呪いで人狼(オオカミ男)になった王の所に嫁いで行くことになった件

矢野 零時

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20会議

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 リデとマリーナはゾンド国に逃げていった。
 それは、カルゾ国のいろいろな情報がゾンド国に知られたことだ。
 その影響はすぐにでた。
 金塊の輸送が狙われ出し、簡単に奪われてしまった。金塊を手に入れれば、ゾンド国の富が増え、それが力となっていく。それを防ぐために輸送の際に多くの警備兵をつけざるおえなくなった。
 それをすると金山を守っている兵士の数が少なくなる。待っていたように金山の坑道も狙われ出していた。

 カルゾ国の危機と思ったリチャード王は国の要職についているすべての者を集めて円卓にすわらせて会議を始めた。忌憚のない意見を出してもらいたかったからだ。
 私も王の隣席に座らせてもらった。
 まず最初に、王から、みんなに集まってもらった訳を説明されると、リカードが口を開いた。
「すぐにでも、すみやかな対策をこうじなければなりませんぞ」
 その後、城の警護隊長スカイが手をあげて話し出した。
「やはり、金山の坑道のある場所が知れ渡ったことが一番問題だと思いますよ。このままですと、入り込まれて金山そのものを盗れてしまう」
「坑道に入りこめる穴はいくつあるのかね?」と王がスカイに聴く。
「五つござますな。それらの穴に警護兵を二人づつ置くとしても、10人は必要です」
「ここは、金山から金が最もとれている坑道一つだけを開けておくことにして、それを厳重に警護するしかない」と、ロバートが声をあげた。
「後はどうするかだが?」と、王は首を傾げる。
「戸口をつけて、それに錠をかけておくのはどうですか?」とスカイが応じた。
「なるほど、それならば、そこから金を盗まれることはない」と言って、王はうなずいていた。

「最も問題なのは、われらの兵力が知られてしまったことですぞ」と、リカードは声を荒げた。
「我が国の兵は、何人いるのかな?」と、王が聞いた。
「騎士隊が5人、城の警護兵は45人、城下の見回り隊が20人、金山坑道警護隊10人、合わせて80人になりますな」と、スカイが答えていた。そして「知られてしまえば、ゾンド国がわれらの兵力以上の兵士を集めて攻めてくると思われます」と、続けて言っていた。
「困りましたな。どうすればいいのですか?」と、リカードが腕をくんだ。
「ならば、兵になってくれる者を募集しようではないか?」と、王が言い出した。
「そんなことができるのですか?」と、スカイ。
「各国に依頼文を配布して兵役募集をしてもらうのはどうじゃ」
「各国も自分の兵を増やしたいと思っているはず。頼んでも本当に我が国のためにやってくれるかどうか、分かりませんよ」と言って、リカードは首を傾げていた。すると、ロバートが声をあげた。
「いや、ライズ王国なら、やってもらえる気がしますね。あそこは大国ですので、職がなくて生活に困っている人たちが多くいる。それに他の国からも入ってきて職探しをしている人たちもいますからね。どうですか?」
「だが、誰が募集をして、人を集めてくれるのかね?」と、王も感じた疑問を口にしていた。
「やってくれる人がいますよ。ナターシャ様をこの国に送る手伝いをしてくれた警護隊長ゾラ。彼はその時にナターシャ様に助けてもらったことをいまでも恩に感じている」
「それなら、彼に全面的にお願いをして集めてもらおう。それなりの協力金も送ってやってくれ。できることならば、3百人ぐらい確保してもらえると有難いが」
「王のご了解をいただきましたので、これは進めさせていただきます」

 王は、ロバートに向かってうなずいた後、ふたたびく口を開いた。
「だが、それだけでは、戦が起きた時には、兵の数が足りないかもしれない。親交を結んでいるボーマル国とすぐにでも同盟を結んでおこう。どこから攻められようとも、共に戦ってくれる国があれば、鬼に金棒といったところだからな」
 王がそう言うと会議にいる誰もがうなずいていた。

「もう一つ困ったことが起きております」と、リカードが言い出した。
「なにかね、それは?」
「リデが薬草のポションを持っていったことです。これでソンド国でも薬草の栽培を行い、我々と同じに傷を負った者の治療ができるようになってしまう」
「ナターシャ、誰でも薬草を栽培でるのかね?」と、王は私に聞いてきた。
「薬草を育て上げるのは、簡単にできません。ソンド国にそんなことができる人はいないと思いますが」

 リデが城の中にいた時に、どれだけ薬草の栽培知識を盗んでいくことができたか?

「でも、分かりません。それとは別に薬草から作った薬を五瓶ほど持っていかれております。それを使われることの方が恐ろしい」
 私の言葉を受けて、リカードは話し出した。
「リデたちが逃げていかなくても、ゾンド国は私たちが月のしずくを持ったことを知っています。だが、月のしずくの力が、かけられた呪いを完全に解くことができるとは、知らなかったはずです。しかし、いまはリデからそのことを聞いて知っています。ゾンド国としては、呪いの力を失いたくない。そのためには月のしずくを無くしてしまうことを考えているはずです。それをまず阻止しなければならない」
 すると、エフセンが手をあげた。
「何かいい案でも、思いついたかね」と王が聞く。
「こんな場合は単純に考えるしかない。月のしずくを守るために、鶴山の頂上に多くの警護兵を配備するしかありません」
「そうだな、鶴山の頂上に警備兵をおくことにしよう。スカイ、何人おくことができる?」
「ならば、城の警護兵の中から5人。これでいかがでしょうか?」
「それでいいだろう。城の警護も手を抜くわけにいかないしな」と王が言って、会議は終った。

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