超ゲーム初心者の黒巫女召喚士〜動物嫌われ体質、VRにモフを求める〜

ネリムZ

文字の大きさ
75 / 101
黒巫女召喚士と暴食の悪魔

75

しおりを挟む
 白狐の自我、つまりAIが生成されたのは数日前の話だ。
 最初に見て出会った人は黒い人だった。自我が朧気な白狐はその初めての出会った人がなぜか悲しんでいると思った。
 そして自分に出来る事をした結果、式神となりモフリに仕えて居た。
 そしてその白狐の名はハク。

 徐々に活性化して行く自我、そして共に居て楽しいと嬉しいと感じたモフリを信頼している。
 だから、自分も前線で戦いたいと言う思いを押し殺してベルゼブブの観察と自分の仕事、バフを掛けていた。
 自分に出来る事はコレだけでこれ以外は出来ないのだから。
 自分は弱いと自覚している。だが、それでも役に立っていると言ってくれるモフリに出来るだけ報いたい。

 そんなハクでも嫌いなモフリが居る。それが人格が変わる時だ。
 自分の事を普段は『ハクちゃん』と呼ぶのにドス黒い嫌な気配の時は『ハク』と呼ぶ。
 その時ハクは心底モフリが嫌いになる。
 理解している。アレはモフリであってモフリでは無いと。
 それでもモフリはモフリであって欲しいと思うハク。
 そして【意思疎通】によってドス黒いモフリの考えなどが希薄だが流れ込む。
 だから狂人との戦いでの手助けはした。
 ドス黒いモフリはモフリの事を自分達の事をきちんと考えては居るのだろう。
 だけどソレを許せるか許せないかはまた別の話だ。

 あの時のモフリは怖い。
 ハクは二度と出て欲しく無いと思っているが、逆に出ている時はモフリ自身が1番辛い時だと知った。
 だがらハクは時々考える。モフリとは、自分の主の本当の思いは何だろうかと。
 だが、分かった。【意思疎通】から【以心伝心】になった事で完全に感情がリンクしたのだ。
 そしてモフリは自分達のことをこよなく愛してくれていると知り、そしてこれが自分達の主だと認識した。
 そしてハク自身にも先輩、後輩や他の人間の友も出来た。

 ハクは己の弱さを認識はしているが劣等感は抱いて居ない。
 所詮自分はこの程度、自分に出来る事は少ないと思っているからだ。

 ハクは己の出来る事のみを熟す事に忠実だ。逆に言えば欲があまり無い。
 ハクが欲を出す時はモフリの現状が今のままが良いと言うくらいである。
 だが、ハクは人の感情を読み取る事に関してはずば抜けている。
 スキルの影響では無い。本来のハク自身の個性だ。
 だから無意識に相手の喜ぶ事をしていた。初めてのモフリと出会った時には自分の違う姿の毛玉になったり。

 そんなハクはベルゼブブ戦の今でも自分の出来る事を忠実に行い、自分に出来ない事はやらない。
 出来そうならやる。
 それはモフリ自身も望んでいる。拘束はしていない。ただ、願っているのだ。
 そうであって欲しいと。その願いは皆に届いている。

 ベルゼブブ戦ではモフリ達にはあまりダメージは入って居ないがそれは相手も同じ。
 マナと共に飛びながら攻撃を繰り返すネマとモフリ、その攻撃を防ぐベルゼブブ。
 時には魔法で応戦しベルゼブブのHPはほぼ満タンな状態だ。
 ベルゼブブは魔法を使う時に右手を突き出して行う。捕食の際にもだ。
 だが、これもブラフである可能性があるから警戒は必要だ。
 この戦いを見た戦闘経験豊富な人達、モフリの近くにはゲームで桃や柑、貴美や鬼龍がその類だ。
 そしてその者達は本人には言わないだろうが、こう思うだろう。無駄な動きが多いと。
 ハクも見ていて薄々感じている。
 ベルゼブブに腕の振りには予備動作が存在しないと。
 振りを全て攻撃の動きだ。だが、モフリは違う。
 鎌を振るう時に少しでも火力を上げようと大きく振るう癖がある。
 1秒でもそのような予備動作があれば上位の存在ならそこから相手の攻撃を予測して躱す、防ぐは簡単な事だ。
 さらに言えばここはゲームだ。多少の加速での火力増減はあまり無い。
 武器のSTRは大体の威力を示しており、相手の防ぎ方やVIT、自分の攻撃の仕方や狙う場所によって変わる。
 その点でモフリは無駄な動きが多いのだ。
 回転などの遠心力を付けての攻撃は確かに効果的だが、その場の攻撃で大きく振る攻撃よりも連続攻撃の方がダメージは出る。
 それも剣等なら楽な方だが、上級者向けの大鎌である。
 NewWorldFrontierで使用率、最下位《ワースト》1位ワンの大鎌である。
 そうなるのも仕方が無いのかもしれない。

「コン!」

 ハクは近寄って来たマナに対してINTバフを賭ける。
 マナの上にいるモフリから頼まれたのだ。
 言葉で発する事無く考えは一定の範囲内なら分かる。

「わぅ」

 ハクを羨ましそうな顔で見るイサに対して小さく鳴き集中しろと言うハク。
 ハクは欲は少なく自らバシバシ行動するタイプでは無い。
 出来る事はやる、出来ない事はしない、真面目タイプだ。
 社会では出世の難しい性格だ。
 何かを学ぼうとする機会もあまり無く、ハク自身この戦いは己の勉強の時間にしているのかもしれない。
 そこまでの余裕があるのはモフリが勝つと信じて疑わないからだろう。
 実際その通りだ。
 モフリは今までも1度も負けた事が無い。途中の記憶が無い時もある。
 初心者狩り、バグを利用して相手の苦しむ姿に興奮する狂人(現在垢BANされて存在しない)を省き、死霊の帝王と言うゴブリンとは違い本当の意味での大物を倒したのだ。
 その時もハクはバフの役目。
 だからこそハクは負けるとは微塵も思って居ない。
 思う事はモフリへの自分の忠誠心が弱いと言う事になる。
 それは何となく嫌だなと思うハク。

 ◇

 私は落下や跳躍からの攻撃を辞めた。
 理由としてはあまり効果的と思わなかったからだ。
 同時攻撃も相手が結界を張らないなら意味無いし、MPや霊符にも限界がある。
 だから確実な方法でマナちゃんに飛んで貰いながらその上で鎌を振るう事にした。
 この場合結界を張らないようなのでこっちの方が戦い易いしMPも消費されない。
 ただ、一斉に行動するので相手の背後を狙う事が難しい状況ではある。
 マナちゃんは大きいので相手の背後を取るとかも旋回する必要がある。
 そして相手は後ろに振り返るだけで済むのですぐに向きを合わせて来る。
 なので羽が中々狙えない。それに攻撃が当たるにしてもまずは魔法を躱して魔法と魔法の短い隙間で攻撃するしか無い。
 弱点を狙いたいがベルゼブブは私の鎌を警戒しているようで私は中々弱点に攻撃が出来ないのでネマちゃんに任している。
 それでも激的に減っている訳は無い。
 未だにベルゼブブのHPの1割も減らせて居ないのが現状だ。

『諦めの悪い』
「私は勝つって決めているからね。負ける、諦めるつもりは毛頭無いよ!」
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...