超激レア種族『サキュバス』を引いた俺、その瞬間を配信してしまった結果大バズして泣いた〜世界で唯一のTS種族〜

ネリムZ

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四十五話

 勝てるはずだった。

 運命の確率を示す目の力は勝ち確を示していた⋯⋯なのに今はなんだ。

 敗北が確定した運命の確率を示させれている。

 変わってしまったのか。

 「ごふっ」

 逆流した血が口から飛び出した。手に付着した血を見て、恐怖に震える。

 あぁ、なんでこうなってしまったんだ。

 勝てるバトルじゃなかったのか。

 自問自答を繰り返しても答えなど出るはずなく、力の入らない身体に鞭のようにゾンビの腕が襲って来る。

 あぁ、終わってしまう。

 「ご主人様!」

 「ユリっ」

 「ぐはっ」

 ユリが俺を守って吹き飛ばされた。

 「ユリ!」

 痛みを堪えてユリに向かって叫び声をあげる。

 序盤の方から仲間だったユリ。

 失いたくない。

 「だい、じょうぶ、ですっ!」

 「⋯⋯ユリ」

 その目に諦めは感じなかった。

 ゴブリン達の叫び声が鼓膜を貫いた。

 ゴブリン達は戦略も何も無い総力戦で進化したゾンビソルジャーに向かって行く。

 そこに諦めている奴も死を覚悟した奴もいない。目指すはただ一つ⋯⋯勝利。

 戦意喪失しているのは、俺だけ。

 「アイリス⋯⋯」

 アイリスが叩き落とす剣を片手で防ぎ、クワでカウンターした。

 その一撃で軽く吹き飛ばされる。

 どれだけゴブリンが群がろうとも、意味は成さなかった。

 だけどそれでも諦めずに特攻をする。

 「おれたちゃまけねぇぞ!」

 「え⋯⋯」

 その声は初めて聞く声。

 ゴブリン全員がユリが進化した時と同じ様な光に包み込まれた。

 「まけねぇぞ!」

 アイリスが叫んだ。

 「うるさい!」

 ローズが叱った。

 ユリと同じような進化を果たしたのはアイリスとローズ、他の皆はゴブリンの見た目を少し大きくした感じ。

 ホブゴブリンと言う正当の進化を果たした。

 全員が進化して、戦っている。

 「おさえろ!」

 アイリスの叫びにホブゴブリン達が応え、ゾンビの伸びた腕を捕まえる。

 「しねぇえええ!」

 アイリスの強い斬撃がゾンビを襲う。

 「からだがかるいなぁ!」

 ユリが俺の隣に立った。

 「誰も諦めてません! ご主人様!」

 あぁ。そうか。

 俺の間違っていた事は一つだ。

 眼の力を過信し過ぎて信じてしまったからだ。

 俺の強みは五感を全て使っての戦闘スタイルだろう。

 なのに全ての攻防を眼だけを頼りにしていた。

 それが間違いだったんだ。

 「目が覚めた。失ってなるものか」

 運命の確率が変わってしまった。

 眼は敗北を確定させている。

 「だからどうした」

 相手の機転で運命が変わったと言うのなら、それをまた変えてやれば良い。

 「運命なんてクソ喰らえだ!」

 敗北の運命が確定していると言うのなら、そんな運命改変してやる!

 “サキュ兄が戻った”
 “皆進化してらァ”
 “急げぇ!”
 “敗北の運命とか我らも望んでないから”

 “さっさと倒して魅了タイムだ!”
 “頑張れ頑張れ”
 “いけるぞサキュ兄”
 “見てます”

 俺は剣を抜いて軋む身体に鞭打って、突き走る。

 「参考程度には使ってやるよ」

 攻撃される場所がテロップで確率を示してくれる。

 あくまで参考程度だ。

 残りは自分の用いる全てで攻撃の場所を予測して、回避する。

 「アイリス、相手の後ろに回れ!」

 薙倒されたホブゴブリン達も立ち上がり、咆哮をあげてゾンビソルジャーに向かう。

 鞭のようにしなる腕は伸縮自在の危ない代物だ。

 そこにクワと言う武器も含まれる。

 その一撃は確かに重いが、弱点として大振りなのがあげられる。

 大きな予備動作から繰り出される攻撃のパターンなど、眼の力が無くとも予測は可能。

 「アイリス合わせろ!」

 「あい!」

 相手の攻撃を掻い潜った俺に対して、味方のホブゴブリンが全力で守ったアイリスが俺の横に並ぶ。

 「「オラッ!」」

 大きな一撃を相手の身体に叩き込んだ。

 すぐさま状況把握と次の手を考えたユリがローズを引き連れてゾンビの背後に移動していた。

 「僅かでもダメージを与えるよ!」

 「ねらいは、かんせつ!」

 二線の銀閃が走る。

 ホブゴブリン達だって、ただのサポータと言う訳では無い。

 全員が武器を持ち、攻撃を防ぎながら伸びた腕を攻撃する。

 「もっとだ。もっと速く!」

 俺はライムの方向に手を伸ばす。

 既に分かっていたかのようにライムはコボルトの使っている剣に変身して左手に収まる。

 「ひめさま!」

 「分かってる!」

 壁を反射して移動して来た腕が背中を狙って来ている。

 そんなのは分かってる。だけど無視だ。

 だって、俺には仲間がいるから。

 「ローズ行くよ!」

 「はい!」

 ユリとローズのコンビでその攻撃を弾く。

 すかさずホブゴブリン達がその腕に攻撃をしかける。

 “壁に反射、ね”
 “見えてきたなイレギュラーの弱点”
 “いつものサキュ兄だぁ”
 “これは勝つる”

