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10泥棒市場
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泥棒市場開催の日がやってきた。
昨日までの街道はただ道があるだけの場所だった。その道の左右にいろいろの店ができあがり、並んでいた。さらに店と店の間に小道ができ、そこにも店ができていたのだった。
私はリカードと一緒にそこに行った。
さすが、泥棒市場だ。
店の棚にまるでイチゴでも並べるように、ダイヤ、サファイア、エメラルドなど大粒の宝石がおかれていた。盗まれはしないのかと思ってしまうが、売っている男の傷のある顔を見れば、そんな者が出てくるはずはないと思ってしまう。隣の店では、宝石で飾られた短剣ばかりが並べられていた。さらにその隣の店では呪われた鉄剣や銅の鎧が吊るされていた。そんな物を買って行く者がいるのだろうか?
まず、私たちは魔道具の店を見て歩いた。クリスタルよりも強い力がある物はないか探して歩いたのだ。店主に聞くと、その道具を持っていても、持っている間は呪いをとめることができるだけで、完全に呪いを無くすことはできないと言っていた。
薬を売っている店も、たくさんあった。
ただの薬屋、漢方薬専門店、薬草ばかりを売っている店をのぞいた。さらにミイラばかりが置かれている店にも行ってみた。
私がどの店に入っても聞くことは次の二つだ。
「体が崩れていく呪いを消し去る薬はありませんか?」
「オオカミ男になるのを完全に防ぐ薬はありませんか?」
だが、どの店の店主も額にたてじわを作って、「そんなのは、おいていないよ」と言っていた。前にリカードが来た時も同じことを言われていたのだろう。リカードは寂しそうな顔をしていた。
「私たちは、どうしたらいいのかしら?」と私がつぶやくと、「ほう、お客さん。だったら、占ってもらうのはどうかね?」とミイラばかりを置いていた店の店主が言った。
「占う、一体、何を?」
「そこならば、なんでも占ってくれるよ」
「それはどこですか?」
「曼荼羅という店の婆さんだよ。そこの路地を通って行けばつき当りにあるよ」
「リカード、行ったことはあるの?」
「いや、路地にある店までは、行ったことはないね」
「でも、少しあそこは高いよ」と、店主が言っていた。
「いくらですか?」
「金貨十枚だね」
「そのくらいならば、なんとかなりますよ」
リカードがそう言ってくれたので、私たちはその店から出て、店と店の間の小道に入り込んだ。たしかに奥に吊り下げられたノレンが見えてきた。
近づきノレンをあげて、私たちは中に入った。
中は薄暗く、丸いテーブルの上にロウソクが一本、燭台にのせられていた。その明かりで、テーブルの上には大きな水晶玉がおかれているのがわかる。その水晶玉の半分ぐらいしかない顔がこちらに向けられていた。老婆のようだった。
「ほう、お客さんかい?」と言って老婆は声を出した。
「占っていただきたいことがありまして」
「ここの料金を知っているのかい?」
「金貨十枚だとお聞きしましたが」
「前金だよ」
すぐに、リカードは自分の財布からお金を出して、テーブルの上においた。
「たしかに、お代はいただいた。それで聞きたいことは何かな? 失せ物で、いまはどこにあるかということかね。それとも、先に何が起きるか知りたいということかね」
「いえ、違います」と言ってから、私はリチャード王がどのようになっているか話をした。その上で、「呪いを解くとすればどうすればいいのか、教えていただきたいのです」と聞いた。
「少し、待ちなさい」と、老婆は言ってから、じっと水晶玉の中をみつめていた。
「それを可能にする薬草があるな。月のしずく。それがあるのは、イバラの森にある」
「イバラの森ですって」と、私は声をあげた。私が声をあげたのは祖母も同じことを言っていたからだ。
「でも、それだけでは、月のしずくを探すことはできません」
「その先を占えというのかね?」
「はい、お願いします」
「じゃ、もう金貨十枚」と言って、老婆は右手の平を上に向けた。
リカードは、片眉をあげながら、金貨十枚を財布から出し老婆に渡していた。
すると、ふたたび老婆は苦しそうに水晶玉をみつめ出した。
「見えたことだけを言おう。イバラの森がある所は、見えている所なのに見えない所にある。行くことができない所なのだが、行くことができないわけではない。そう水晶玉の中に見えている」
「そんな話を聞かされても、わからないわ」
「ならば、その先に見えたことを言おう。そこは、あんたのいる所から決して遠い所ではない。だが、月のしずくを摘むことができるのは愛を持つ者だけじゃよ」
そう言った老婆はにやりと笑っていた。
昨日までの街道はただ道があるだけの場所だった。その道の左右にいろいろの店ができあがり、並んでいた。さらに店と店の間に小道ができ、そこにも店ができていたのだった。
私はリカードと一緒にそこに行った。
さすが、泥棒市場だ。
店の棚にまるでイチゴでも並べるように、ダイヤ、サファイア、エメラルドなど大粒の宝石がおかれていた。盗まれはしないのかと思ってしまうが、売っている男の傷のある顔を見れば、そんな者が出てくるはずはないと思ってしまう。隣の店では、宝石で飾られた短剣ばかりが並べられていた。さらにその隣の店では呪われた鉄剣や銅の鎧が吊るされていた。そんな物を買って行く者がいるのだろうか?
