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イバラの森大戦
16 見回り
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ここにきて、一週間。魔法を使うことに少しだけ自信がついてきました。
そこで、カオルは一日一回、トムと一緒に城の中を見回ることにしました。それは、眠っているオーロラ姫に会いたかったからです。
今日も午後すぐに、トムが声をかけてくれましたので、カオルはネコたちと一緒に、大広間に向かう階段をあがっていきました。
すると、先の方からチューチューという声がしたのです。
この先にはオーロラ姫の寝室があります。トムとカオルは急ぎました。
すると、オーロラ姫の寝室に入ろうとしているネズミに出会ったのです。
カオルは大声をあげていました。
そのネズミは信じられない大きさだったからです。ネコよりも大きくブルドックを思わせる大きさでした。トムは杖を出し、炎を作ると大ネズミに飛ばしました。大ネズミはすばやく炎をよけたので、背中の毛をこがすことしかできませんでした。大ネズミは、すぐにたれさがっているカーテンの後ろに隠れてしまいました。これでは、トムも炎を放つことができません。もし炎を放てば、カーテンに火をつけて、城の中に火事を起こさせてしまうからです。
トムは、もともとネコでしたので、本来のネコに戻って大ネズミに襲いかかって行きました。でも、大ネズミは強く、反対にトムは肩に噛みつかれてしまいました。トムは肩から血を噴き出しながら倒れていきます。トムについてきたネコたちはトムを守ろうとトムを囲んでいました。そんなネコたちに大ネズミは襲いかかり、ネコたちをかじり出したのです。
こうなると、カオルも戦うしかありません。でも、城の中はきれいに掃除がされていますので、小石は落ちてはいません。小石が落ちていれば、それを大ネズミにぶつけることができたのですが。しかたなく、背中に背負っていたホウキをおろし、それを両手でもち大ネズミに向かって振りおろりしました。
ホウキは、魔法使いにとって空を飛ぶための道具ですので、そんな使い方をする人はいません。でも、人を載せて飛べる物ですので、十分に丈夫で固い材質でできています。
たちまち大ネズミの額に傷ができていました。カオルも必死です。何度もホウキで大ネズミを叩き続けましたので、大ネズミの顔は血だらけになっていました。大ネズミは後に退り始め、宮殿のベランダに出て階段をみつけると、いっ気に駆けおりていました。
でも、大ネズミが地面につかないうちに、炎で燃え上がり黒焦げになっていました。小屋の中にいたドナが大ネズミを見つけて小屋の中から炎を放ったからでした。大ネズミを追ってきたカオルたちは小屋から出てきたドナをみつけ、ドナのところに駆け寄っていきました。
「ドナ、トムが大ケガをしてしまったの」
「それは、すぐに病院に運ばないといけないね。シンド、シンドきてちょうだい」
シンドが現れました。
すぐに、カオルはトムが大ネズミにかまれて大けがをしていることを告げました。シンドは、すぐにパチンと指をならしました。すると絨毯が飛んできたのです。風の力で空を飛ぶ魔法の絨毯です。
「カオル、案内をして」
シンドに言われたので、カオルは先に立って走り出しました。その後をシンドがのった絨毯が追ってきます。やがて、倒れているトムの所にカオルはシンドを連れていくことができました。
「大丈夫だよ。すぐに病院に運びますから」と言って、シンドはトムを絨毯の上にのせました。
「すいません。そこのネコたちも運んでやってください」と、トムは必死に声を出していました。シンドは倒れていた五匹のネコたちを抱きあげ絨毯の上にのせながら言いました。
「ネコたちは、もう息をしていない。もしかしたら埋葬をしてあげなければ、ならないかな」
絨毯にネコたちをのせたシンドは、絨毯にのって空を飛び城の庭園に向かっていきました。
すると庭園の一角に豆腐のような白い長方形の建物が浮き出てきたのです。それが病院でした。その建物についている油揚げのような形をした出入口に向かって絨毯は一気に飛んで行きました。
カオルは、飛んでいく絨毯を見つめて、すぐにでもトムのそばに行きたいと思ったのですが、そばにいたトラネコがカオルの足をつついてきます。
「トラネコさん、なあに?」
トラネコは、カオルの顔を見るとニャと鳴きました。
「そうよね。まず、城の中にいる他のネズミたちが悪さをしていないか、見回りをする必要があるわ。油断するところだった」
カオルがそう言うと、トラネコは先に立って歩き出しました。その後を、他のネコたちがついていき、カオルはネコたちの後に続きました。
まずオーロラ姫の寝室に入りました。
オーロラ姫は優しい寝息をたてて静かに寝ていました。ほんのりとピンク色に染まった頬を見ているとカオルは安心をすることができました。
「オーロラ姫さま、ごきげんよう」とカオルは声をかけました。その間、ネコたちはあちらこちらの隙間に近づき鳴き声をあげました。いつも見回りをしているのですが、もしかしたらネズミたちが暗がりにいて、そこを住処にしているかもしれないと考えたからです。でも、かくれているネズミは見つかりませんでした。
次には、王さまたちの寝室です。そこも、カオルたちは見てまわりました。
ネズミたちはいなかったのですが、そのかわりゴキブリが多く隠れていたのです。
ネズミで攻撃するのが難しくなったら、小さな虫になって攻撃しようと考えているのかもしれません。ネコたちはゴキブリを部屋の外へ追い出していました。
「トラネコさん、これからは虫も危険よ。お願いね」とカオルは思わず声をあげました。
その後、見張り台、台所、武器庫や待合室も見て歩きました。でも、怪しい者たちの姿をみつけることはできませんでした。
