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人気受付嬢、焼肉屋で会議した
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家に到着した。
引越しの日取りも既に決めてある。
「荷物はコイツに全部預ければ良いからね」
「ちょっと紗奈! 人を物みたいに言うな!」
手伝う事は否定しなかったので、助かる。
ま、そう言っても俺の家には持って行くような荷物は無い。
紗奈ちゃんが慣れるまでは別の部屋で寝て、そこからは同じ部屋と既に確定されている。
紗奈ちゃんはベッド派であるので、今度の休日にダブルベッドを購入する。三連休はまだ温存だ。
「てか、私の寝床は?」
「なんでアナタも一緒なのが前提なんですか? ご飯食べたら自分の家に帰るじゃないですか」
秘書さんがさも当然の様に自分の部屋の主張を始めたので釘を刺す。
そもそも最近、この人入り浸り過ぎじゃないか?
紗奈ちゃんとの晩御飯の時間に邪魔が⋯⋯紗奈ちゃんの色んな面が見られるから良いけどさ。
晩御飯の片付けをしている時に紗奈ちゃんが出かける準備を始める。
「少しだけ行ってきます」
「どこに行くの?」
「焼肉屋」
「ご飯食べたのに?」
また食べるの? 紗奈ちゃんってそんなに食べる子でしたっけ?
「支部長が肉を食べたいと言ったからね⋯⋯私はただ会議に参加するだけ」
「そっか。気をつけてね」
「うん。帰りの時は連絡するから迎え来てね」
「もちろん」
紗奈ちゃんを見送った後、俺は時間を潰すためにSNSを開く。
ルミナスさんとのコラボ配信がどんな感じになっているかを調べるためだ。
「てか、今日もここで寝るんですか? そろそろ宿泊費取りますよ」
「紗奈と一緒に寝てみろ、アイツ興奮してここら辺を氷河期にするぞ? それを食い止めてるのが私だ。感謝しなさい!」
「⋯⋯ありがとうございます」
「よろしい」
家主の立場はゴミ箱の中にあると思います。
◆
焼肉屋の中に入ると、既に音羽さん、影の使徒である同僚と支部長、さらにはユリアさんも居る。
「おまたせしました」
「大丈夫だ。紗奈、頼んで良いか?」
「もちろんです」
私はユリアさんの手を凍らせた。
ただ手を凍らせたのではなく、彼女の力を凍らせたのだ。
「ようやく自分の手で肉が食べられるよ。堕天に手伝わせてしまったからな」
「ユリアちゃんに餌付けするのも楽しいけどね~」
「こちらはペットじゃないよ」
肉を食べているのは、私と音羽さんを除いた皆だ。
彼は家族で晩御飯を既に食べていたのだろう。
「ユリアさんっていつこっちに来たんですか?」
「そうだね。三日程歩いて来て⋯⋯一日野宿してるから、昨日からだ」
「野宿ですか」
お世話になった先生にして欲しくない⋯⋯だけどしかたないんだよな。
私のような力を封印できるような人が居ないと彼女は何も触れないから。
私レベルの封印を施せるのは、多分日本に居ない。
「ユリアちゃん、でどうなの?」
「アオイさん達か? 音羽くんに敗北して、また意気消沈してるよ」
「ありゃま。やっぱり焦りすぎたか」
「そのようだ。うん。久しぶりの食事は本当に美味いな」
彼女は食事をしなくても『死なない』ので、長らく食事をしてないのだろう。
「ごめんね、魔女の役目を与えて」
「何を言う。これは望んでやっているんだ。それに、今はまだ天使に気づかれてない。このまま内側から彼女達の精神面を鍛えていくさ」
天使を嫌いながらも、天使を正義として魔法少女達に近づくユリアさん。
奴らに気づかれたら、真っ先に討伐されるだろう。
天使ごときに先生であるユリアさんは倒せないけどね。
「ビールを注文して良いか?」
「良いね飲め飲め! ここはギルド支部長の奢りだあ!」
同僚の彼女が目を輝かせて、高いお肉を次々に購入する。
本当に遠慮がない。
「現状、アオイさんはまだ天使を敬っている感じはあるね。ミズノさんの方はなんと言うか、アオイさんラブ? だから、レベル五になれば加護を消滅させて解放できる可能性があるね」
「後は、天使の本質と悪魔の本質を知って、どちらの判断に委ねるか、か」
支部長がいつもよりも真面目な顔をしている。
「⋯⋯それがね。ミズノさんの答えはなんとなく分かるんだ」