 反射を利用って事は、自由自在に動かせる訳では無いのだろう。

 それだったら、弧を描くように背中を攻撃すれば良い。

 それができないんだ。

 「相手の身体が少しでも後ろに下がったら、それは範囲攻撃の横振りだ!」

 長い武器である腕を使うには全身の捻りが必要だろう。

 「クワは俺が防ぐ!」

 相手のクワを右手の剣で弾き、カウンターでライムの剣を突き出す。

 浅く刺さっただけだが問題は無い。

 「ぶっとべ!」

 乱暴にバットでも振るうかのようなアイリスの攻撃が深く奴の身体を捉える。

 腕を戻そうとしても、その腕にも少なからずダメージは入っている。

 「行くぞアイリス。俺達のコンビネーションだ!」

 「おすっ!」

 アイリスの首根っこを掴んで、上に投げ飛ばした。

 “え?”
 “酷い”
 “なぜに?”
 “わくてか”

 ユリの動きを見て来たアイツならそれだけで判断した。

 天井に足を着けて、蹴っ飛ばす。

 「オラッ!」

 落下の勢いを乗せた強い一撃、それは確かに大ダメージを与えた。

 「カモン!」

 ユリはホブゴブリン三体を引き連れて懐に飛び込んだ。

 その三体は槍持だ。

 槍は全て右足に刺さった。

 「私はこっち!」

 短刀で左足を強く攻撃した。

 そんなユリに魔の手が伸びる。

 「させない。ユリさまはじぶんがまもる」

 伸びた手を攻撃して妨害したローズにお礼を述べて、全員が懐から離れる。

 “サキュ兄来た!”

 まだ身体が軋む。痛い。

 全ては己の慢心と油断⋯⋯眼の力が絶対だと信じてしまった怠惰による結果。

 もしもまたそれで仲間を失っていたら、俺はどうなってしまっただろうか。

 後悔が押し寄せて来る。

 ⋯⋯けれど、反省は後だ。

 「今はお前を倒すっ!」

 肉薄した瞬間に連撃を繰り出す。

 左右から出す攻撃。

 攻撃と攻撃の感覚を限りなく埋めて、高速の連撃を休みなく与える。

 おかげで、奴はクワで防ぐので精一杯だ。

 「そう来るよな」

 しかし、ライムの剣である左手の攻撃が弱いと分かった相手はそこを狙う。

 甘い。

 こんな単純な相手に俺は一撃もらってしまったのか。

 「アイリス」

 ライムの剣に合わせたパリィを完全に見切り、そのタイミングでステップする。

 アイリスは既に、ホブゴブリンから槍を受け取って準備していた。

 俺はアイリスが投げ飛ばした槍を見送った。

 身体の中心に命中した槍は奴を壁奥まで吹き飛ばすには十分な火力を秘めている。

 “ウルフ達の出番が⋯⋯”
 “やっぱ同じ種族同士の連携は上手いか”
 “まじで良い。こう言うの好き”
 “頑張れ!”

 「ご主人様!」

 「ああ。行くぞ」

 ここで決める。

 奴に向かって、槍が当たった場所に蹴りを入れ込む。

 すかさず体勢を但し、左右の腕を貫いて壁に剣を埋める。

 「はああああ!」

 「おれもおおおお!」

 ユリとアイリスが剣で力任せに足を突き刺す。

 「「もっとされえええええ!」」

 力を込めて、込めて、限界まで力を込めて剣を押し込む。

 逃がさない、ここで倒すと言う全力の殺意を込めて。

 俺も腕を逃がさない。

 「お前の腕は伸びるだけ。重さもしっかりある。だから遠心力を利用しないといけない。今のお前にはできねぇよな!」

 これで終わりだ。

 「やああああ!」

 ローズが槍を持って迫って来る。タイミングを見て屈んだ。

 刹那、俺の頭上を通り抜けた槍が奴の頭に突き刺さる。

 それだけでは終わらない。終わらせる訳がない。

 ホブゴブリン達が全員で槍を持ち、後ろの部分で槍を押し込む。

 全身全霊で槍を押し込む。

 ゾンビが動かなくなり、一分、二分と経過する。

 その間、俺達は力を緩める事無く、ゾンビを押していた。

 “お疲れ様”
 “今日も生き残った。前回も生き残った。また次回も生き残る”
 “サキュ兄が殴られた時はヒヤヒヤしたけど、一件落着”
 “油断禁物、一層に帰ろう”

 “反省会しないとね”
 “サキュ兄がサキュ兄に戻った”
 “さぁ、明日に備えて帰ろう。明日は今日の倍は魅了しないとね”
 “明日が楽しだ”
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