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カルゾ国に旅立ちの日。
私は父と母それに祖母と一緒に家の前で、私をのせる馬車がくるのを待っていた。
私の両手で大きなカバンを二つさげていた。
「中に何が入っているのかね?」と祖母が聞いてきた。
「左は、下着が入っているわ。常時とりかえて綺麗な物を着ていたいし、自分の体にあった物を着ていたいもの。右には、繕いであるドレスが入っているわ。私が一番気にいっている服ですもの。それにそれらを修理できるように針や糸、ハサミが入った裁縫道具」
私は、その他に見えない物を持っていた。
それは、幼い日の思い出。
城で出会った8歳のカルゾ国の王子、リチャードと楽しく話し合うことができたことだ。それだけを頼りに私は旅立つ。
「やはり、女の子だね。私もあんたの旅立ちのために贈り物を持ってきているんだよ」
何かしら?と思って、私は首をかしげる。
「私の商売道具。薬じゃよ。この薬箱の中に二十種類の薬が入っている。どこかで怪我をしたり、お腹が痛くなったら、やはり薬が必要になってくる。それに薬草を作るための種と植えれば増やすことができる根も入れておいたよ」
「有難う、おばあちゃん」
そこで、私は「呪いをとくことができる薬はないのかしら?」とつぶやいてみせた。
すると、祖母は額にしわを作っていた。
「おまえも、カルゾの王が呪われているのを聞いているのじゃな」
私はうなずいた。
「伝説はあるぞ。イバラの森の中に咲いている月のしずくという草から作った薬を飲ませれば、呪いがとけると言われている」
「月のしずくって、どんな薬草なのかしら?」
「花は白く、三日月のような形をしていて、花の中からおしべが水をしたらしたように突きでいるそうだ。だが、そもそもイバラの森がどこにあるのか、私は知らないのだよ。ごめんな」
私と祖母の話は聞こえているのだろうが、その話に入らないのが父母たちの優しさだったかもしれない。
父が両手でかかえているのは、国王から持たされた私のための結納品であった。開けて見せられたのだが、腕輪、指輪、首輪どれも宝石がついていた。
やがて、警護兵の一隊が近づいてきた。
一番前には馬にのった警護兵の隊長が、次には二人の警護兵が馬にのって続き、その後は馬車が、最後に二人の警護兵が馬にのって続いていた。そして、馬車の前には御者が一人、馬車の後ろには従者が二人のっていた。
先導をしてきた警護隊長は馬からおりてくると、私たちの前にやってきた。
「私はこのたび護衛隊長を仰せつかったゾラと申します。まずはお荷物を積まさせていただきます」
ゾラがそう言うと、馬車の後台にのっていた従者がおりてきて、私からカバンを受け取り、馬車の胴の戸を開けて、そこに入れていた。さらに祖母から薬箱を受け取るとそれも入れていた。
「ナターシャ様、結納の品は自分で持って馬車におのりください」とゾラが言ったので、父が両手をもっていた箱を私はあずかり、従者に手伝ってもらいながら、馬車にのった。
「それでは、旅立たせていただきます」
ゾラは、馬のたずなをひいて、馬を歩かせ出した。そして、一隊は彼について動き出していった。
私は父と母それに祖母と一緒に家の前で、私をのせる馬車がくるのを待っていた。
私の両手で大きなカバンを二つさげていた。
「中に何が入っているのかね?」と祖母が聞いてきた。
「左は、下着が入っているわ。常時とりかえて綺麗な物を着ていたいし、自分の体にあった物を着ていたいもの。右には、繕いであるドレスが入っているわ。私が一番気にいっている服ですもの。それにそれらを修理できるように針や糸、ハサミが入った裁縫道具」
私は、その他に見えない物を持っていた。
それは、幼い日の思い出。
城で出会った8歳のカルゾ国の王子、リチャードと楽しく話し合うことができたことだ。それだけを頼りに私は旅立つ。
「やはり、女の子だね。私もあんたの旅立ちのために贈り物を持ってきているんだよ」
何かしら?と思って、私は首をかしげる。
「私の商売道具。薬じゃよ。この薬箱の中に二十種類の薬が入っている。どこかで怪我をしたり、お腹が痛くなったら、やはり薬が必要になってくる。それに薬草を作るための種と植えれば増やすことができる根も入れておいたよ」
「有難う、おばあちゃん」
そこで、私は「呪いをとくことができる薬はないのかしら?」とつぶやいてみせた。
すると、祖母は額にしわを作っていた。
「おまえも、カルゾの王が呪われているのを聞いているのじゃな」
私はうなずいた。
「伝説はあるぞ。イバラの森の中に咲いている月のしずくという草から作った薬を飲ませれば、呪いがとけると言われている」
「月のしずくって、どんな薬草なのかしら?」
「花は白く、三日月のような形をしていて、花の中からおしべが水をしたらしたように突きでいるそうだ。だが、そもそもイバラの森がどこにあるのか、私は知らないのだよ。ごめんな」
私と祖母の話は聞こえているのだろうが、その話に入らないのが父母たちの優しさだったかもしれない。
父が両手でかかえているのは、国王から持たされた私のための結納品であった。開けて見せられたのだが、腕輪、指輪、首輪どれも宝石がついていた。
やがて、警護兵の一隊が近づいてきた。
一番前には馬にのった警護兵の隊長が、次には二人の警護兵が馬にのって続き、その後は馬車が、最後に二人の警護兵が馬にのって続いていた。そして、馬車の前には御者が一人、馬車の後ろには従者が二人のっていた。
先導をしてきた警護隊長は馬からおりてくると、私たちの前にやってきた。
「私はこのたび護衛隊長を仰せつかったゾラと申します。まずはお荷物を積まさせていただきます」
ゾラがそう言うと、馬車の後台にのっていた従者がおりてきて、私からカバンを受け取り、馬車の胴の戸を開けて、そこに入れていた。さらに祖母から薬箱を受け取るとそれも入れていた。
「ナターシャ様、結納の品は自分で持って馬車におのりください」とゾラが言ったので、父が両手をもっていた箱を私はあずかり、従者に手伝ってもらいながら、馬車にのった。
「それでは、旅立たせていただきます」
ゾラは、馬のたずなをひいて、馬を歩かせ出した。そして、一隊は彼について動き出していった。
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