クラスで話題の美少女配信者がデブスの俺だとは推ししか知らない〜虐げられても関係ない、推しに貢ぐ為にスキルのガチャを引く〜

ネリムZ

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 ついにこの時が来た。

 日陰(霧外日向)
レベル:40
称号:なし(《ガチャ中毒者》)〈モンスターコレクター〉
スキル:(【データ転性】《モンスターカードガチャ》)〈剣技.7〉〈剣術の才〉〈殺人の才〉〈作業厨.1〉〈集中力強化.3〉〈攻撃力強化.3〉〈敏捷力強化.2〉〈精神力強化.6〉〈斬撃数増加.1〉〈剣の舞.2〉〈刀の心得.5〉〈防御姿勢.2〉〈回避.2〉〈鑑定妨害.2〉
魔法:なし

 「行くぜ、Tランクダンジョン!」

 俺一人では歯も立たなかったモンスターが蔓延るTランクダンジョン。
 レベルアップと多少のスキル増加とレベルアップ。
 今なら行ける気がする。

 装備は新調してない。
 そもそも、現装備ならTランクダンジョンに問題ない性能は持っている。

 「行くか」

 中に入り、俺は日陰となる。
 すぐさまメイドと水着モンスターを召喚する。
 護衛の為だ。

 『水着魔法:一級』を二人、『三級盗賊メイド』『三級防御メイド』である。
 水着とメイドでもパーティ的な事が出来るかの検証も兼ねている。
 水着を着た、二足歩行のカジキマグロ。

 この二人? 二匹? は水系の魔法を得意として使える。
 メインは俺が戦うので、サポート的な感じで用意した。
 撮影はしない。

 「そんじゃ、行きますか」

 得体の知れないモンスター2つとメイド二人を連れて、俺は奥に進む。
 すると、すぐさまトラップを発見して、メイドの力で見事に回避する。
 撮影してないのにこれである。嫌になる。

 トラップを掻い潜り、進んでいると、トカゲのようなモンスターを見かける。
 二足歩行のトカゲが槍を持っている。三叉槍だ。

 「リザードマンだっけ? 相手にとって不足無し」

 地面に少しだけ水が張っている理由が判明した。
 リザードマンの特徴を生かすために、ダンジョンがそのような変化をしているのだろう。
 水に足を取られる程、深いわけじゃない。

 靴も濡れないので、問題ない。

 「手を出すなよ」

 俺は居合の構えをする。

 「霧外流抜刀術、移流霧!」

 先手必勝は戦闘の基本だ。
 しかし、やはりと言うべきか、防がれた。

 だけど、レベル的には戦えるラインには居る。
 そのまま押し切る。

 前のミノタウロスとは違い、防御力よりも機動力の方が高いリザードマン。
 壁を縦横無尽に駆け回る。

 鱗でこちらの方が硬そうだが、ここまでの機動力があれば、そこまで防御力は高くないだろう。
 そうであって欲しい。

 「くっ」

 突然放たれる突きは絶対に受けないようにしないと。
 攻撃されたタイミングで⋯⋯反撃の一撃!
 浅い⋯⋯けど、ダメージは与えている。

 なら問題ない。
 地道に繰り返せば倒せるんだ。
 邪魔が入る場合は、モンスター達に倒して貰う。

 「俺も、壁は使うぞ!」

 地面ばかりに居ては時間が余計にかかる。
 俺も壁を登ったり蹴ったりして、相手に攻撃を仕掛ける。
 しかし、相手の方がスピードは上のようで、俺の刃は見事に空振りに終わる。

 「霧外流、蜃気楼」

 一瞬で気配を偽り、相手の背後に移動する。
 リザードマンは命の危険でも感じたのか、柄の部分を俺の方に伸ばして来る。
 体をねじってギリギリで避け、刃を突き立てる。

