王子だって、一体どうなるのか?物語

矢野 零時

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第5話従者 1 見聞録を初めて記載

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 村長が案内をしてくれた部屋は大きな部屋だった。窓側に大きなベッドが置かれていた。ベッド前には、平テーブルを中心にソファが左右に置かれていた。つまり、応接セットがあった。さらにクロゼットや鏡台もあって、その傍にサイドテ―ブルも置かれている。
「客用の寝室はここしかないもので、二人でつかっていただけませんかな」と言って、村長は頭をさげた。
 これ以上、村長に気を使わせる気はない。それにしても、花音と同じ部屋とは。どうやら、村長は花音を忠司の嫁扱いをしているようなのだ。
「ありがとう。お休みなさい」
 忠司がそう言うと、村長は安心をしたように、うやうやしく頭をさげてドアをしめていった。やがて足音がだんだんと聞こえなくなった。
「忠司、様。レディーファーストでしょ。私はベッド。忠司、様は、ソファね」
「えっ、俺、王子だよ」
 忠司の抗議など全然聞いていない。
「着替え、見ないでね」
 そう言われると、顔をそむけるしかない。つかの間、花音はクロゼットを開け、パジャマを出して着替えていた。
 忠司が振り返った時には、花音は掛け布団を胸までかけ、イビキをかきだしていた。疲れているんだと思う。本当は忠司も疲れているが、体が興奮をしてしまっていて、疲れが眠気になってくれない。
 しかたがない。ノラに王子として生きると約束をしてしまっている。
 忠司は鏡台の前にあった丸椅子をサイドテーブルの前に置いた。次に、背負っていたリュックから見聞録とボールペンをだして、丸椅子にすわった。
 何をするか、もう分かっただろう。
 忠司は見聞録を書くことにしたんだ。まず白いページを開いた。

 でも、困ったな。どんなふうに書いていいのか、まるで分らない。夏休みに出された宿題、本を読んでの感想文だって、優・良・可・不可のうち、可より上の評価はもらったことはない。
 では、どうするか、一行目は?
 私は、違うな。ぼくはも、ふだん使っていない。やっぱり、俺は、だな。というか、この書き出しでないと、文章になっていかない。
 そう思った忠司はボールペンを手に書き出した。

 俺は、日本からヒューム国にやってきた。お供は花音だ。むこうでは同級生。こちらでは、戦士だ。やって来たのはいいが、ヒューム国に出た所は、小屋の中だった。小屋の周りは獣人たちがたむろしていた。しかし、小屋にいては、父であるリチャード国王を助けることができない。小屋を飛び出し、まわりにいる獣人たちを倒した。

 シンプルだけど、これでいいよな。少し書きたすか?

 花音も頑張ってくれた。

 次のページを開いた忠司は「あっ」と、声をあげていた。そこには、すでに忠司の現況が書かれていたからだ。つまり、この見聞録も、只者でなかった。忠司の能力や体調を自動記録し、忠司に知らせる機能も持っていたのだ。それを読みながら、忠司はコメントを書いてみた。

  (身長)167センチ ここにきただけなのに、2センチ伸びている。
  (体重)58キロ  2キロ、減っている。やっぱし、これだけ動けば減るよな。
  (体力)
  生命値 110   一割増えているが、だからどうなんだろう?
   筋力 レベル2  重たい物を持てるようになったかな?
   速さ レベル5  確かに、剣を持てば、普段の倍以上に動くことができている。
  (魔法)
   火力 レベル0 
   冷力 レベル0
   水力 レベル0 魔法は一度も使ったことがないからレベル上らないのかな?
           でも、使い方もわからないからなあ。
   召喚魔法レベル1(三分間しか呼び寄せることはできない。)
            もっと、長い方がいいな。しかし、まだ使ったことはない。
  (武具)
   オリハルコンの剣 たしかに長くしたままになっているな?

 ここまで、書いた見聞録を読んでいると、さすがに忠司も眠気に襲われ出した。見聞録を箱にいれて、それをさらにリュックにいれた。その後、服を脱ぐこともしないで、ソファで寝た。






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