「トラネコさんたち、ありがとうね」と、カオルがお礼の言葉をのべると、ネコたちは再び自分の持ち場に戻って行きました。
そこで、カオルは一日一回、トムと一緒に城の中を見回ることにしました。それは、眠っているオーロラ姫に会いたかったからです。
今日も午後すぐに、トムが声をかけてくれましたので、カオルはネコたちと一緒に、大広間に向かう階段をあがっていきました。
すると、先の方からチューチューという声がしたのです。
この先にはオーロラ姫の寝室があります。トムとカオルは急ぎました。
すると、オーロラ姫の寝室に入ろうとしているネズミに出会ったのです。
カオルは大声をあげていました。
そのネズミは信じられない大きさだったからです。ネコよりも大きくブルドックを思わせる大きさでした。トムは杖を出し、炎を作ると大ネズミに飛ばしました。大ネズミはすばやく炎をよけたので、背中の毛をこがすことしかできませんでした。大ネズミは、すぐにたれさがっているカーテンの後ろに隠れてしまいました。これでは、トムも炎を放つことができません。もし炎を放てば、カーテンに火をつけて、城の中に火事を起こさせてしまうからです。
トムは、もともとネコでしたので、本来のネコに戻って大ネズミに襲いかかって行きました。でも、大ネズミは強く、反対にトムは肩に噛みつかれてしまいました。トムは肩から血を噴き出しながら倒れていきます。トムについてきたネコたちはトムを守ろうとトムを囲んでいました。そんなネコたちに大ネズミは襲いかかり、ネコたちをかじり出したのです。
こうなると、カオルも戦うしかありません。でも、城の中はきれいに掃除がされていますので、小石は落ちてはいません。小石が落ちていれば、それを大ネズミにぶつけることができたのですが。しかたなく、背中に背負っていたホウキをおろし、それを両手でもち大ネズミに向かって振りおろりしました。
ホウキは、魔法使いにとって空を飛ぶための道具ですので、そんな使い方をする人はいません。でも、人を載せて飛べる物ですので、十分に丈夫で固い材質でできています。
たちまち大ネズミの額に傷ができていました。カオルも必死です。何度もホウキで大ネズミを叩き続けましたので、大ネズミの顔は血だらけになっていました。大ネズミは後に退り始め、宮殿のベランダに出て階段をみつけると、いっ気に駆けおりていました。
でも、大ネズミが地面につかないうちに、炎で燃え上がり黒焦げになっていました。小屋の中にいたドナが大ネズミを見つけて小屋の中から炎を放ったからでした。大ネズミを追ってきたカオルたちは小屋から出てきたドナをみつけ、ドナのところに駆け寄っていきました。
「ドナ、トムが大ケガをしてしまったの」
「それは、すぐに病院に運ばないといけないね。シンド、シンドきてちょうだい」
シンドが現れました。
すぐに、カオルはトムが大ネズミにかまれて大けがをしていることを告げました。シンドは、すぐにパチンと指をならしました。すると絨毯が飛んできたのです。風の力で空を飛ぶ魔法の絨毯です。
「カオル、案内をして」
シンドに言われたので、カオルは先に立って走り出しました。その後をシンドがのった絨毯が追ってきます。やがて、倒れているトムの所にカオルはシンドを連れていくことができました。
「大丈夫だよ。すぐに病院に運びますから」と言って、シンドはトムを絨毯の上にのせました。
「すいません。そこのネコたちも運んでやってください」と、トムは必死に声を出していました。シンドは倒れていた五匹のネコたちを抱きあげ絨毯の上にのせながら言いました。
「ネコたちは、もう息をしていない。もしかしたら埋葬をしてあげなければ、ならないかな」
絨毯にネコたちをのせたシンドは、絨毯にのって空を飛び城の庭園に向かっていきました。
すると庭園の一角に豆腐のような白い長方形の建物が浮き出てきたのです。それが病院でした。その建物についている油揚げのような形をした出入口に向かって絨毯は一気に飛んで行きました。
カオルは、飛んでいく絨毯を見つめて、すぐにでもトムのそばに行きたいと思ったのですが、そばにいたトラネコがカオルの足をつついてきます。
「トラネコさん、なあに?」
トラネコは、カオルの顔を見るとニャと鳴きました。
「そうよね。まず、城の中にいる他のネズミたちが悪さをしていないか、見回りをする必要があるわ。油断するところだった」
カオルがそう言うと、トラネコは先に立って歩き出しました。その後を、他のネコたちがついていき、カオルはネコたちの後に続きました。
まずオーロラ姫の寝室に入りました。
オーロラ姫は優しい寝息をたてて静かに寝ていました。ほんのりとピンク色に染まった頬を見ているとカオルは安心をすることができました。
「オーロラ姫さま、ごきげんよう」とカオルは声をかけました。その間、ネコたちはあちらこちらの隙間に近づき鳴き声をあげました。いつも見回りをしているのですが、もしかしたらネズミたちが暗がりにいて、そこを住処にしているかもしれないと考えたからです。でも、かくれているネズミは見つかりませんでした。
次には、王さまたちの寝室です。そこも、カオルたちは見てまわりました。
ネズミたちはいなかったのですが、そのかわりゴキブリが多く隠れていたのです。
ネズミで攻撃するのが難しくなったら、小さな虫になって攻撃しようと考えているのかもしれません。ネコたちはゴキブリを部屋の外へ追い出していました。
「トラネコさん、これからは虫も危険よ。お願いね」とカオルは思わず声をあげました。
その後、見張り台、台所、武器庫や待合室も見て歩きました。でも、怪しい者たちの姿をみつけることはできませんでした。
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