猫又に噛まれると人は不老になる。不死になる。それがどんな猫又であっても。それは覆ることの無い事実なのである。

そしてここに一人。誰もが殺す猫又に手を差し伸べた飼い主が居た。

飼っていた猫が猫又となったある日の事。
猫又は人の血を欲するが、飼い主を噛もうとしなかった。猫又は血を吸わねば消える。
それを知っていてなお、飼い主はそれでも愛したい猫又の為に血を差し出す。

自分で手を切り、そっと鮮血を猫又の前へ持って行く。猫又になっても飼い猫である事は間違いないのだから。猫又は静かに牙を飼い主ヘ立てる静かに静かに。

その日飼い主は痛みと熱に襲われ、気がついた時には。世界は終わっていた。

数百年眠っていた。と思う。
自分を噛んだ猫又すら居なかった。
壊れた鉄塊、使われていない電灯は傾いている。

「今、なんねん・・・?」

年表は見た事ないもの。本当にそれは数百年ほど過ぎていて。空はいつも通り青いのに、私の目の前に広がる光景は全くもって別物だった。

どこまで探しても。
どこまで走っても、飼い主一人。
何も無い誰もいない世界でそれは一人。
死にたくても死ねない世界で。彼女は一人。

悔やんでも、悔やんでも彼女は死ねない。
未来永劫、彼女はあの時を悔やむだろう。
悔やんで悔やんで狂っても。
もう彼女は不老不死である。

死ぬ事を許されることはない。
死を望んでも、受け入れられる事はない。
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