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第一話 遺恨
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フタ―ク国にいる聖女たちにもランクがあった。
貴族産まれの聖女が、聖女頭となって、聖女たちをとり仕切っていた。いまはヒックス公爵の一人娘ガーナルがその任についていたのだ。
その日、隣国ダラスの王、ミブライが表敬訪問でフタ―ク国にきていたのだが、ミブライ王は晩餐の途中で突然腹痛を起こして、付き添いの者たちに運ばれて診療所に運ばれてやってきた。当然のように聖女頭だったガーナルが治療にあたった。だが、いくら手をかざしてもミブライ王の痛みはおさまらない。
「もう少し、お待ちください」と、ガーナルはふたたび手をミブライ王の胃の上にかざした。だが、ミブライ王の苦痛の顔は変わらない。
聖女となったアンナも他の聖女と一緒に後ろにならばされ、ガーナルのやることを見守っていた。
苦しさのあまりに、ミブライ王は、身もだえて一番端にいたアンナの手をひっぱっていた。仕方なく、アンナはミブライ王のされるままに、手を胃のあたりにおいた。
すると、ミブライ王の顔から苦痛の色が消えやわらいでいた。
「もっと、このままでいて欲しい」
そう言われたアンナは、ミブライ王の胃の上に手を当て続けることになり、やがてミブライ王の痛みは無くなっていた。そんなアンナをガーナルは憎しみに満ちた目で睨みつけていた。
アンナがガーナルに恥をかかせたことになってしまったからだ。
「あなたのおかげで、楽になりました。あなたのお名前は?」とミブライ王はアンナを誉めて名前を聞いてきた。
「なのるほどの者ではございません」
「いや、ぜひ聞かせて欲しい」
「アンナと申します」
「そうですか。アンナと言われるのか」
ミブライ王はうなずいていた。
「親なしの分際で」と、ガーナルは小さく呟いていた。
「ガーナル様、あなたが癒しを続けたおかげで、ミブライ様はよくなったのでございますよ」と他の聖女たちは、ガーナルにへつらいの言葉を伝えていた。
確かに、アンナは幼子の時にフタ―ク国の孤児院の玄関先に竹籠に入れて置かれていた。それを見つけたトロ神の司祭であり孤児院の創設者であるローハイに拾われ、孤児院で他の孤児たちとともに育てられたのだった。
ローハイは、育てた子供らが、そこを出ても暮らしていけるように技術を身につけさせ、仕事もみつけてくれていた。アンナに国が行う聖女の資格検査を受けさせたのも、ローハイだった。そのおかげで、アンナは聖女として働くことができるようになっていた。
半年後、宮殿で舞踊会が開かれることになった。この日には、フタ―ク国王夫妻やその後継者になるリカード王子も参加することになっていた。この舞踊会のかくれた目的は、リカード王子の花嫁探しだとも言われていた。
聖女の一人であるアンナも参列を要請された。
孤児院の母親役をしてくれていた修道女のオバタが自分の持っている一番いい服をアンナにくれたのだ。どんなにアンナは嬉しかっただろうか。すぐにアンナは、その服を自分の体形に合わせるように繕い、それを着て参加したのだった。
舞踊会の会場は宮殿の大広間で、すでに皆は踊り出していた。誘ってくれる者もいないアンナは踊り疲れた者がすわるためにおかれた椅子を前にして立ち尽くしていた。
突然、リカード王子がアンナにダンスを申し込んできた。あわてたアンナは手に持っていたバッグを椅子の上において、リカード王子と踊り出そうとした。
「あら、これは何かしら?」
アンナが声の方に顔を向けると、そこに目を吊り上がらせたガーナルがアンナのバッグを手にしていた。ガーナルはアンナのバッグからダイヤがついた片耳のイヤリングを取り出して見せたのだ。
「私、これを先ほどから探しておりましたのよ。それがこんなところにあるなんて!」
アンナは何も言えずに、立ち尽くしていた。ダンスを申し込んだリカード王子も関係を持つわけにはいかないと思ったのか、離れて行っていた。
「あなたが盗ったのかしら?」
「知りません。そんな物が入っていたなんて」
「でも、あなたのバッグに入っていましたのよ。聖女である人が、してはならないことをしてしまったなんて、そうですわね。リカード様」
ガーナルに、そう言われては、リカード王子も国を治めている者の一人として判断をして見せなければならない。
「窃盗は犯罪です。窃盗犯は、一年間、牢に入れられることになる」
「それはかわいそうですわ。聖女だった人ですから、ともかく、この国から出て行ってもらうのが一番よろしいかと思いますわ」
