カオル、白魔女になります!

矢野 零時

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イバラの森大戦

19 戦闘準備

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 カオルがいま魔法を学んでいる理由は、オーロラ姫を守るためです。
 
 カオルの得意な魔法は小石に念をかけて飛ばすことです。必ず相手に当てることができれば、りっぱな武器になります。
 そこで、シンドの教室に通って、小石飛ばしの訓練にはげみました。やがて、カオルの熱意のせいか、飛んでいく小石は野球の投手が投げる球と同じくらいのスピードで飛ばして相手にあてることができるように成っていきました。

 でも、シンドは、カオルにホウキで空を飛ぶこともできるようになって欲しかったのです。そこで自分の教室に来るときは、必ずホウキを持ってくるように言っていました。カオルもシンドの言うことを聞いて、ホウキを必ず持って教室にやってきました。
 そのおかげで、自転車にのっているような高さまで浮きあがれるようになりました。でも、動くことはでません。それでも、そのことを一番喜んでくれたのはシンドでした。

 オードリみたい強い敵と戦うには、やはり炎の魔法も使えるようにしておかなければなりません。
 カオルは、得意ではありませんが、その訓練をドナの指導を受けて一生懸命練習をしました。もちろん、杖先に火弾砲を付けての訓練です。それをさせてもらえば、杖の先に炎をともすことができ、それを的に向かって飛ばすことができます。後は、的に間違いなくあてることです。

 カオルは、トムの手伝いも続けていました。
 トムは町から連れて来たネコたちを見回り役として育てあげようと思っていました。そこで、エルザにたのんで、ネコたち全部を人にしてもらったのです。でも、子ネコだったのを、無理して人にしましたので、五匹は小さな子供たちになってしまいました。元々はネコですから、三月もすれば、すぐに大人になるのは分かっていますが、それまでの間、カオルが世話をすることになりました。
 幼い子たちの世話をすることは、昨年の暮れに叔父さんが連れて来た子供らを相手にした以来です。
 
 三月がたち子供たちも大人になりましたので、人になったネコたちが共同して戦う訓練をトムは始めました。ネコたちは手に剣を持って何度もふっています。

 頑張るネコたちを見ていたカオルはトムに疑問に思っていたことを相談しました。
「オードリは人でもネコでも石にしてしまえる魔法を使えるのでしょう。それにはどうしたらいいのかしら?」
「ぼくには、分からないよ。対策はサラに考えてもらうしかない。でも、サラでも手ごわい相手みたいだけどね」
「私たちで、おばあさんを助けてあげることができないのかしら?」
「う~ん。まず石化とはどんなことなのか知らないとだめだね。図書室に行って調べてみる? 調べることができなければ、サラに聞いてみるしかないけど」
「ともかく、おばあさんの部屋の行ってみましょう。でも、前におばあさんの部屋を覗きに行ったけど、本なんかおいてなかったわ」
「それはね。サラの部屋に入る前に、本を読んで調べたいと思って部屋に入ると、そこは図書室になっているんだよ」
「そうなの。前に行った時には、何も考えていなかったものね」

 さっそく、カオルとトムは小屋に行き、おばあさんの部屋に入りました。
 二人は本で調べたいと思って部屋に入りましたので、壁じゅうが本棚になっていて、天井まで本が並んでいました。部屋の中央には丸いテーブルが置かれ、その周りにパイプイスが置かれていました。読みたい本や調べたい本をみつけたら、テーブルに置いて本を見ることができるようになっていたのです。
 でも、見たい本をどうやって探せばいいのでしょうか?
「ぼくは、ここに来たことがあるから、よく知っているよ。こうすればいいんだ」
「どうするの?」
「読みたい本や調べたいことをここで思えば、いいだけだよ」
「そんな簡単な方法でいいの?」
「そうだよ」と言ったトムは、テーブルの上に手を置いて、目をつぶっていました。すると、本棚から一冊の本が飛び出てきて、トムが手を置いたテーブルの上にのりました。
「この本に、ぼくたちが知りたいことが書いてあるよ」
「本の題名はメデューサと書かれているわ」
 しばらくの間、二人は本を開き、並んで黙読をしていました。
 本には、次のようなことが書かれていたのです。

 メデューサは、メデューサを見ただけで見た人を石にかえてしまう力を持つ怪物です。
 メデューサはもともとは美少女であったのですが、海神ポセィドーンと女神アテナの神殿であっていると女神アテナの怒りをかって怪物にされてしまったのです。ギリシャの英雄ペルセウスに退治された後、その血は生の血と死の血に分けて賢者アスクプレオスに預けられました。死の血から作られた薬に指を付け、その指を目のように人や動物に向けると光が出て、それらを石に帰ることができるそうです。

「え、これ、ほんとのことなの?」と言って、カオルは眉を寄せて、額に八の字を書きました。
「ともかく、ぼくらは、石に変えられた女神さまたちを見ているからね」
 そんなトムの言葉にカオルはうなずくしかありません。
「ともかく、ネコたちには盾を持たせるよ。さっそく、シンドに頼んで鉄の盾を作ってもらおう。石化光線をオードリが発したときに盾をかかげて身を守るしか方法がないようだね」
 カオルは再びうなずいていました。
 

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