刑事殺し・トラブル・ 抗争の渦

矢野 零時

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7襲撃

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 俺たちが病院に泊まりだしてから四日が経っていた。相内の言うようにこのままでいけば気楽な仕事だったかもしれない。だが、そうはいかなかった。
 その日(六月十四日)、朝からどんよりと雲っていて、何か起きそうな感じだった。
昼下がりにカモメ診療所の前をふらつくように歩く男が現れたのだ。すぐに暴対課員たちはジュラルミンの盾を立て身構えた。男はどんどんと近づいてくる。暴対課員たちの前に来ると、男は背中に背負っていた物をゴルフクラブのように前に出した。だが、それはゴルフクラブではなかった。機関銃だったのだ。男は乾いた音をたてて、暴対課員たちを撃ち出した。盾で身を防いだ者もいたが、盾の隙間から入り込んだ銃弾を浴びて倒れる者も出ていった。
 俺は入院室につけられた丸窓からそれを見ることができた。
「やばいな」と俺が声をあげた時、暴対課員の撃った銃弾が当たったのか、機関銃を手にしていた男はのけぞるように倒れて行った。
 すぐに本庁の捜査一課が動いた。これを契機に十連会の関与を立証できれば、十連会の者たちを一挙に逮捕できるはずだった。だが、この男は精神病院から退院したばかりの男で、十連会との関係を捜査一課は見つけることができなかったのだ。
 それに、この襲撃では、待合室になんの影響もなかった。だから、次の日から患者はいつも通りにやってきていた。
 
 だが、襲撃は一度ですまなかった。
 その日(六月二〇日)は、雲一つなく、青い空が広がっていた。
 突然、爆音が近づいてくる。カモメ診療所前に並んでいた暴対課員のめんめんは顔を強張らせていた。やがて、爆音は高まりその正体を現した。
 爆音をたてていたのは、オートバイだったのだ。それも大型のハーレーやホンダ、何台も列をなしていた。黒いレーザーのツナギを着こみヘルメットをかぶっているので、誰がのっているのか、まるでわからない。後部座席に乗っていた者たちが、カモメ診療所に向かって火炎瓶を投げだした。
 火炎瓶は暴対課員たちの上に落ち、彼らを火だるまにした。喫茶店風な出入口の前にも火炎瓶は落ち木製のドアを燃やした。暴対課員たちは消火器を持ち出し、火の付いた者たちや出入口の火を消し続けていた。さすがに、待合室にいた患者たちはドアの窓ガラス越しに火を見て恐怖の叫び声をあげていた。
 走り去ったオートバイたちは、ふたたびカモメ診療所の前に戻ってきた。だが、先頭を走ってきたのは軽トラックだった。
 軽トラックは荷台に分厚い木板をのせていた。その板は道路に引きずるくらい長く、トラックの運転席にかぶり針金でしっかりと固定されていた。
 そのトラックがカモメ派出所を前にとまったのだ。その後ろを走ってきたオートバイはスピードを目いっぱいあげると、トラックの木板に向かった。すると、木板はオートバイを押し上げ、空に飛ばした。オートバイのライダーは空に飛ばされる前にオートバイから飛び降りていた。飛んだオートバイはカモメ診療所の壁に激しくぶつかり、大きな音をたてた。すぐに壊れたオートバイは燃え上がり建物の壁を焼いていった。
 そして、オートバイは一台ではない。何台ものオートバイが次々に空を飛んで建物の壁を襲ったのだ。やがて、壁の前に火のついたオートバイの山ができあがっていた。
 ぶつかった激しい音や垣間見える炎は待合室にいた患者たちを怯えさせることになった。
 成宮は患者を大事にする人だ。すぐに診察室から出てきて、待合室にいる患者たちを誘導し始めた。病院関係者が出入りする裏口に患者たちを案内していった。俺たちは、成宮に協力して、患者たちに付き添い、カモメ診療所から逃げださせたのだった。
 オートバイの襲撃は、ふたたび本庁の捜査一課を動かすことになった。だが、今回も十連会との関係を捜査一課は、つかむことができなかったのだ。オートバイで襲撃をした連中は、たんなる暴走族の髑髏団であり、はねっかえり者たちが行動をしただけとなってしまった。

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