「え?」
「アオイちゃんが進む道を共にする、だと思う。アオイさんを天使から解放するのではなく、共に歩む。そのくらい依存してる」
ユリアさんが淡々と語った。
それでも前進と言えるだろう。
未だに天使から解放できた魔法少女はいない。一番可能性が高いのはミズノさんか。
これは覚えておこう。なぜだか同じ気配がするのだ。私と。
「魔法少女については理解したよ。ありがとねユリアちゃん」
「問題ないさ。⋯⋯スマホが使えたらもっと情報共有が楽になるんだろうがな」
自分の手を忌々しい目で睨む。
その手を私はそっと触る。
「この手が無かったら、私は自分の力を制御できなかった。あまり憎まないでください」
「そう言ってくれると助かるよ」
音羽さんは男性一人で心寂しいのか、お子さんの写真を眺めながら酒を飲んでいる。それに茶々を入れる同僚。
「それで話変わるけどさ、アメリカに行く件について⋯⋯了承で良いんだよね紗奈っち?」
「うん。良い家が手に入るからね」
それにアメリカがそこまで手こずる魔物をこの目できちんと見ておきたい。
もしもそんなのが居て、レベル9推奨のレイド型の魔物ならば、天使が黙っちゃいない。
大天使クラスがここに降りて来たら、流石に厄介だ。
「出向こうか? 魔女としての力があれば、一瞬で終わると思うぞ?」
「嫌いな力を使ってまで協力して欲しいとは思わないよ。それにそこまでの魔物なら素材が欲しい」
「なら私一人って事か」
同僚に「一緒に行く?」って視線で送ると、「めんどーだからよろ! がんば!」って言う笑顔で返された。
別に私もめんどくさくない訳じゃない。
「堕天は行かないのか?」
「うん。ミドリちゃんが狙いを定めちゃってね。なるべくこの地を離れたくない⋯⋯それに他国に行くと老体がうっさいからさ」
「そうか。⋯⋯魔女や先生としての話は終わりで良いかな?」
「そだねー。後は飲み食いを頼んでしよ」
「ああ。そうさせてもらうよ。数ヶ月ぶりの食事なんだ」
その後ユリアさんはパクパクと驚く程の肉を平らげた。
支部長の顔が苦笑いになり、吹っ切れた笑顔になるくらいには食べていた。
数十万の会計が終わり、皆で外に出る。
音羽さんは途中で帰った。お子さんのためにだ。
同僚は眠くなったのか、支部長の影に入って行った。帰ったかその場で寝てると思う。
「地図がないと不便だよな。今度は迷子にならないように、しっかりと戻るさ。アオイさん達の先生だからね」
「最近、あの人も一緒にご飯を食べるんですけど⋯⋯」
「空間使いの子かい? 君とは仲良かったよね。彼女も魔法の制御ができてなかったな。懐かしいよ」
そんな思い出にふけっている彼女にとある提案をする。
私が傍に入れば力を気にする必要もない。スマホだって扱える。
移動もアイツに頼めば良い。ユリアさんのためなら喜んで使うだろう。
「良いのかい? 旦那との時間を邪魔するかもしれないよ?」
「大丈夫です。きちんと二人だけの時間は絶対に作るので⋯⋯それに最近、もっと魔法を制御しないとって思ってるんです」
「教えれる事はないと思うけどな」
私は顔を横に振る。
「そんな事ないですよ。私の華々しい同棲の為にも、また魔法制御の練習に付き合ってください!」
「こんな孤独な魔女で良ければ、ね?」
支部長がユリアさんにおんぶされる形で抱きついた。
「前にも言ったろ。君は孤独じゃないよ。自分達のような仲間がいる」
「⋯⋯そう、だったな」
さて、星夜さんに連絡しているので、迎えに来てくれているだろし、少し待とう。
アイツの転移で一瞬で帰るのは嫌じゃ。
引越しの日取りも既に決めてある。
「荷物はコイツに全部預ければ良いからね」
「ちょっと紗奈! 人を物みたいに言うな!」
手伝う事は否定しなかったので、助かる。
ま、そう言っても俺の家には持って行くような荷物は無い。
紗奈ちゃんが慣れるまでは別の部屋で寝て、そこからは同じ部屋と既に確定されている。
紗奈ちゃんはベッド派であるので、今度の休日にダブルベッドを購入する。三連休はまだ温存だ。
「てか、私の寝床は?」
「なんでアナタも一緒なのが前提なんですか? ご飯食べたら自分の家に帰るじゃないですか」
秘書さんがさも当然の様に自分の部屋の主張を始めたので釘を刺す。
そもそも最近、この人入り浸り過ぎじゃないか?
