カオル、白魔女になります!

矢野 零時

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天空魔人グール

10 言いわけしかできない!

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 家に入ると、お母さんにカオルは怒られました。
「お昼になっても、帰ってこないんですもの。心配をしてしまったわよ。おばあさんが、わざわざ連絡してくれたから、よかったけど」
「えっ、電話があったの」
 いつ、おばあさんは電話をかけてくれたのでしょうか? さすが、おばあさんは白魔女の大家です。おばあさんは事件を知った後、すぐに、カオルを家に戻してくれた理由もわかりました。
 
 少し遅い昼食をカオルは取ることになりました。
 お母さんの作ってくれたおにぎりにかじりつき、なすびの漬物をつまんで口に入れていました。
 そんなときに「カオル、少し前に知世ちゃんからも電話があったわよ」と、お母さんが言ったのです。
「えっ、本当」
「なんでも、おわん森に入る道の前で待っていると言っていたわよ」
 知世は一人でいるに違いありません。
「まずい。すぐ行かなければ」
 カオルは口の中に入れていたおにぎりをゴクンと飲みこみました。
「ごちそうさま、知世ちゃんの所に行ってくるわ」と言って、カオルはふたたび家から飛び出していきました。

 カオルの不安は的中していました。
 おわん森に入る道の前に大きな木が立っていたのです。普通の木と違って幾すじものつたの木がからまって太い木になっているようで、その木は伸びて空に向かっていたのです。

 その木を知世が笑顔で登っていて、その後ろを緑色のマントをきた老婆が知世のお尻を押していたのでした。
「知世ちゃん、待ちなさい。天空に行ったらだめよ」
 カオルは大声をあげながら、木に向かって走りました。カオルの声に老婆はにくにくしげにカオルを睨みつけてきました。
「あたしの仕事の邪魔をしないでおくれ。私はグールさまのご命令に従わなければならないんだよ」

 木の根元にやってきたカオルは木にだきつき、知世と老婆の後を追って木に登ろうとしました。でも、それが、すぐにできなくなりました。カオルが手や足で触った木は薄れて消え出したからです。それでもカオルは必死に枝をつかむと一枝だけをひきちぎることができました。
 カオルはr枝をつかんだままで地面の上に落ちて行ったのです。
 痛い腰をさすりながら、空を見上げると、知世と老婆はどんどんと小さくなりながら木を登っていました。そして、登っていた木も、二人の後を追うように霧のように消えていったのでした。

 ともかく、おばあさんに相談するしかない。そう思ったカオルは手にすることができた枝を持って自分の家の方に、いえおばあさんの家に向かって走り出しました。
 体じゅうから汗を噴き出した頃、おばあさんの家につくことができました。でも、玄関のチャイムを押しても誰もでてきませんし、庭の方にあったドアを探してもみつかりませんでした。
「おばあさん、おられますか?」と、思わず何度も大声を出しました。
 おばあさんはきっと、天空の魔人グールに対してどうしたらいいのか、魔法学校の先生たちと相談をしているのに違いはありません。

 カオルの声に気が付いたのは、お父さんとお母さんでした。
「カオル、どうかしたの?」とお母さんがベランダから出てきました。
「お母さん、知世ちゃんがいなくなってしまったの!」
「どうして、いなくなったの。あなた、その場にいたんでしょう?」
 お母さんに、そう言われても、カオルは知世がどうしていなくなったのか、説明をすることが難しいことに気がつきました。
 だって、そうじゃありませんか?
 突然、現れた木に知世が登り出して空にに消えて行くと、その木が根元から霧のように消えてしまった。普通にそのことを話したら、嘘をついているか、頭がおかしくなったと思われてしまいます。

「知世ちゃんが言っていた場所に行ったわ。でも、姿が見えないので、おわん森の周りをずっと捜して見たけど、どこにも知世ちゃんがいないのよ」
「そうね。まず知世ちゃんのお家にお電話をしてみましょう」
 お母さんはベランダから居間にもどると、さっそく知世のお母さんに電話をかけていました。お母さんはもしかしたら、すでに自分の家に知世は帰っているのではないかと思っていたのでした。
 
 でも、違っていたのです。
「知世ちゃんのお母さん。すぐ来るそうよ」
 カオルはうなずいて見せるしかありません。
 やがて、知世のお母さんがタクシーにのってやってきました。色々聞かれましたが、カオルは先ほど言ったことと同じことを話すしかできませんでした。

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