いつも、隼斗(はやと)

矢野 零時

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15お見合い写真

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 その日は日曜日。
 ドアを軽くたたく音がした。
「はあい」と、私が声をあげると、私の部屋に母が入ってきた。
「なあに、お母さん?」 
「お父さん、前よりも体が弱くなってきているのよ」
 私は思わず額にしわをつくっていた。確かに、父は人工透析を行うために専門病院に通い続けている。その上、今では母の助けを借りないで、車椅子にすわれなくなっていた。
「お父さん、あんたのことを心配しているわ。いつまでも、結婚をしないから」
「結婚したい人が見つからないんだから、仕方がないでしょう?」
「何を言っているの。私が何度も写真を持ってきて、お見合いを進めているでしょう。その人たちは結婚をしてもいいと思っている人たちよ。そんな人たちに会いもしないで、偉そうなことをいわないでよ」
 私は黙るしかない。そんな私を見ながら、脇に抱えてきた風呂敷で包んだ物を取り出していた。それは、新しいお見合い写真だった。私は、すぐに母に横顔を見せた。写真を見ないようにするためだ。
「お父さんが生きているうちに結婚をして欲しい。それが、お父さんにできる親孝行だと思うの」
 私の胸は痛んだ。そうなのだ。隼斗ぐるいをしている私は両親に心配をかけ続けてきている。私が写真を見ようとしないものだから、母は大きなため息をついていた。
「後で見るわ。だから、上にあげておいて」
 私は右手をあげて見せた。母は、もう一度ため息をつくと立ちあがり、私の部屋から出て行った。一人になったおかげで、私は冷静になっていた。そう、私も決断をしなければならない時期にきているのだ。積み上げられていた見合い写真の一番上におかれた写真を手にとると、それ開いた。
 名前は、黒木輝夫。知らない名前だ。写真の男は背広を着て、真面目ぶった顔をしていた。下手な写真家が撮ったとしか思えない。でも、いいところもあった。私が好きな隼斗に顎や眼が似ている。母は、私の好みにあう男を捜してくれていたのだろう。
 手にしていた写真を積み上げられている見合い写真の束の上にのせると、私は部屋中を見回していた。どの壁にも、隼斗の写真がはられている。お見合いをして結婚をすることになって、新しく夫になる者が、壁に隼斗の写真を張っていることを許してくれるだろうか?
 本箱の方を見る。棚に何冊もの隼斗の写真集がびっしりと立てられ、本箱の上にも写真集が置かれている。それも保存版を一冊、普段見るために一冊として、少なくとも二冊づつ買ってきていた。それに、ディスクは別ラックに百枚はある。
 もし、新しい夫がこんなものを置いておくのがいやだと言ったら、捨てなければならないことになる。いや、できない。そんなことはできそうにない。これらの物を大きな木箱にいれて、保管を専門にしている倉庫業の倉庫に保存してもらうしかない。 
 私は部屋の中をゆっくりと見回していた。
 夫になってくれる人が、そんなことをする私を許してくれるのだろうか?
 私は首を傾げ続けていた。
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