紗奈ちゃんとの晩御飯の時間に邪魔が⋯⋯紗奈ちゃんの色んな面が見られるから良いけどさ。
晩御飯の片付けをしている時に紗奈ちゃんが出かける準備を始める。
「少しだけ行ってきます」
「どこに行くの?」
「焼肉屋」
「ご飯食べたのに?」
また食べるの? 紗奈ちゃんってそんなに食べる子でしたっけ?
「支部長が肉を食べたいと言ったからね⋯⋯私はただ会議に参加するだけ」
「そっか。気をつけてね」
「うん。帰りの時は連絡するから迎え来てね」
「もちろん」
紗奈ちゃんを見送った後、俺は時間を潰すためにSNSを開く。
ルミナスさんとのコラボ配信がどんな感じになっているかを調べるためだ。
「てか、今日もここで寝るんですか? そろそろ宿泊費取りますよ」
「紗奈と一緒に寝てみろ、アイツ興奮してここら辺を氷河期にするぞ? それを食い止めてるのが私だ。感謝しなさい!」
「⋯⋯ありがとうございます」
「よろしい」
家主の立場はゴミ箱の中にあると思います。
◆
焼肉屋の中に入ると、既に音羽さん、影の使徒である同僚と支部長、さらにはユリアさんも居る。
「おまたせしました」
「大丈夫だ。紗奈、頼んで良いか?」
「もちろんです」
私はユリアさんの手を凍らせた。
ただ手を凍らせたのではなく、彼女の力を凍らせたのだ。
「ようやく自分の手で肉が食べられるよ。堕天に手伝わせてしまったからな」
「ユリアちゃんに餌付けするのも楽しいけどね~」
「こちらはペットじゃないよ」
肉を食べているのは、私と音羽さんを除いた皆だ。
彼は家族で晩御飯を既に食べていたのだろう。
「ユリアさんっていつこっちに来たんですか?」
「そうだね。三日程歩いて来て⋯⋯一日野宿してるから、昨日からだ」
「野宿ですか」
お世話になった先生にして欲しくない⋯⋯だけどしかたないんだよな。
私のような力を封印できるような人が居ないと彼女は何も触れないから。
私レベルの封印を施せるのは、多分日本に居ない。
「ユリアちゃん、でどうなの?」
「アオイさん達か? 音羽くんに敗北して、また意気消沈してるよ」
「ありゃま。やっぱり焦りすぎたか」
「そのようだ。うん。久しぶりの食事は本当に美味いな」
彼女は食事をしなくても『死なない』ので、長らく食事をしてないのだろう。
「ごめんね、魔女の役目を与えて」
「何を言う。これは望んでやっているんだ。それに、今はまだ天使に気づかれてない。このまま内側から彼女達の精神面を鍛えていくさ」
天使を嫌いながらも、天使を正義として魔法少女達に近づくユリアさん。
奴らに気づかれたら、真っ先に討伐されるだろう。
天使ごときに先生であるユリアさんは倒せないけどね。
「ビールを注文して良いか?」
「良いね飲め飲め! ここはギルド支部長の奢りだあ!」
同僚の彼女が目を輝かせて、高いお肉を次々に購入する。
本当に遠慮がない。
「現状、アオイさんはまだ天使を敬っている感じはあるね。ミズノさんの方はなんと言うか、アオイさんラブ? だから、レベル五になれば加護を消滅させて解放できる可能性があるね」
「後は、天使の本質と悪魔の本質を知って、どちらの判断に委ねるか、か」
支部長がいつもよりも真面目な顔をしている。
「⋯⋯それがね。ミズノさんの答えはなんとなく分かるんだ」
「え?」
「アオイちゃんが進む道を共にする、だと思う。アオイさんを天使から解放するのではなく、共に歩む。そのくらい依存してる」
