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7前王女の軌跡
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シルビアはギルドにいくたびに大ウサギ退治を希望し、大ウサギ退治をし続けていた。それは数をこなせば、魔法エネルギーを増やし続けることができるからだ。だが、ギルドにくる多くの冒険者たちも大ウサギ退治を希望する者が増えていた。それは、冒険者が簡単に退治できる物がほとんど無くなっていたからだ。だから、シルビアの申し出は、すぐに受け付けられなくなった。順番が廻ってくるのはいつなのか、まるで分らない。ともかく一週間後に改めて来てくださいとギルドの受付嬢に言われてしまった。
空いた時間を、シルビアは自分を知ることに使おうと考えた。この世界にいる魔法王女の過去は自分の過去のはずなのだが、果歩だった時の記憶のあるシルビアは、その頃のことをよく覚えてはいなかったのだ。
そこで、朝食を食べると、すぐに城の中で王女のことを知ることができる場所にいきたいと思い、ロダンに相談をした。
「それならば、宮殿内にある図書館にいかれるのがよろしいかと思いますぞ」
ロダンに、そう言われたので、シルビアは立ちあがった。すると、シルビアの後についてロダンとトムが来ようとした。
「たまに、一人で動いてみたいわ」
「なるほど、しかし、なにがあるか分かりませんぞ。そこで私らは魔法袋の中に隠れております。いざという時には魔法袋を開けて声をかけてくだされ、すぐにシルビアさまのいる所にでてまいります」
「そんなことができるの?」
すると、ロダンは、腰につけていた魔法袋をはずし、それに長い紐をつけてショルダーバッグに作り替えていた。
「これを肩にかけておいてくだされ」
言われるままに、シルビアはそれを肩にかけた。その後、ロダンが魔法袋を開けると、トムはすぐにその中に飛びこんだ。
「私も飛び込みますぞ。この後、袋は閉じてくだされ。なにかあれば、袋を開いて、声をかけていただけば、わたしらはふたたびシルビアさまの元にやってまいりますぞ」
そう言ってロダンも魔法袋の中に飛び込んでいった。袋の中を覗くと袋の中は暗く何も見えない。袋を閉じると二人が入っているのに魔法袋に人の重さなど感じさせもしない。
シルビアは王女の部屋を出ると左や右に曲がりながら通路を歩いた。やがて月の女神のレリーフが施された柱で作られた図書館の正門が見えてきた。
重厚な戸を押して開くと、「王女さま、いらっしゃいませ」と、本棚に並んでいた本の塵をはたきではらっていた男が声をかけてきた。図書館専属の執事だ。
男は鳥の羽のように広がったカイゼルひげを鼻の下にはやしていた。頭部は白髪で高齢であることは明らかだった。
「何か、読みたい本でもございますかな?」
「いえ、そうだ。前に私が読んでいた本を久しぶりに読み返してみたいわ」
「そうでしたか。あちらの棚とか、そちらの棚の本をよく読んでいたように記憶いたしておりますが。他にもいい本がございます。いつものようにお好きな本を手に取ってお読みください。私はカウンターテーブルのそばにお立ち申し上げております」
そう言った男はカウンターテーブルのある壁際に引き下がっていた。シルビアは室内を見廻した。四面すべてが、天井まで棚があり、それに本がすきまなく置かれている。上の本が取れるように、階段上の踏み台が置かれていた。シルビアは一度部屋を歩き、本棚にどんな本が置かれているのか見て廻った。その中に何度も取り出されて読まれたと思われる本をみつけることができた。それはシルビア王女の父ジョンが書いた回顧録であった。
そこには、ダランガ国が他の国から攻められて、それを迎え撃つために、ジョンが何度も兵を引き連れて、戦いにでていった話が書かれていた。戦の記録は、困難さと悲壮感に満ち満ちていたのだ。
前の王女はそれを何度も読んでいたに違いなかった。本棚には王女が書いた日記も残されていた。それには、父である王が亡くなった後に、攻めてくる軍団に対して、少数の兵士といっしょに王女が必死に国を守っていたことが書かれていた。そのために、魔法力を必死に磨いてレベルをあげ、また魔法道具を収集し、それを使って国を守っていたのだった。
日記の中で、秋月祭の時に王女が火薬玉を飛ばし、それを粉々にして花火にすることの起源についても書かれていた。
敵国が巨人のタイタン族を味方にして、投石器で大岩を、ダランガ国に打ち込んだことがあった。王女は城からでて街中に立ち、飛んでくる大岩を火力で粉砕をして国を守ったのだ。王女によって破壊された岩は粉々になり、火花となって空に消えていった。その戦いに勝ったその年の秋月祭の時に、花火師が子供の頭大の花火玉を空に飛ばし、王女に火力をあてさせたのだ。花火玉は夜空に広がり、その美しさに誰もがその夜を忘れないものになった。翌年からこれをすることが秋月祭のしきたりになり、火薬玉はどんどん大きくなり、今では二メートルの大きさになっていたのだ。
前の王女も魔法力のレベルをどれも4まで苦労をしてあげていたことが書かれていた。それができれば、秋月祭で火薬玉を火力で花火に変えることができる。だから、火力と風力をレベル4まで上げることをまず目標にしなければならない。
