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天空魔人グール
3 町立図書館
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日曜日がきました。
その日は、おかあさんもコンビニの仕事が休みの日でしたので、お父さんの車で三人いっしょに図書館に行きました。
図書館は春香町役場のそばにある鉄筋コンクリートの建物でした。市役所と合同で使える駐車場に車を入れると三人で図書館に向かいました。
図書館の中は静かで、真正面のところにカウンターがあって、そこに図書館員の女の人がすわっていました。お父さんはお母さんとカオルを連れてすぐに女の人に近づきました。本を借りることができる図書カード(貸出券)を作ってもらうためです。女の人の話では、町内では小学校以下の歳の人は本人がここに来てくれるだけで図書カードは作ってくれるそうです。中学生以上の人は住所と名前を証明できる物を持ってくればいいそうです。お父さんは役場からもらってきた住民票を女の人に渡していました。これに住所と家族みんなの名前が書いてあるからです。後はそれぞれ個人貸出登録申込書に記載をして女の人に提出しました。
すぐに図書カードをお父さん、お母さん、そしてカオルも持つことができました。
これで好きな本を借りることができます。
お父さんもお母さんも自分で読みたい本を借りたのですが、家に持って帰る前に閲覧室に行ってその本を読み始めていました。
お父さんやお母さんと別れたカオルは児童図書の置いてある本棚の方に行ってみました。本を選んで家に持って帰ってから、ゆっくりと読もうと思ったからです。宮沢賢治の本の一冊を取ろうとしたときに他の人の手が伸びてきました。思わずカオルの手と触れてしまった手の持ち主の方に顔を向けました。
カオルと同じ年ごろの女の子でした。
「ごめんなさい。この本、あなたがとろうとしていたんですものね」
「いいのよ。その本にまだ決めてなかったもの。どうぞ、どうぞ」
「ほんとう私が借りていいの?」
カオルはにっこりと笑ってみせました。
「もしかしたら、あなたも夏休みの宿題は、宮沢賢治なの?」
「そうらしいよ」
「そうらしいって、学校の先生からお話があったのでしょう?」
「夏休みの間に転校してきたばかりで、まだ新しい学校に通っていないのよ」
「通っていない学校なのに、そこの宿題をやるの。すごいのね!」
何かわからないけれど、彼女に感動を与えてしまったようでした。
「私、加藤カオル。夏休みが終わったら鐘鳴小学校に行くことになるの。よろしくね」
「鐘成小学校ですって! 私が行っている学校よ。じゃ、学校で顔あわせをするわね。私は岩崎珠代」
珠代は,ここにきて一番最初の友達になりました。
「カオルは自由研究どうするか決めたの?」
「去年は、折り紙でいろんな物を作って、それを台紙に張って出したわ」
「すてきじゃない!」
「でも、やっぱり迫力がないのよね」
「私、今年は、それをやってみるわ。そのアイデア貰ってもいい?」
「いいわよ。珠代は去年何を作っていたのかしら?」
「去年はね。恐竜の歴史を絵に描いてアルバムにしたのよ」
「それ、いいわ。私も恐竜を題材にしてみるかな?」
珠代は笑いながら本を手にすると、カオルから離れていきました。でも、残念ながら、カオルは借りる本を決められなかったのでした。
閲覧室に行ってみると、お父さんとお母さんは、真剣な顔をして借りた本を読んでいました。二人とも、あんまり真面目な顔をしていたので、しばらく声をかけることができませんでした。
やがて、カオルに気がついたお父さんは顔をあげました。
「久しぶりに、本を読んだから、疲れたよ」
「そうね。読みだしたら、夢中になってしまうわ」
「そろそろ昼だろう。ここに来る時にラーメン屋を見つけたんだ。ラーメンを食べて帰ろうか?」
思わず、カオルは大声を上げそうになっていました。でも、すぐに口を手で押さえました。ここは図書館であることを思い出したからです。
次の日にもカオルは図書館に行きました。
場所はわかっていますので、カオルはバスに乗って行きました。本を借りたのですが、お父さんたちと同じように図書館の閲覧室に行って読むことにしました。確かに、家で読むよりも話の内容が頭の中に入ってくるように思えました。