まず、私たちは魔道具の店を見て歩いた。クリスタルよりも強い力がある物はないか探して歩いたのだ。店主に聞くと、その道具を持っていても、持っている間は呪いをとめることができるだけで、完全に呪いを無くすことはできないと言っていた。
薬を売っている店も、たくさんあった。
ただの薬屋、漢方薬専門店、薬草ばかりを売っている店をのぞいた。さらにミイラばかりが置かれている店にも行ってみた。
私がどの店に入っても聞くことは次の二つだ。
「体が崩れていく呪いを消し去る薬はありませんか?」
「オオカミ男になるのを完全に防ぐ薬はありませんか?」
だが、どの店の店主も額にたてじわを作って、「そんなのは、おいていないよ」と言っていた。前にリカードが来た時も同じことを言われていたのだろう。リカードは寂しそうな顔をしていた。
「私たちは、どうしたらいいのかしら?」と私がつぶやくと、「ほう、お客さん。だったら、占ってもらうのはどうかね?」とミイラばかりを置いていた店の店主が言った。
「占う、一体、何を?」
「そこならば、なんでも占ってくれるよ」
「それはどこですか?」
「曼荼羅という店の婆さんだよ。そこの路地を通って行けばつき当りにあるよ」
「リカード、行ったことはあるの?」
「いや、路地にある店までは、行ったことはないね」
「でも、少しあそこは高いよ」と、店主が言っていた。
「いくらですか?」
「金貨十枚だね」
「そのくらいならば、なんとかなりますよ」
リカードがそう言ってくれたので、私たちはその店から出て、店と店の間の小道に入り込んだ。たしかに奥に吊り下げられたノレンが見えてきた。
近づきノレンをあげて、私たちは中に入った。
中は薄暗く、丸いテーブルの上にロウソクが一本、燭台にのせられていた。その明かりで、テーブルの上には大きな水晶玉がおかれているのがわかる。その水晶玉の半分ぐらいしかない顔がこちらに向けられていた。老婆のようだった。
「ほう、お客さんかい?」と言って老婆は声を出した。
「占っていただきたいことがありまして」
「ここの料金を知っているのかい?」
「金貨十枚だとお聞きしましたが」
「前金だよ」
すぐに、リカードは自分の財布からお金を出して、テーブルの上においた。
「たしかに、お代はいただいた。それで聞きたいことは何かな? 失せ物で、いまはどこにあるかということかね。それとも、先に何が起きるか知りたいということかね」
「いえ、違います」と言ってから、私はリチャード王がどのようになっているか話をした。その上で、「呪いを解くとすればどうすればいいのか、教えていただきたいのです」と聞いた。
「少し、待ちなさい」と、老婆は言ってから、じっと水晶玉の中をみつめていた。
「それを可能にする薬草があるな。月のしずく。それがあるのは、イバラの森にある」
「イバラの森ですって」と、私は声をあげた。私が声をあげたのは祖母も同じことを言っていたからだ。
「でも、それだけでは、月のしずくを探すことはできません」
「その先を占えというのかね?」
「はい、お願いします」
「じゃ、もう金貨十枚」と言って、老婆は右手の平を上に向けた。
リカードは、片眉をあげながら、金貨十枚を財布から出し老婆に渡していた。
すると、ふたたび老婆は苦しそうに水晶玉をみつめ出した。
「見えたことだけを言おう。イバラの森がある所は、見えている所なのに見えない所にある。行くことができない所なのだが、行くことができないわけではない。そう水晶玉の中に見えている」
「そんな話を聞かされても、わからないわ」
「ならば、その先に見えたことを言おう。そこは、あんたのいる所から決して遠い所ではない。だが、月のしずくを摘むことができるのは愛を持つ者だけじゃよ」
そう言った老婆はにやりと笑っていた。
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