王子だって、一体どうなるのか?物語

矢野 零時

文字の大きさ
19 / 40

第8話馬鹿 1 めんどうくさいな~

しおりを挟む
 忠司は「よかった」と思わず花音に声をかけてから、ビルの方を見た。それはビルが腕を組み出し、難しい顔をしていたからだ。
「どったの?」
「王子さま、第三駐屯地の獣人は不死身で、全戦全勝だったと聞こえております」
「だから、どうしたというのさ?」
「不死身ですよ。簡単にやられすぎだとは思いませんか?」
「でも、むかってくるやつら、もういないよ」
 そう言いながら、忠司は立ち並んでいるテント小屋を見回していた。どこからも出てくる者がいない。
「俺、そもそも、第三駐屯地のこと、よく知らないし」
「第三駐屯地の隊長ボネは、何度も負けそうになった第三駐屯地の隊員たちをよがえらせたと言われているんです」
「ふ~ん。じゃ、ボスキャラがいて、そいつがまだ生きていると言いたいわけね」
 ビルは大きくうなずいている。
「めんどうでも、テントの中を見て歩かないとだめだということね」
「王子さま、そういうことでございます」
 ビルは忠司が自分の意見を聞いてくれたと思い、先に立って歩き出した。後についていくしかない。花音は、しおらしく二人の後についてくる。
 近づいてみるとテント小屋の大きさに忠司は驚かされた。普通の家ぐらいの大きさが十分にある。これだから、たくさんの獣人がいることができたんだ。忠司たちが、テント小屋の中に入ると、真ん中に囲炉裏があって、北側の方に、たくさんの生ハムやソーセージがつるされていた。
「これは、もともとはハルカ村にあったものだろう?」
「いや、ソーセージの形が違います。他の村から、奪ってきた物だと思いますね」と、ビルが言った。
「馬は草を食っているもんだろう。肉をこんなに食べたがるのかね?」
 思わず、忠司は嫌味を言ってしまう。
「武器もたくさんあるぞ」
 木枠のハンガーが作られ、そこには、いろんなタイプの剣や槍がつるされていた。
 他のテント小屋にも入ってみた。やはり、たくさんの肉がつるされ、そこには野菜や果物が箱で置いてあった。
 さらに、別のテント小屋に入ると、そこにも、生ハムやソーセージがつるされている。忠司は天井から下がっていたソーセージを引き下ろして、それを食べながら言った。
「そうだ。これだけの食べ物や武器はハルカ村に運んでいった方がいい。このままでは、もったいないよ。ここに置きっぱなしにしてたら、後からきた獣人たちに持っていかれるだけだろう」
「えっ、たしかにそうですが。じゃ、馬車の馬をお借りして、まずは急いで一度、村に帰ります。そして、馬車三台をつれて戻ってきますよ」
「そうだな。それがいい。それまで、俺たちが、ここで見張っているよ」
 そばで花音もうなずいた。
 ビルは二人に向かって手をあげ、嬉しそうにテント小屋から飛び出していった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...