 「逸れた!」

 相手の蹴りを腕で受け止める。

 やっぱり、手強い。
 しかし、倒せない相手では無い。

 レベルによって、身体能力が上がっている。
 それを実感出来る。

 「水面を走る事でスピードを上げるリザードマン、ここはお前らにとって最高の場所なんだろう」

 リザードマンは俺の言葉には耳を貸さずに攻撃を仕掛けて来る。

 「だけどな、俺達、霧外流にとっても良き場所なんだよ」

 俺はバックステップでリザードマンとの距離を急激に離して、刀を構える。
 地面に向かって高速の斬撃を浴びせる。

 意味が無いと思われてしまう様なこの行動、もちろん意味はある。
 これにより霧を無理矢理発生させるのだ。

 霧の中で使われる霧外流は最強の暗殺術になる、両親から最近教わった。
 現実の俺では無理だが、日陰の身体能力を持ってすれば、造作もない。

 理屈なんて関係ない。
 出来るんだから出来るんだ。
 神が居て、ダンジョンがある世界では、時に常識では理解出来ない事も簡単に起こる。

 リザードマン、お前らの得意なフィールドから、俺の得意なフィールドに成ったぜ。
 水面を走るスピードは確かに速い。
 人間では出せないスピードだ。

 しかし、それには一つだけ決定的に悪い点が存在する。
 それは何か、簡単だ。
 足音がする。

 気配を気薄にしても、足音を消せないでは意味が無い。
 音があれば、敵の位置なんてのは簡単に把握出来るんだよ。

 「霧外流、滑昇霧!」

 俺は壁に足を着けて移動するので、足音は出ない。
 水を蹴ってしまうと音は出るが、壁に水はない。

 霧の中では俺の気配を完全に認識出来ない。
 不意の一撃で命を刈り取る。
 お前は何が起こったかも分からない状態で、死ぬんだ。

 『じゃっ!』

 「嘘だろおい!」

 俺が未熟だったようで、リザードマンを囲むように水が上に伸びて来る。
 それは針の柱。

 刀で弾く事で窮地を脱した。

 「そりゃ魔法くらい使えるよな」

 完全に盲点だった。
 槍で攻撃してくるもんだから、いつの間にか槍での攻撃が普通だと思っていた。
 魔法、使うよな。

 今はまた霧に隠れたているから良いが、この無理矢理作った霧はそう長くは持たない。
 そろそろ勝負を決める必要がある。

 相手は生存本能が高く、命の危険があるとすぐに反応できるタイプだ。
 背後に回った時も、霧の中の完全な不意打ちも、こいつは乗り切っている。
 だったら、俺のやるべき事はアレだ。

 神楽の時同様の事をすれば良い。

 最初に使っていた刀を取り出す。
 鞘から抜き取り、逆手持ちでリザードマンに向ける。

 「場所は分かっている。だから、行けるよな!」

 俺はリザードマンの頭目掛けて、刀を投擲した。
 生存本能の高いアイツは感覚的に、無意識で体が動かくはずだ。
 避ける事はしないだろう。

 アイツは無意識で動いた時、何かしらの防御的行動をする。
 魔法か、槍か、はたまた体術か。

 なんでも良い。
 ただ、攻撃したその瞬間、大きな隙を俺は狙う。

 カキン、弾く音が聞こえた。

 「シィ」

 『ジャッ!』

 「遅い!」

 最初の方の軽めのダメージは蓄積されている。
 その切り傷を狙って、俺は強い一撃を叩き込む。
 防いだ後の体勢では、この攻撃は防げれない。

 リザードマンに深い傷を与えた。

 ようやく。
 明確に致命傷になるダメージを与えられた。

 「どうだ!」

 これでもまだ槍を構えるか。
 しかし、足元がぐらついている。

 トドメ⋯⋯刺した。

 「これで、終わりだ」

 ログも確認してしっかりと、勝った事を証明した。

 「勝った。勝ったぞ! リベンジ達成だ! 少しだけ違うけど!」

 俺が喜んでいると、拍手しながらこちらに近寄って来る存在に気づく。
 見た瞬間に分かる。
 このダンジョンには似つかわしくない存在だ。

 つまり、俺よりも格上の探索者。

 「見事です日陰さん」

 「だ⋯⋯どちらま様ですか?」

 人前では日陰人前では日陰。
 私は日陰。クールな剣士、日陰さん。

 「これは失礼。わたくし、クラン【桃桜】のマスター、桜モコモコです」

 「そうですか」

 誰?

 「おや? 日本有数の大型クラン、桃桜を知りませんか?」

 メガネをクイッと上げる。
 もちろん、知りません。

 「すみません。あまりクランなどに興味が無いものでして⋯⋯。スカウトならお断りします」

 「まぁまぁそう言わずに、お話だけでもどうですか? ここでは目立ちますので、リアルの方で⋯⋯」

 「尚の事、お断りします。大型クランだろうが、日本一のクランだろうが、現在私はクランに入る気は無いです」

 「良いんですか? わたくしの誘いを二度も断って? 調子に乗り過ぎると、後悔しますよ?」

 「二度? 後悔しない選択をしたいんです」

 その人は別れを言って、去って行った。
 俺も帰る。
 なんだったんだ?
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