ユリアさんが淡々と語った。
それでも前進と言えるだろう。
未だに天使から解放できた魔法少女はいない。一番可能性が高いのはミズノさんか。
これは覚えておこう。なぜだか同じ気配がするのだ。私と。
「魔法少女については理解したよ。ありがとねユリアちゃん」
「問題ないさ。⋯⋯スマホが使えたらもっと情報共有が楽になるんだろうがな」
自分の手を忌々しい目で睨む。
その手を私はそっと触る。
「この手が無かったら、私は自分の力を制御できなかった。あまり憎まないでください」
「そう言ってくれると助かるよ」
音羽さんは男性一人で心寂しいのか、お子さんの写真を眺めながら酒を飲んでいる。それに茶々を入れる同僚。
「それで話変わるけどさ、アメリカに行く件について⋯⋯了承で良いんだよね紗奈っち?」
「うん。良い家が手に入るからね」
それにアメリカがそこまで手こずる魔物をこの目できちんと見ておきたい。
もしもそんなのが居て、レベル9推奨のレイド型の魔物ならば、天使が黙っちゃいない。
大天使クラスがここに降りて来たら、流石に厄介だ。
「出向こうか? 魔女としての力があれば、一瞬で終わると思うぞ?」
「嫌いな力を使ってまで協力して欲しいとは思わないよ。それにそこまでの魔物なら素材が欲しい」
「なら私一人って事か」
同僚に「一緒に行く?」って視線で送ると、「めんどーだからよろ! がんば!」って言う笑顔で返された。
別に私もめんどくさくない訳じゃない。
「堕天は行かないのか?」
「うん。ミドリちゃんが狙いを定めちゃってね。なるべくこの地を離れたくない⋯⋯それに他国に行くと老体がうっさいからさ」
「そうか。⋯⋯魔女や先生としての話は終わりで良いかな?」
「そだねー。後は飲み食いを頼んでしよ」
「ああ。そうさせてもらうよ。数ヶ月ぶりの食事なんだ」
その後ユリアさんはパクパクと驚く程の肉を平らげた。
支部長の顔が苦笑いになり、吹っ切れた笑顔になるくらいには食べていた。
数十万の会計が終わり、皆で外に出る。
音羽さんは途中で帰った。お子さんのためにだ。
同僚は眠くなったのか、支部長の影に入って行った。帰ったかその場で寝てると思う。
「地図がないと不便だよな。今度は迷子にならないように、しっかりと戻るさ。アオイさん達の先生だからね」
「最近、あの人も一緒にご飯を食べるんですけど⋯⋯」
「空間使いの子かい? 君とは仲良かったよね。彼女も魔法の制御ができてなかったな。懐かしいよ」
そんな思い出にふけっている彼女にとある提案をする。
私が傍に入れば力を気にする必要もない。スマホだって扱える。
移動もアイツに頼めば良い。ユリアさんのためなら喜んで使うだろう。
「良いのかい? 旦那との時間を邪魔するかもしれないよ?」
「大丈夫です。きちんと二人だけの時間は絶対に作るので⋯⋯それに最近、もっと魔法を制御しないとって思ってるんです」
「教えれる事はないと思うけどな」
私は顔を横に振る。
「そんな事ないですよ。私の華々しい同棲の為にも、また魔法制御の練習に付き合ってください!」
「こんな孤独な魔女で良ければ、ね?」
支部長がユリアさんにおんぶされる形で抱きついた。
「前にも言ったろ。君は孤独じゃないよ。自分達のような仲間がいる」
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