そう言ったガーナルは、声をあげて笑っていた。
貴族産まれの聖女が、聖女頭となって、聖女たちをとり仕切っていた。いまはヒックス公爵の一人娘ガーナルがその任についていたのだ。
その日、隣国ダラスの王、ミブライが表敬訪問でフタ―ク国にきていたのだが、ミブライ王は晩餐の途中で突然腹痛を起こして、付き添いの者たちに運ばれて診療所に運ばれてやってきた。当然のように聖女頭だったガーナルが治療にあたった。だが、いくら手をかざしてもミブライ王の痛みはおさまらない。
「もう少し、お待ちください」と、ガーナルはふたたび手をミブライ王の胃の上にかざした。だが、ミブライ王の苦痛の顔は変わらない。
聖女となったアンナも他の聖女と一緒に後ろにならばされ、ガーナルのやることを見守っていた。
苦しさのあまりに、ミブライ王は、身もだえて一番端にいたアンナの手をひっぱっていた。仕方なく、アンナはミブライ王のされるままに、手を胃のあたりにおいた。
すると、ミブライ王の顔から苦痛の色が消えやわらいでいた。
「もっと、このままでいて欲しい」
そう言われたアンナは、ミブライ王の胃の上に手を当て続けることになり、やがてミブライ王の痛みは無くなっていた。そんなアンナをガーナルは憎しみに満ちた目で睨みつけていた。
アンナがガーナルに恥をかかせたことになってしまったからだ。
「あなたのおかげで、楽になりました。あなたのお名前は?」とミブライ王はアンナを誉めて名前を聞いてきた。
「なのるほどの者ではございません」
「いや、ぜひ聞かせて欲しい」
「アンナと申します」
「そうですか。アンナと言われるのか」
ミブライ王はうなずいていた。
「親なしの分際で」と、ガーナルは小さく呟いていた。
「ガーナル様、あなたが癒しを続けたおかげで、ミブライ様はよくなったのでございますよ」と他の聖女たちは、ガーナルにへつらいの言葉を伝えていた。
確かに、アンナは幼子の時にフタ―ク国の孤児院の玄関先に竹籠に入れて置かれていた。それを見つけたトロ神の司祭であり孤児院の創設者であるローハイに拾われ、孤児院で他の孤児たちとともに育てられたのだった。
ローハイは、育てた子供らが、そこを出ても暮らしていけるように技術を身につけさせ、仕事もみつけてくれていた。アンナに国が行う聖女の資格検査を受けさせたのも、ローハイだった。そのおかげで、アンナは聖女として働くことができるようになっていた。
半年後、宮殿で舞踊会が開かれることになった。この日には、フタ―ク国王夫妻やその後継者になるリカード王子も参加することになっていた。この舞踊会のかくれた目的は、リカード王子の花嫁探しだとも言われていた。
聖女の一人であるアンナも参列を要請された。
孤児院の母親役をしてくれていた修道女のオバタが自分の持っている一番いい服をアンナにくれたのだ。どんなにアンナは嬉しかっただろうか。すぐにアンナは、その服を自分の体形に合わせるように繕い、それを着て参加したのだった。
舞踊会の会場は宮殿の大広間で、すでに皆は踊り出していた。誘ってくれる者もいないアンナは踊り疲れた者がすわるためにおかれた椅子を前にして立ち尽くしていた。
突然、リカード王子がアンナにダンスを申し込んできた。あわてたアンナは手に持っていたバッグを椅子の上において、リカード王子と踊り出そうとした。
「あら、これは何かしら?」
アンナが声の方に顔を向けると、そこに目を吊り上がらせたガーナルがアンナのバッグを手にしていた。ガーナルはアンナのバッグからダイヤがついた片耳のイヤリングを取り出して見せたのだ。
「私、これを先ほどから探しておりましたのよ。それがこんなところにあるなんて!」
アンナは何も言えずに、立ち尽くしていた。ダンスを申し込んだリカード王子も関係を持つわけにはいかないと思ったのか、離れて行っていた。
「あなたが盗ったのかしら?」
「知りません。そんな物が入っていたなんて」
「でも、あなたのバッグに入っていましたのよ。聖女である人が、してはならないことをしてしまったなんて、そうですわね。リカード様」
ガーナルに、そう言われては、リカード王子も国を治めている者の一人として判断をして見せなければならない。
「窃盗は犯罪です。窃盗犯は、一年間、牢に入れられることになる」
「それはかわいそうですわ。聖女だった人ですから、ともかく、この国から出て行ってもらうのが一番よろしいかと思いますわ」
そう言ったガーナルは、声をあげて笑っていた。
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