「シルビアは努力の人だった。努力をしていたから魔法王女として頑張れた。世界は違っていたけれど、私だって同じよ。頑張って生きてきたわ。転生してきても、私は努力をするつもりよ。それに今度は私には運がついているのですもの」
果歩だったシルビアは大きくうなずいていた。
空いた時間を、シルビアは自分を知ることに使おうと考えた。この世界にいる魔法王女の過去は自分の過去のはずなのだが、果歩だった時の記憶のあるシルビアは、その頃のことをよく覚えてはいなかったのだ。
そこで、朝食を食べると、すぐに城の中で王女のことを知ることができる場所にいきたいと思い、ロダンに相談をした。
「それならば、宮殿内にある図書館にいかれるのがよろしいかと思いますぞ」
ロダンに、そう言われたので、シルビアは立ちあがった。すると、シルビアの後についてロダンとトムが来ようとした。
「たまに、一人で動いてみたいわ」
「なるほど、しかし、なにがあるか分かりませんぞ。そこで私らは魔法袋の中に隠れております。いざという時には魔法袋を開けて声をかけてくだされ、すぐにシルビアさまのいる所にでてまいります」
「そんなことができるの?」
すると、ロダンは、腰につけていた魔法袋をはずし、それに長い紐をつけてショルダーバッグに作り替えていた。
「これを肩にかけておいてくだされ」
言われるままに、シルビアはそれを肩にかけた。その後、ロダンが魔法袋を開けると、トムはすぐにその中に飛びこんだ。
「私も飛び込みますぞ。この後、袋は閉じてくだされ。なにかあれば、袋を開いて、声をかけていただけば、わたしらはふたたびシルビアさまの元にやってまいりますぞ」
そう言ってロダンも魔法袋の中に飛び込んでいった。袋の中を覗くと袋の中は暗く何も見えない。袋を閉じると二人が入っているのに魔法袋に人の重さなど感じさせもしない。
シルビアは王女の部屋を出ると左や右に曲がりながら通路を歩いた。やがて月の女神のレリーフが施された柱で作られた図書館の正門が見えてきた。
重厚な戸を押して開くと、「王女さま、いらっしゃいませ」と、本棚に並んでいた本の塵をはたきではらっていた男が声をかけてきた。図書館専属の執事だ。
男は鳥の羽のように広がったカイゼルひげを鼻の下にはやしていた。頭部は白髪で高齢であることは明らかだった。
「何か、読みたい本でもございますかな?」
「いえ、そうだ。前に私が読んでいた本を久しぶりに読み返してみたいわ」
「そうでしたか。あちらの棚とか、そちらの棚の本をよく読んでいたように記憶いたしておりますが。他にもいい本がございます。いつものようにお好きな本を手に取ってお読みください。私はカウンターテーブルのそばにお立ち申し上げております」
そう言った男はカウンターテーブルのある壁際に引き下がっていた。シルビアは室内を見廻した。四面すべてが、天井まで棚があり、それに本がすきまなく置かれている。上の本が取れるように、階段上の踏み台が置かれていた。シルビアは一度部屋を歩き、本棚にどんな本が置かれているのか見て廻った。その中に何度も取り出されて読まれたと思われる本をみつけることができた。それはシルビア王女の父ジョンが書いた回顧録であった。
そこには、ダランガ国が他の国から攻められて、それを迎え撃つために、ジョンが何度も兵を引き連れて、戦いにでていった話が書かれていた。戦の記録は、困難さと悲壮感に満ち満ちていたのだ。
前の王女はそれを何度も読んでいたに違いなかった。本棚には王女が書いた日記も残されていた。それには、父である王が亡くなった後に、攻めてくる軍団に対して、少数の兵士といっしょに王女が必死に国を守っていたことが書かれていた。そのために、魔法力を必死に磨いてレベルをあげ、また魔法道具を収集し、それを使って国を守っていたのだった。
日記の中で、秋月祭の時に王女が火薬玉を飛ばし、それを粉々にして花火にすることの起源についても書かれていた。
敵国が巨人のタイタン族を味方にして、投石器で大岩を、ダランガ国に打ち込んだことがあった。王女は城からでて街中に立ち、飛んでくる大岩を火力で粉砕をして国を守ったのだ。王女によって破壊された岩は粉々になり、火花となって空に消えていった。その戦いに勝ったその年の秋月祭の時に、花火師が子供の頭大の花火玉を空に飛ばし、王女に火力をあてさせたのだ。花火玉は夜空に広がり、その美しさに誰もがその夜を忘れないものになった。翌年からこれをすることが秋月祭のしきたりになり、火薬玉はどんどん大きくなり、今では二メートルの大きさになっていたのだ。
前の王女も魔法力のレベルをどれも4まで苦労をしてあげていたことが書かれていた。それができれば、秋月祭で火薬玉を火力で花火に変えることができる。だから、火力と風力をレベル4まで上げることをまず目標にしなければならない。
「シルビアは努力の人だった。努力をしていたから魔法王女として頑張れた。世界は違っていたけれど、私だって同じよ。頑張って生きてきたわ。転生してきても、私は努力をするつもりよ。それに今度は私には運がついているのですもの」
果歩だったシルビアは大きくうなずいていた。
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