カオルが読書感想文用に選んだのは『ヨタカの星』でした。
ヨタカという鳥が阻害され、いじめにあいながらも空の星になる話は、前の学校でいじめに会っていたカオルには、身につまされる内容だったからです。
本を読んだので、カオルは感想文を書くための原稿用紙を買いに街中にある文房具屋に行きました。
文房具屋のショーウィンドーに、パンダやキリンの像が飾られていました。そこで、カオルは店の人に聞きました。
「おじさん、飾っているのは、どうやって作ったの?」
「あれかい。紙粘土だよ。誰でも作れる。置いてある奴は、きみらの先輩が自由研究で作ったのを置いてくれたものだよ」
「へえ、そうなの。私も紙粘土を買っていこうかな?」
「いい自由研究ができるよ」
「ほんとう?」
「でも、紙粘土を買うなら、できあがった後に色を付けるポスターカラーも買っていった方がいいよ」
カオルは、すなおに店主のいう事を聞いて、それらの物を買いました。
でも、家に帰って考えてみるとカオルは紙粘土で何を作るか、考えていなかったことに気がつきました。
始めは、ぬいぐるみのクマをモデルにして、クマを作ろうと思ったのですが、クマはかわいすぎて他の生徒たちも作ってきそうです。
それにカオルにとってのクマは、ぬいぐるいのクマだけで、他に同じ物があるべきでないと思ったのでした。
そこでカオルは図書館に行ってみることにしました。
図書館で絵本や図鑑を見れば、何を作ったらいいのか見つけられそうな気がしたからです。
カオルは図書館でふたたび珠代に会いました。
「あら、こんにちは」
すぐに、カオルは自由研究に紙粘土で何か作ることを考えている話をしました。
「何も決めていないのね。じゃ恐竜を作ってくれないかしら。学校の展示から戻ってきたら、それをちょうだい。本棚に飾りたいわ」
そう言った珠代は、本棚に行って一冊の図鑑をもってきました。
それは恐竜辞典でした。その辞典を開いて、中に描かれた絵を見せながら、珠代はいいました。
「この中のチラノサウルスか、ブロントサウルス、これなら、他の展示にまけないと思うわ」
「わかった。チラノサウルスにする。この怖い顏は私もすきだから」
その日は、おかあさんもコンビニの仕事が休みの日でしたので、お父さんの車で三人いっしょに図書館に行きました。
図書館は春香町役場のそばにある鉄筋コンクリートの建物でした。市役所と合同で使える駐車場に車を入れると三人で図書館に向かいました。
図書館の中は静かで、真正面のところにカウンターがあって、そこに図書館員の女の人がすわっていました。お父さんはお母さんとカオルを連れてすぐに女の人に近づきました。本を借りることができる図書カード(貸出券)を作ってもらうためです。女の人の話では、町内では小学校以下の歳の人は本人がここに来てくれるだけで図書カードは作ってくれるそうです。中学生以上の人は住所と名前を証明できる物を持ってくればいいそうです。お父さんは役場からもらってきた住民票を女の人に渡していました。これに住所と家族みんなの名前が書いてあるからです。後はそれぞれ個人貸出登録申込書に記載をして女の人に提出しました。
すぐに図書カードをお父さん、お母さん、そしてカオルも持つことができました。
これで好きな本を借りることができます。
お父さんもお母さんも自分で読みたい本を借りたのですが、家に持って帰る前に閲覧室に行ってその本を読み始めていました。
お父さんやお母さんと別れたカオルは児童図書の置いてある本棚の方に行ってみました。本を選んで家に持って帰ってから、ゆっくりと読もうと思ったからです。宮沢賢治の本の一冊を取ろうとしたときに他の人の手が伸びてきました。思わずカオルの手と触れてしまった手の持ち主の方に顔を向けました。
カオルと同じ年ごろの女の子でした。
「ごめんなさい。この本、あなたがとろうとしていたんですものね」
「いいのよ。その本にまだ決めてなかったもの。どうぞ、どうぞ」
「ほんとう私が借りていいの?」
カオルはにっこりと笑ってみせました。
「もしかしたら、あなたも夏休みの宿題は、宮沢賢治なの?」
「そうらしいよ」
「そうらしいって、学校の先生からお話があったのでしょう?」
「夏休みの間に転校してきたばかりで、まだ新しい学校に通っていないのよ」
「通っていない学校なのに、そこの宿題をやるの。すごいのね!」
何かわからないけれど、彼女に感動を与えてしまったようでした。
「私、加藤カオル。夏休みが終わったら鐘鳴小学校に行くことになるの。よろしくね」
「鐘成小学校ですって! 私が行っている学校よ。じゃ、学校で顔あわせをするわね。私は岩崎珠代」
珠代は,ここにきて一番最初の友達になりました。
「カオルは自由研究どうするか決めたの?」
「去年は、折り紙でいろんな物を作って、それを台紙に張って出したわ」
「すてきじゃない!」
「でも、やっぱり迫力がないのよね」
「私、今年は、それをやってみるわ。そのアイデア貰ってもいい?」
「いいわよ。珠代は去年何を作っていたのかしら?」
「去年はね。恐竜の歴史を絵に描いてアルバムにしたのよ」
「それ、いいわ。私も恐竜を題材にしてみるかな?」
珠代は笑いながら本を手にすると、カオルから離れていきました。でも、残念ながら、カオルは借りる本を決められなかったのでした。
閲覧室に行ってみると、お父さんとお母さんは、真剣な顔をして借りた本を読んでいました。二人とも、あんまり真面目な顔をしていたので、しばらく声をかけることができませんでした。
やがて、カオルに気がついたお父さんは顔をあげました。
「久しぶりに、本を読んだから、疲れたよ」
「そうね。読みだしたら、夢中になってしまうわ」
「そろそろ昼だろう。ここに来る時にラーメン屋を見つけたんだ。ラーメンを食べて帰ろうか?」
思わず、カオルは大声を上げそうになっていました。でも、すぐに口を手で押さえました。ここは図書館であることを思い出したからです。
次の日にもカオルは図書館に行きました。
場所はわかっていますので、カオルはバスに乗って行きました。本を借りたのですが、お父さんたちと同じように図書館の閲覧室に行って読むことにしました。確かに、家で読むよりも話の内容が頭の中に入ってくるように思えました。
カオルが読書感想文用に選んだのは『ヨタカの星』でした。
ヨタカという鳥が阻害され、いじめにあいながらも空の星になる話は、前の学校でいじめに会っていたカオルには、身につまされる内容だったからです。
本を読んだので、カオルは感想文を書くための原稿用紙を買いに街中にある文房具屋に行きました。
文房具屋のショーウィンドーに、パンダやキリンの像が飾られていました。そこで、カオルは店の人に聞きました。
「おじさん、飾っているのは、どうやって作ったの?」
「あれかい。紙粘土だよ。誰でも作れる。置いてある奴は、きみらの先輩が自由研究で作ったのを置いてくれたものだよ」
「へえ、そうなの。私も紙粘土を買っていこうかな?」
「いい自由研究ができるよ」
「ほんとう?」
「でも、紙粘土を買うなら、できあがった後に色を付けるポスターカラーも買っていった方がいいよ」
カオルは、すなおに店主のいう事を聞いて、それらの物を買いました。
でも、家に帰って考えてみるとカオルは紙粘土で何を作るか、考えていなかったことに気がつきました。
始めは、ぬいぐるみのクマをモデルにして、クマを作ろうと思ったのですが、クマはかわいすぎて他の生徒たちも作ってきそうです。
それにカオルにとってのクマは、ぬいぐるいのクマだけで、他に同じ物があるべきでないと思ったのでした。
そこでカオルは図書館に行ってみることにしました。
図書館で絵本や図鑑を見れば、何を作ったらいいのか見つけられそうな気がしたからです。
カオルは図書館でふたたび珠代に会いました。
「あら、こんにちは」
すぐに、カオルは自由研究に紙粘土で何か作ることを考えている話をしました。
「何も決めていないのね。じゃ恐竜を作ってくれないかしら。学校の展示から戻ってきたら、それをちょうだい。本棚に飾りたいわ」
そう言った珠代は、本棚に行って一冊の図鑑をもってきました。
それは恐竜辞典でした。その辞典を開いて、中に描かれた絵を見せながら、珠代はいいました。
「この中のチラノサウルスか、ブロントサウルス、これなら、他の展示にまけないと思うわ」
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